72.報告書
イリアスに手渡された報告書には、もともと書いてあったであろう活字の他に、シャルロッテがイリアスに教えた情報を元に行った追加調査の結果が手書きで書き込んであった。
『報告書』
□の月●日
東の果てにある森の中央部に正体不明の巨大魔力が突如出現。この魔力は誰でも目視できるほどの危険性の有無の確認のため、調査隊が派遣されたが調査隊の行方は途中で不明となった。
(行方不明となった調査隊の安否確認、また、巨大魔力の再調査のため、神殿から秘密裏に大神官が一名、神官数名、神殿騎士の中から小隊が派遣された。)
神殿へ協力の要請を行ったが返答はなく、後日イリアス殿下が聖女選定の激励という名もくで神殿へ返答、もしくは何か裏での動きがないかの探りを行う。
巨大魔力でわかっていることは、現在も少しずつ魔力の巨大化が確認されており、今後どのようなことになるか予想がつかない。
(巨大魔力は偏に魔力というには少々異質なものだった。魔力の流れが不安定にも関わらず、出力自体は安定している。通常、魔力が不安定な場合そもそもの力の放出自体が不可能であるが、現状観測している限りでは何か他の力が魔力と共に混在しているものと思われる。)
魔力の発生源の特定を急いでいるが、周辺には人の手の入っていない森林が広がるばかりで現在その発生源の特定もまだである。
現段階では不明な点が多いが、この魔力が人に影響を及ぼさない可能性は限りなくゼロに近い。先に送られた調査隊の帰還が確認されていない今、あの魔力が人に害を成す恐れも考え、しばらくは商人たちにも別ルートでの移動を要請、また万が一のため、騎士団だけでなく魔法師団の派遣を検討するなど迅速な対応を行うべきである。
(シャルル猊下が魔力の膨張を食い止めているとなると、より早い救出をするべきだ。彼が無事であるにも関わらず、報告、伝令が送られないということは、シャルル猊下以外全滅してしまった状況であるか、シャルル猊下の結界の存在により辛うじて生存できているほどの状況が想定される。)
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先ほどイリアスから聞いた内容と少しの補足がされた報告書の内容で、現状わかり得る魔力についての詳細は理解した。
やはり危険なものである可能性は高く、何らかの対処を行わなければいけないものの魔力自体に近づくことがでいない今対処方法がわからないというのが現状だ。
「殿下、そちらの本はどうですか?」
「……そうだね、内容は予想以上だけれど、それぞれの事象が歴史上のどこにあたるのかがわからないところがある。書き方、根拠の自信、その他諸々見ても、書いてあることが事実に近いことであることは確かだと思うよ」
「それじゃあ、これからは報告書の内容と本の内容を精密に照らし合わせる作業になるわね」
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できる限り毎日投稿は続けようと思っていますが、諸事情により一貫した時間での投稿は難しくなります。すみません。また予期せず投稿できない日もあるかもしれませんが、完結は必ずしますのでよろしくお願いします。