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二人の男

いつからだろうか。

私は芦田光のことが好きになっていた。


寝顔にキスしたあの日から、芦田光との連絡は途絶えた。


私は自分を責めた。

また、思い上がってしまった。と。




それから、2日ぐらい経った頃だった。

兄から連絡が来た。


"お母さんが倒れた。今すぐ帰ってこい。"


私の頭は真っ白だった。

とにかく急いで、会社を出て、実家の近くの大学病院へと向かった。


母の様子は大丈夫そうだった。

一安心した。

すぐ退院できるらしかったので、兄に任せて、私は会社へと戻った。



その夜、悲しくて、柴田翔と飲みに行った。

「お母さん、大丈夫でしたか?」

「うん。ひとまずはね。」

「良かったです。僕、花宮さんが悲しんでる姿見てられません。」

「ありがとう。」

涙が出て来た。

いつも母の望む通りに生きてきた。

それなのに、母がいなくなったら、私はどうしたらいいのだろう。母がいない世界なんて考えられなかった。

「花宮さん…僕じゃダメですか?」

「え?」

「僕じゃ、花宮さんの助けになれませんか?」

「ありがとう。でも、私は大丈夫だから。」

柴田翔に頼るのは怖かった。

年下だし、なんといっても柴田尚の弟だったから。



週末、久しぶりに芦田光がいるコンビニに行った。

「芦田くん!なんで連絡くれないの?」なんて言えず、モジモジしていると、芦田光のほうから切り出した。

「優姫、ごめんな。俺らいい友達だと思ってたんだ。だけど、ごめんな。」

理解できなかった。それがどういう意味か。芦田光が何を言いたかったのか。

「なんで?なんで、謝るの?」

「わりぃ。仕事中だから、帰ってくれ。」

こんなに冷たい芦田光は初めてだった。

私はとぼとぼ歩いて帰っていた。

ずっと考えていた。

思い当たることはひとつ。

私がキスしたことだった。

でも、芦田光は寝ていたし、そのキスに気づいてるはずなかった。

わからない。


「あのー、これ、忘れてますよ?」

後ろから走って追いかけてきたようだった。

冴えない顔をした私より若そうな男は、コンビニの制服を着ていた。

「あ、すみません。ありがとうございます。」

わかった。私が辞めた後に入ってきたって芦田光が言ってた人だ!

「あのー、大丈夫ですか?」

「え?何がですか?」

「いや、あのー、えっと、ふ、振られてたから。」

「ふ、振られた?誰が?」

「え?あ、あなたが…」

「え?わたし?私が?」

私はやっと気づいた。

さっきの芦田光の言葉の意味に。

芦田光は私のキスに気づいていた。

そして、さっき、私の気持ちには応えられないと言いたかったのだ。

私は走ってコンビニに戻った。

「友達!友達でいいから!」

レジに向かって叫んだ。

客全員が振り返った。

芦田光は目を丸くして、「来い!」と私を外に引っ張り出した。

「優姫、休憩もらってきたから、ちゃんと話そ。」

「うん。ごめんなさい。この前、私がキスしたのきづいてたんでしょ?」

「あぁ。俺、優姫の気持ちには応えられない。」

「何でか聞いていい?」

「俺、婚約してる人がいるんだ。」

芦田光には付き合って3年になる、将来を約束した相手がいた。そんな話、全く知らなかった。

「友達でいい。友達でいいから、離れていかないで。」

今言える精一杯の思いをぶつけた。

「優姫……わかった。」


私は泣いた。泣いた。泣いた。

芦田光は特別だった。だから、本心を話せた。

だというのに、芦田光にとって私は特別ではなかった。中学の頃から芦田光にはたくさん友達がいた。私とは正反対だった。そんな彼が私に特別な感情を抱くはずなんかなかった。住む世界が違うんだ。私は自分にそう言い聞かせた。



すべてが無になる。



あの時と同じ感覚だった。

読んでいただきありがとうございます。


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