えんぴつだと思ったら、エクスカリバーでした
今日は期末テストの日。
「それでは用紙を配るぞー。
順番に回して言ってくれ」
教師が答案用紙を配る。
全員に行き渡ったことを確認し、テスト開始を告げた。
かり、かり、かり。
一斉に答案用紙に回答を書き込み始める生徒たち。
その中で一人だけ、何もしないで頭を抱えている生徒がいる。
机の上には聖剣エクスカリバーが置いてあった。
「どうした、田中。
エクスカリバーなんか出して。
もしかして鉛筆と聖剣を間違えたのか?」
「……はい」
やれやれだと教師は肩をすくめる。
こんなこともあろうかと、予備の鉛筆を用意しておいた。
こっそりと一本だけ机の上に置いてやる。
「それを使って答案を解け。
次からは忘れるなよ」
「はい!」
田中は問題を解き始めた。
聖剣エクスカリバーと鉛筆を間違えて持ってくるなんて、バカな奴だな。
まぁ、俺も若いころに間違えてグングニルを持ってきたことがあるし、あまり偉そうなことは言えない。
教師は昔を思い出しながら口元をゆるませる。
「……どうしよう」
おや?
どうやらもう一人、困っている生徒がいるようだ。
泣きそうな顔で答案を見つめる女子生徒が一人。
机の上にはレールガンが置いてある。
どうやら消しゴムと間違えて持ってきてしまったらしい。
よくある、よくある。
俺も消しゴムとロードローラーを間違えたことがあった。
教師は自分が若かった頃のことを思い出して苦笑いした。
「伊藤、これを使え」
「え? いいんですか?」
「今回だけ特別だぞ」
伊藤は間違えた部分を消しゴムで消し、答案用紙に回答を書き込む。
みんな真面目に勉強しているようだ。
難しい問題ばかりだが、諦めずに最後まで力を出しつくそうとしている。
「よーし、時間だ。
筆をおいてくれ、答案を回収するぞ」
答案用紙を集めていると、体調を崩した生徒がいることに気づく。
「どうした山田? 体調でも悪いのか?」
「緊張のし過ぎか、お腹が痛くて」
「誰かー! 山田を保健室へ連れて行ってくれないか?」
「私が行きます!」
伊藤が手を挙げる。
彼女が山田を連れて教室を出て行こうとした時に、教師は優しく声をかけた。
「伊藤、くれぐれも保健室と魔王の間を間違えるなよ」
「大丈夫ですって、間違えたりしませんよ」
そう言ってほほ笑む伊藤だが……心配だ。
魔王の間へ入ってしまうと中々抜け出せない。
倒すまでに時間がかかるからなぁ。
ちょっとしたミスが取り返しのつかない事態を引き起こすこともある。
生徒たちには気を付けてほしいものだ。