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無気力

作者: ちま

桜が舞い散る頃、俺は死んだ。


激しい受験競争に勝ち抜き、ようやっとの思いで上京したのは3月のこと。

雪深い地元とは違い大都会にはすでに雪の面影はなかった。そのことに俺は嬉しさを爆発させた。あの息苦しい真っ白な世界から解放されたと思った。周りを見渡せば人ばかりであることも俺は嬉しかった。あの滅びいくだけの町から俺は活気ある大都会に来たのだ。俺は生命力が溢れていく気がした。


大学が始まり、俺は大都会が思い描いていた場所ではなかったことを思い知った。朝の通勤ラッシュ、毎朝繰り広げられる激しい席取り競争。俺はあまり座ることにそこまで熱意はなかったから無理にその争いに加わることはしなかったが、立っていてもあまり良いことはなかった。駅員に無理に押し込まれ寿司詰め状態の中通学する日々。イライラする人々、不機嫌な顔、たまに響き渡る怒号。俺はうんざりしてきた...。


大学の友人にそのことを話しても誰からも理解を得られなかった。「都会人は凄いな。毎日何と闘ってんだ?」と聞くといつも「別に闘ってねぇよ。これが普通だし...」と決まった答えが帰って来た。俺には理解できなかった。俺の地元では電車で席を競いあって座るものでも無かったし、電車に乗ることが苦痛と感じたこともなかった。


友人曰く、俺には必死さがないらしい。「生きるのに必死になるのは当たり前だ。日々、競争なんだよ。闘いなくしては生きれない。それが都会だ。」この友人は決して都会育ちと言うわけではなく、俺と同じ地方出身の奴だった。「都会人は小さい頃から生きるために闘ってきたから、そのことに気がつかないんだよ。」とも言った。生きるために闘う?一体いつの時代の人間だ。戦国時代じゃあるまいし...。正直俺にはピンと来なかったし、そもそも、生きることにそこまで執着もなかったのかもしれない。


俺はかなりの面倒くさがりだった。外に出るのも、風呂に入るのも、ご飯を作るのも、究極寝るのも面倒くさく感じた。その面倒さがりが大学に入ってさらに酷くなった。まず、電車に載るのが面倒くさくなった。次に人と話すのが面倒くさくなり、大学に行かなくなった。ご飯を作るのも掃除をするのも風呂に入るのも面倒くさくなった。そして、寝るのも面倒くさなり...最後俺は死を選んだ。


俺が死んだ理由...「生きるのが面倒だから」

それ以上それ以下もない。あながち友人の言ったことに間違いはなかったと死んでから俺は思った。俺には生きる必死さがなかったのだ。

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