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こうして、サカナさんは大海を泳ぐのです。めでたしめでたし

作者: 雲丹

網の中にサカナさんがいます。

井の中の蛙は大海を知りませんが、このサカナさんは知っています。

後ろには網を巻き取る船が迫っています。

エラに網が引っかかって逃げられそうにありません。

面白くないので何とか逃げられないかとサカナさんは辺りを見ます。


蟹が一緒に網にかかってました。

切ってほしいと頼んでみましたが、それができるならここにはいないと言われてしまいました。

苦しくなってきたのでそろそろ抜けないとまずいです。

景色がどんどん明るさを増していきます。

これはもうダメなのでは、とサカナさんは諦めかけています。


鮫が遠くで泳いでいました。

失敗したら次はないな、とサカナさんは気を引き締めます。

スパっと切れた傷口から血が出ています。

迫る鮫を見ながらサカナさんは覚悟を決めます。

そして鮫は網ごとサカナさんを丸呑みにしました。


他界する前に脱出します。

千切られなくてよかった、と思いながらサカナさんは鮫の中で暴れます。

疲れるまで暴れてもなかなか鮫は吐き出してくれません。

手遅れになる前に次の手を考えます。

突然サカナさんは海中に放り出されました。


何とかしようとしてもなんともならないのに、何かの拍子になんとかなってしまう、無情です。

逃げられたのは鮫がさっきの船に頭をぶつけてサカナさんを吐き出してしまったからでした。

ヌメヌメしてますが泳いでいる間にとれるでしょう。

ネバネバはなかなか取れませんが早く鮫から離れないとまた食べられてしまいます。

ノロノロとしか泳げませんが、それでも進むしかないのです。


箸のゴミを避け、進みます。

紐のゴミを避け、進みます。

袋のゴミを避け、進みます。

箆のゴミを避け、進みます。

箒のゴミを避け、進みます。


マリンブルーの綺麗なところに出たようです。

水面に光が差し、キラキラと光ります。

無理をして泳ぎ続けた体の疲れが癒えていきます。

目に映るすべてが美しく見えます。

もう身の心配はいらないようです。


やっと着いた安全なところにサカナさんは気分が上がります。

夢のような場所です。

ようやく住めそうなところを見つけました。


ランタンほどの光がたくさん海中に見えます。

陸上のことは分かりませんがうわさに聞く夜景とはこんな感じなのか、とサカナさんは泳ぎます。

瑠璃色まで落ち着いた海でサカナさんは少し眠たくなってきます。

連続でどれだけ泳いだかもわかりません、眠たくなるのも当然です。

ロマンチックな雰囲気に包まれてサカナさんは眠りに落ちます。


私の語りもここまでです。

をはさすがにつらいですね。

んじゃ、またどこかで。めでたしめでたし


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