最前線の危機
腹の魔物をひとまず治め、今日は就寝した。
翌朝鳥のうるさいさえずりが聞こえ目が覚めるグラディール。朝からまた腹の魔物が空腹を訴えているため食堂で再度治め冒険者ギルドの解体屋に向かった。
解体屋のおっちゃんに頼んでいた解体が終わっており、売却した素材の金銭と肉を受け取り、旅立つ準備を整え始めた。
初めに自分で移動するよりも動物にまたがり移動した方が疲労感が無く、快適な旅になると知っていたので初めてのクエストでレンタルした馬を買い取った。その馬にはサタンと言う名が授けられた。
干し肉やパンを買いだめし、馬の餌も買いだめをし、諜報大臣に最前線の街の情報を教えてもらった。
最前線の古都シュルシュトス、大陸の沿岸部に近い都市。昔は島国ブリティッシュと友好関係だったが、魔王軍の出現により、海での行動が全て出来なくなり、ブリティッシュは孤立し制圧された。
シュルシュトスは沿岸部からの魔物、陸からの魔物の二正面をずっと行っており、その事を考えると軍事力は他国を上回っている事がグラディールは確信する。
街内部は城は安全な内地の方向に背を向けて建てており、入場門は魔物らの侵入方向に新たに新設され、今まで内地の方向にあった門は裏門とされ、防衛隊の迅速な出陣が可能となっている。もし、裏門が不意な出来事により使用不可になっても堀があるため多少の時間稼ぎが可能であった。
城下町はこの街の様に区切りは無く、いろいろと入り混じっている。冒険者もそれなりに高ランカーが居る。治安はすこぶるいいというわけではなく、平均的との事。
この国からの道のりはかなり長い。だから、月に一度の魔導士たちの運営する加速馬車で一か月という長い休暇を得れる。しかし、それは昔の話だ今は物好きか、冒険者ぐらいとなっていた。
さらに、古都は人類しか受け入れていない。亜人族、つまりグラディールの世界では獣人族やリザード族の大半は人類との友好な関係を築きたいと思っている。しかし、メドゥーサ族、サキュバス族などは魔族との友好な関係を築いているため、多数の国からは敵対しされている。
理由はさっきの亜人族が統合されているのもあるが、少数の優れた者だけが魔王軍に協力しているのも理由の一つになる。
情報を得て、未だグラディールという居ない人を探す騎士たちを残し古都シュルシュトスに向かい始めるグラディール。
馬にまたがり涼しい風を受けながら竹林の中、林の中、森の中を駆け抜ける。この移動の最中にもゴブリンの微量な魔力を感じ取っていたが彼らに戦う意思が無いのを知っているグラディールは無視し行動をした。夜間の際も襲われる事なく平和だった。
最後の道、荒野を走っている最中に一人の獣人族が倒れているのが確認できた。彼女の腕の毛並みや色を確認すると虎の獣人である事が確認できた。
グラディールは周辺を警戒しながら倒れている少女に近づき生存確認を行った。結果、彼女が生きている事が確認できた。
馬に乗せ日光が当たるのを防ぐため布をかぶせ、水を口に軽く含ませ湿らせた。
数分間移動していると武器を持った三人男たちが正面から現れた。グラディールが彼らの視界に入ると走って迫って来た。
「そこの君!ここいらで獣人族の少女を見なかったか?」
「あぁ、見かけたぞ。荒野を真っ直ぐ行った森の中で素早く木々の間を駆け抜けている獣人族の女が居たぞ」
「ありがとう」
男たちは走って森の方向へと走って行った。グラディールは彼らが今馬に乗せている少女を狙っている事が予測できた。殺すためか、自分たちの欲求の為か、商売の為か、彼らの目的は知らないが、獣人族は才能のあるものなら身体能力は魔族を圧倒する者が時折いるため彼女を確保した。
「どうして助けた?亜人族は人類から嫌われているはずなのに」
「私には野望があるからな。それに、獣人族は魔族よりも身体能力が高いときがある。その可能性に賭けただけだ。不要な場合は直ぐに捨てる」
彼女の眼は少しの希望に満ちていた。その希望は人類への復讐か、それとも才能があれば腐った獣生がシンデレラの様な物になると思っているからか、その希望は彼女が口を開かぬ限り不明な点だ。
グラディールらは古都に到着し恒例行事の入国管理所の長い待機列で待っていた。しかし、それは誰もが何時しか訪れると思っていたことだった。そう、魔王軍がこの古都を制圧しに来るのを。
陸路から多くの魔力を感じ取ったグラディールは長い待機列から離れ、戦闘準備を整えた。そして、シュルシュトスから警報が鳴り響き、橋が上がり、入国待機列に並んでいた商人は颯爽とその場から逃走し、冒険者は危機に備えた。
それと同時に後方の裏門から高ランクの冒険者と国防隊が現れ、緊急事態陣形αとなる。緊急事態陣形αは魔王軍の幹部が攻めてきたときに使う陣形である。
この陣形は国家すべて共通しており、この陣形が対幹部戦で最も効率的にダメージを与えられると考えられている。しかし、あくまで想定実戦は今回が初とされる。
陣形としては、一部脆い防衛線を作り、そこに敵が攻めてきた所に包囲し殲滅。しかし、人類は幹部にどのような魔族、獣人族、魔物がいるかは想定が出来ていない。よって、この防衛方法は対魔物戦を改良しただけである。
対魔物戦用の陣形は、主に攻めてくる魔物が女を犯すことにしかない興味がないオーガやオーク、ゴブリンたちだけなので、この街の場合だと一部の防衛線をがら空きにし、断崖絶壁の堀で魔物たちは止まり、城壁から弓矢や魔法で一方的な攻撃を行う。撤退をしようとした魔物は前方で防衛線を張っている防衛隊で始末する。
よって、この陣形αの場合、相手が素早く頭が切れる者だと直ぐに崩壊しやすい。更に言うとサキュバスだと完全に詰む。もっと言うと、戦闘型の幹部一人と戦略型の幹部一人とその他魔物大勢だと確実に終わりが迎えられるハッピーセットだ。
そう、いまだ幹部らが攻めてこなかったからこの戦法に穴があり過ぎるとは防衛隊の彼らも想定はしていなかった。
クッソ雑魚ナメクジのまきゆづです。いつもと同じ要領で書き続けると表現力が開花するって素晴らしい事だと思っています。タイピング速度も上昇気流の様に上昇してハッピーセットですね。それにしてもこの脆い戦術を思いついたのは誰でしょうかね?