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芦田光との出会い(2)

「なぁ、優姫。今日、バイト終わったら、飲みに行かないか?」

あれから2週間くらいが経ち、バイトにも慣れてきたある日、私は芦田光に飲みに誘われた。

私は断る理由もないので、誘いにのった。


この日は1時間先に芦田光がバイトを上がる予定だったので、芦田光は先に居酒屋に行っていた。


「優姫!こっち!こっち!」

「あ!芦田くん、もう酔ってない?」

「そんなことない。俺、酒強いから。ほら、優姫もなんか頼めよ。」

「ありがと。」


それから1時間くらい店長の愚痴を聞かされた後、芦田光は真剣な顔をした。

「なぁ、そろそろ本当のこと話さねぇか。」

「何?本当のことって?」

「優姫、お前、頭良かったよな?優姫みたいな人が何でコンビニなんかでバイトしてんのか、俺、不思議でしょうがねぇんだ。」

「そ、それは…」

汗がじっとり出てきた。

「あぁ、わかった。俺から話す!

俺は、俳優、やってんだけどさ、全然売れなくて、副業としてバイトやってんだ。」

「そっか。」

なんかガッカリした。芦田光は自分と同じニートだったのではないかと期待していたから。

でも芦田光は全然違った。

夢を追い続け、努力を惜しまない、キラキラした青年だった。

「で、優姫は?…言えないならいいよ?」

「ごめん。」

「こっちこそごめん。」


微妙な空気になって、お開きになった。

「家まで送ってくよ。」

「いい。大丈夫。」

「なんで?俺、心配だから。」

「わかった。ありがとう。」


歩いて帰る途中も空気はなんとなく重かった。


「あのさ、ごめんね。」

「何が?」

「だから、さっき、芦田くんは話してくれたのに、私は言えなくて。」

「あぁ、気にしてない。」

「嘘だ!気にしてるでしょ?」

「気にしてない!ただ、最近、優姫と心の距離が縮まってきたみたいだったから、調子乗っちゃってただけ。」

なにそれ、嬉しい。

「私ね!私、会社辞めちゃったの!1年間くらいニートだったの!それをね、親に隠してたんだけど、バレちゃって……。バカだよね?」

気持ちが高ぶって、気づいたら、すらすら喋っていた。そして、泣いていた。

芦田光の顔をのぞくと、彼は目を見開いて、驚いているようだった。そして、にっこりと笑った。

「バカじゃない。優姫はえらいよ。優姫はきっと今まで頑張ってきたんだろ?たかが、1年くらいニートだったからって、どうってことないよ。」

家族以外の人の優しさに初めて触れたようだった。たった2週間ほど、一緒に仕事をしただけで、なぜ芦田光には何もかもわかってしまうのだろう?

涙は止まるはずなかった。

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