安らかを求めて眠る
そうして人類は永遠の眠りについた。
私はそんな仰々しいキャッチコピーがプリントされた薬をジロりと見る。
これは安楽死薬。
一錠で安らかポックリ逝ける触れ込みで国が志願者に配布している。
一世代前ならこんな薬が国から配布されること、販売にしてもアンダーグラウンドな場所でもなきゃ手に入らない代物だっただろう。
だが、人口が200億人を突破した現在なら珍しくないこと。
こんなことがなったのも人口が多すぎるのだ。
人口が多すぎる問題は60億人のときから言われてきたことだが、長年にわたって有効な対策を取らずにズルズル放置してしまった。
結果として食糧を含めたあらゆる資源が足りなくなった。
そうして、困窮した人類はこの薬が作った。
安楽死を志願するものには税の免除、配給の優遇など様々なメリットが死ぬまで提供される。
しかし、自分が志願したのはこういったメリットを求めたからではない。
ただ人が多すぎる今の世界にうんざりしただけだ。
どこにいっても人、人、人人人。気持ち悪くてしょうがない。
医者が言うには極度の対人恐怖症の類らしい。
対処に一番良いのは人がいない場所にいくこと。
それを唯一叶えられる方法が「死」だけだった。
だから、私はこれから薬を飲む。
おわり
この小説は日本SF作家クラブの小さな小説コンテスト2に応募作品です。