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3.不穏な関係

「わたくしはあなたの母よ。隣にいるのはあなたのお父様。あそこに立っているのはあなたの兄のカミルよ」


「そしてお前は私たちの娘でありカミルの妹、シャルロッテだ。シャルロッテは今八歳、カミルはシャルロッテと三つ離れた11歳。ここはオルフェウス王国の王都の中にある、メリアベリル家の屋敷だよ」


聞き出せるだけのことを聞き出そうと試みる。シャルロッテの両親は質問の全てに答えてくれた。


そのおかげで大まかにだが掴めてきた。

私はこのシャルロッテという人間の少女になっているらしい。この二人はやはりシャルロッテの両親、無愛想な奥にいる少年は兄のようだ。シャルロッテは一ヶ月ほど前に突如高熱で倒れ、今日に至るまで意識不明の状態だったという。しかし、オルフェウスという国名はヴァレリアの記憶にはない。


それに加えて、なぜヴァレリアがシャルロッテになっているのか、肝心なところは当然何もわからない。


 (この異常な状態がいつ戻るのかもわからない今、とりあえずシャルロッテとして過ごすのが最善のようだな)


しばらくシャルロッテの両親と話をしていると、体がだるくなってきた。意識がふわふわと浮いているようで、はっきりとしない。


「お父様、お母様。少し疲れたようです。休んでもいいですか?」


シャルロッテ本人が両親のことをどう呼んでいたかは知らないが、運よく記憶喪失ということになっているためあからさまに不自然でない限り口調はそれほど気にしなくてもいいようだ。


「ええ、もちろんよ。ゆっくり休みなさい」


「また様子を見にくるよ。何かあればこのベルを鳴らしなさい」


そう言ってシャルロッテの両親は枕元にベルを置き、シャルロッテの頭を優しく撫でると部屋を出て行った。


 (……ん?)


部屋の隅にいたシャルロッテの兄、カミルがなぜか部屋から出ていかない。医者が来た報告以外一言も発していないのは先程から気になってはいたが、温かな両親とは真逆に、彼はずっとシャルロッテに険しい視線を向けていた。シャルロッテの両親が部屋から出てからはそれが一層顕著になっている。


「どうされました?お兄様。私は休みたいのでできれば部屋から出てもらえると嬉しいのですが」


「……お前、今更何のつもりだ!」



  ……は?


「今まで散々俺たちに迷惑をかけてきたくせに、急に記憶がありませんなんて都合が良すぎるだろっ!今度は何を企んでるんだ!父上と母上にこれ以上迷惑をかけるな!」


「迷惑……?」


「お前が意味のわからないことばかり言うから、メリアベリル家の評判だって下がってる!どういう教育をしているんだって!メリアベリルの令嬢は頭がおかしい、気が狂ってるなんて言われてるんだっ、体が弱いのだって、どうせ父上と母上の気を引きたいためについた嘘なんだろ?」


 (待て待て、11歳の少年がここまで荒れるとは、このシャルロッテという少女は一体今まで何をしてきたんだ……?)


「と、とにかく俺はお前のことが大嫌いだからなっ!これからもお前が何をやらかして父上と母上に迷惑をかけるかわからない。だからずっと見張ってるからなっ!」


それだけ叫ぶとカミルは走って部屋を出て行った。


カミルとシャルロッテは仲が悪いのだろうか。


 (いや、それにしては気になることがあったな、両親は優しいが、部屋の外にいたメイドたちはシャルロッテに対していい印象を持っているとはどうしても言い難かった。起きた時にシャルロッテに付いていたメイドはそうでもなさそうだが……)


未だ襲いかかる異常な怠さに負け、とりあえずベッドに横になる。カミルはシャルロッテのことを監視するとは言っていたが、根本的にシャルロッテを害する気はなさそうだった。ひとまず安心して休めるはずだ。まずは体調の回復を優先しよう。


そう思い目を閉じると、案外すぐに眠りの世界へと落ちていった。





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