再会翌日
柴田尚と再会した夜、私の夢に尚と翔が出てきた。
そして、私はその夢の中で、翔とキスをしていた。
尚の目の前で。
起きてからも、その夢の映像がはっきりと脳裏に焼き付いていて、離れなかった。
そして、出勤。
翔に会いたくないなと思いながら、神経を張り巡らせて歩く。
「花宮さーん!何で帰っちゃったんですか!」
…結局、見つかった。
「お、おはよ。さあ、仕事仕事。私語をしてる暇なんてないわよ。」
夢のことを忘れたいのと、昨日の出来事を忘れたいのが、合わさって私は誤魔化すことしかできない。
「花宮さん、今日お昼一緒に食べません?」
翔は相変わらずしつこかった。
はぁ。
でかいため息が出た。
すると、翔は悲しそうな顔をした。
「わかった、わかった。食べよ。ね。」
まるで、小さい子を慰める母ようだったと、後から考えても笑える。
そして、昼。
会社近くの定食屋に入る。
「こんなとこでよかったの?高級なお店しらなくてごめんねー!」
つい、嫌味を言ってしまった。
「花宮さん、俺、ここきてみたかったんで嬉しいです!」
なんか、この天然というか、純粋というか、こういうところが苦手だ。
私は黙々と食べることに集中しようとしていた。
だというのに、翔は私に質問攻めしてくるのだった。
「なんか今日すごく冷たいですよね…やっぱ昨日のことが原因ですか?」
「昨日は何で帰っちゃったんですか?」
「やっぱり、兄と会うのはしんどいっすか?」
「もしかして、俺が邪魔でした?」
あまりに早口でまくし立てるので、面白くなってきてしまった。
「ははははは。そんなに色々聞きたいことがあったのね。なんか面白くなっちゃった。」
「…すいません…。」
「それで、どれから答えればいいの?」
翔は咳払いをして、意を決したように言う。
「昨日帰ってしまった理由を教えてください。」