圧倒的な差
「両者、準備はよろしいくて?はじめ!」
「エレクエンテットグングニル!」
先手必勝の言葉を胸にペンドラゴンが放った槍は音速で勇者に向かって飛んでいく。勇者の前面に出していた盾に命中し、貫通。見事に勇者の腹部を貫通し突き刺さった。っと誰もが思ったが寸でのところで防御魔法が間に合った。
「えー、勝者ペンドラゴン!」
闘技場内は静まり返った。勇者が油断していたとは言え、先制攻撃で勇者が死にかける事態が発生したのだ。しかし、一人が拍手を行うと周辺に伝わり数秒ほどで全員が拍手をしていた。
勇者は治療室送りとなり、次の選手たちが入場した。
時が流れていると、グラディールの目の前に選手が飛んできた。やったのはフェイルだった。開始早々、敵の懐に飛び込み、みぞおちを決め、顎の先端に向けてアッパーを全力で放った。そして、現在に至る。
勇者御一行<勇者以外>とグラディール御一行<エーレ以外>は順調に勝ち進み準々決勝で幼馴染と戦う事になった。
「魔法科のグラディール対特別魔法科の賢者ベル。魔法使う者同士の熱い戦いが始まります!では、開始!」
初手グラディールがドグマを用いてクレイモアを作り出し肉弾戦に持ち込む。ベルは無詠唱で初級の魔法で弾幕を作る。しかし、エーレとの戦いで鈍っていたからだが本稼働し始めたため、ボールを投げるよりも簡単に避ける。
弾幕を形成している最中に呪文の詠唱を行っていた。それが見えたグラディールは魔力障壁を張る。
「自然よ私の体を伝いて、敵を滅ぼせ。ハイマットフルボルケイノ!」
弾幕が止み、ベルの周囲からマグマを固めた火球が三つ形成される。周辺は驚いているが、グラディールは違った。元魔王としての強い者との対決は血がたぎるものだった。
その三つの球が放たれた時、グラディールはベルに向かいつつ勇者が使っていた盾を作り出し、構える。そして、球が命中し周囲にマグマをまき散らし爆発する。
勝負あったかと思われたが、グラディールはその中を駆け抜けてベルに接近し、刃を喉元の手前で止めた。
「我の勝ちだ。降伏しろベル」
「私が近接戦闘の対策をしていないとでも?」
ベルの足元から爆発が起こり、吹き飛ばされる。ベルも吹き飛ばされるがこれで十分な距離が空いた。
また振り出しに逆戻りか。ベルはそん所そこらの奴らとは魔力量は変わらないが効率よく変換出来ているから持続力が長いな。なら、私も魔法戦へと移行する。
弾幕を形成すると思われたが、ベルは接近戦に移行した。杖を槍の様に構え、真っ直ぐグラディールに突っ込んでいった。
杖の先端に光剣魔法を付け槍の様に振り回し、無詠唱魔法も使いグラディールを壁際に追い込む。杖を腹部ぎりぎりで止めた。
「どうですか、負けを認めたら」
「結局は負けたと言わせたいだけなんだな」
グラディールの行動は既に完了していた。逃げている最中に魔法陣をそこらかしこに仕掛けてベルを包囲していた。そこからクサビが発射されベルを拘束する。
「チェックメイト」
拘束をほどけないと判断した審判がグラディールの勝利を宣言した。
「あなた強いわね。それに、魔法戦に移行したって事は魔力量に自信があるのですよね。カードを拝見してもよろしいですか?」
「すまないな、ステータスカードは部屋に置いてきたんだ」
「そうですか。でしたら今度訪ねに行ってもよろしいですか?」
グラディールは考える。断ると好奇心を持たれ付きまとうだろう。承諾すればアレックスとバレル。しかし、アレックスとばれた所で何も異常は無い。
「あぁ、別に構わない」
ベルは笑みを見せるとそのまま去って行った。
次は騎士王とペンドラゴンの勝負が始まった。ペンドラゴンの先手必勝のグングニルは封印されたが、自身に強化を掛けて突っ込むが軽くあしらわれて終わった。