後日、一瞥。
夏祭り「京輪祭」の縁日の人混みで無意識が僕の背後を指差した。
それはたぶん第6感という奴の仕業だったのだろう。
不意に振り向くと、その先には3日前に婚約破棄した女がいた。
どうやらまだあちらさんは僕に気がついていないらしい。
綺麗に着飾っているのに、たった1人で夏祭りに来ているとはどういうつもりなのだろうか。
これから誰かと待ち合わせるのだろうか?
にしては、右手にかき氷を持っているし、状況がよくわからない。
本来なら僕とこの祭に来る予定だったから、寂しさをもて余して1人で来てしまったのかもしれない。
まあ、婚約破棄した女の事情なんてどうでもいいけれど。
「マツヤさん、どうかしました?」
と、手を繋いでいるナナマさんがキョトンとして僕に聞いた。
「いいや、何でもないです。りんご飴買いましょう。楽しみにしてましたもんね」
「はい! 行きましょ行きましょ~」
と、無邪気にナナマさんは僕の手を引いて歩き出す。
この状況を噛み締めて、僕は思った。
ーー、嗚呼、やっぱり正解だったなあ。
と。
ーー、彼女とは婚約破棄して良かったなあ。
と。
ーー、じゃないとナナマさんみたいな素敵な女性とこうして親しくなることなど出来なかったのだから。
別にあの女性が嫌な奴、悪い人だったというわけではない。
ただ、どこか違ったんだ。
一緒にいてもドキドキしなかったというか。
また会いたいなって自然と思わなかったというか。
ーー、なんていうか、他に候補がいなかったから、あの女性を選んでいた気がする。
僕が求めてたいたのは、ナナマさんみたいな女の子らしい一緒にいて楽しい女性だったのだから、婚約破棄は仕方がないことだろう。
心変わりは婚活の常である。
仮に僕が心変わりされる立場だったといしても、凹みはするだろうけれど、文句までは言わない。
人間の心は捉えようのないものだ。
まるで夏の空に揺蕩う白雲にも等しい。
「嗚呼、いかんいかん」
せっかくのナナマさんとのデート中だ。
終わったことなんて考えている場合ではない。
大丈夫、あの女性も素敵な人に巡り会えるさ。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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追伸
なんていうか、私が婚活を通して思ったことをありったけ詰め込んでおります。