入学式という名の初見殺し
二人の雌雄を決する戦はデュランの仲介<熾烈な痛み>によって終わりを告げた。しかも三分も経たずに。
彼女らの功績によって周辺の動物は逃げ出してしまい、この日と翌日は果実のみの食事となった。
狩りは果実生活を終えた翌日に再度実行した。もちろん、場所は一昨日、昨日と移動を行っているので大丈夫なはずとグラディールが思い実行する事となった。
「メンバーはエーレとフェイル、俺とペンドラゴン。それぞれ左右に分かれ、馬車を中心に半径1キロメートル内で狩りを行う。では、狩りを開始する」
合図と共にエーレが飛び出す。森へ入り枝から枝へと標的を狩るために最短ルートを進んでいた。ペンドラゴンもそれに負けじと森に突入した。
フェイルとグラディールも彼女らの後を追った。エーレは順調に五匹の豚を仕留めていた。ペンドラゴンは未だ成果が無かった。
グラディールはペンドラゴンを追っている最中に二匹の牛を仕留めていた。
「早くない?まだ私は一匹も仕留めてないのに」
「自然の流れを感じろ。自然の力が集まっている場所には獲物が居るはずだ。だが、予定よりも早く切り上げなければならないようだな、この牛を見る限り。次の標的を確保したら早急に馬車に戻るぞ」
そう言いグラディールは地面の草をさわり、魔力を少量流した。自然が魔力を使うためにその場所に魔力を送る経路をたどると羊が居た。
手前から数を数えて三匹が草を食べていた。それを再生させるために魔力が使用されていた。
グラディールが狩る順番を決めていると、ペンドラゴンが手前の羊の頭を槍で突き刺し、その奥の羊は尻尾で頭部を潰し、今起こった事を本能的に理解した最後の一匹の羊はペンドラゴンのパイルバンカーの射程内に既に捉えられていた。
三匹は綺麗に頭部だけが破壊されており、羊毛には傷が付いておらず、少量の血が付いてるが普通に売れる状態だった。
三匹の子豚ならぬ、三匹の頭部の無い羊と二匹の牛を持ったグラディールペンドラゴンチームが馬車に戻ると10匹の豚の死体があった。豚は全て首にのみ損傷が見られた。
「お帰り!」
「ただいま。なかなかの収穫だな。誰かこの中に空間保存魔法が使える奴はいないのか?」
「「「何ですかそれ?」」」
グラディールは改めて思い知らされた。前世と今の魔法の万能性の低さを。確かにグラディールの使っている魔法が前世からの持ち込み品でこちらでも使えると言う事は、こちらの者も使えるとは限らない。
体内に秘める膨大な魔力を腕部に集中させる。グラディールの立っている大地周辺は紫色になり、濃霧が周辺を包む。人間の皮膚が剥がれ落ち、そこから甲冑の様な装甲が腕を包む。
腕部が完全に前世と同様な状態になると濃霧が晴れた。そして、甲冑の様な装甲は内部へ引き込み人間の皮膚が現れた。
「何をしたんですか?」
「腕部を前世と同じようにしただけだ」
尖った爪で輪を描き、空間保存魔法を使う。その中にどんどん狩った動物を放り込んでいく。謎の時空を作り、その中に物を収納する姿はまさしく魔王であった。
「行くぞ」
力が先ほどまでとは桁違いに沸き上がり、魔力の貯蔵量が膨れ上がっているのが本人でも、周辺の者でもわかるほどになっていた。
馬車を走らせて、数分が経過した時にグラディールは先ほど狩りで入手した豚をさばき始めた。馬の管理はフェイルが行っており残り二人は寝ていた。
以前の感覚が少しずつ戻ってきており、豚の解体は素手とナイフだけで終わらせた。
食料の補給が終わり数日が経過し、グラディールたちは魔法学校に到達した。その前に、入国検査があったのだが、難なく通れた。
道中は危険な場面は何度かあったが、依頼主の娘には被害の無い物であり、とても楽な移動であった。
馬は学校側で管理をしてもらえ、入学式が行われる前から寮内を使える事が出来た。それぞれが個別な部屋であり、男女は分かれていなかった。
そして、入学式が行われる当日。いつもと変わらぬ服を着た、グラディールが席に座る。周りの生徒とは雰囲気が格別していた。
この学校の生徒会長と思われる女性が演説台に立つ。少しの静寂が訪れるが、それは直ぐに騒がしくなるとは誰も思わなかった。
「入学テストを合格した皆様。本校の募集生徒数は300人に対してこの場には600人の合格者が居ます。それは何故でしょうか?そうですね、今から行われるのは今年度から始まるバトルロイヤルです。半数が無くなるまで皆さんで殺しあってもらいます。精神的、技術的、肉体的に優れた者がこの魔法学校に入学できます。では、頑張ってください」
演説が終わると同時に空中で衝撃波が起こった。その原因はペンドラゴンとエーレだった。この二人は周りなど構いもせず全力で潰しあっていた。
「お前らやめろ」
グラディールが仲介に入り、ペンドラゴンは叩き落とされるが、エーレはグラディールと共に床に着地した。
初見殺し、ダークソウル・・う、頭が。クソ雑魚ナメクジのまきゆづです。今日も今日とて小説のライティングは楽しい物です。