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67.出版元不明

この国ができるよりも前、となれば、少なくとも魔王がいた時代を経験している可能性がある。


初代館長は一体何のためにこんな複雑な並べ方を行ったのか。公的な文章も個人が出版した真偽のわからない本も全て混ぜられた本棚。


初代館長は本が好き。

それはわかる。どんな本でも捨てられると聞けばすぐにそれらの本を貰い受け、ここに並べるほどなのだから。


しかし本が好きなら、このような並べ方はあまりしないのではないだろうか。好きだからこそ、全ての本を分類ごとに分け、正しい位置に保管するのが普通ではないだろうか。


「初代館長さんって、変わった方だったとかそういう噂は何かありますか?」


「初代館長はそこまで変な噂が流れるような人じゃなかったとは聞くよ。誠実だし、本の修理も上手い。本人は魔法が得意じゃなかったようだけど、その分技術があったね。おかしいところといえば所構わず捨てられる本を拾っては独自の保管方法で本をしまうことだけだね。しかもその理由は誰にも教えてもらえないから余計に謎だよ」


「この並べ方は初代館長のこだわりなのですね」


「そうだよ。貴女もその本見つけるの、大変だったでしょう?」


おばあさんの視線がシャルロッテの目の前の本たちに向かった。


「そうですね……何せ量がすごく多くて」


「そりゃそうだよ。初代館長が生きていた頃からの本なんだからね。時が過ぎればすぎるほど本の量が増えていくんだ。いまだに年に何度か新しい本棚を買わないといけないのはこんなお婆からすれば本当に大変だよ。まあ、何か探し物があれば聞いておくれ。私ができることなら手伝うよ。久しぶりに人が来たんだ、それくらいはやらせておくれ」


「ありがとうございます。司書さんは……」


「ミルザだよ」


「ミルザさんは、どうしてここで働こうと……」


「本質は同じだったんだろうねぇ……私も本が好きだったから。ま、こんなに長い間一人で勤めることになるとは思ってなかったけどね」


それじゃあがんばってね、とミルザは階段を静かに降りていった。





午前中を全て使い切り、一応選んだ出版元がはっきりしている本は全て目を通してみたが、有力な情報は何もなかった。


(それと気になったのは、やっぱり神殿は勇者と聖女ばかり祭り上げて『ヴァレリア』のことを隠そうとしていることね。魔族と人間の間であったことが全て捏造されていたし、間の出来事をごっそりカットしているのはみていて気分の良いものではなかったわ)


どこの立場からも公平に書かれた本を見つける方が難しいとは思うが、繰り返してはいけない歴史を隠すようなことはやめてほしい。


(さ、気を取り直して午後は……)


読み終えた本は後で戻すとして、次は何を読むか考えたときに、本棚に残された出版元不明の本がふと目に入った。


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