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心を許せる同僚

「花宮くん、ちょっといいかな?」

課長からの呼び出しだった。

「…はい。」

「体調はどうだい?」

「あ、良くなりました。ご迷惑をおかけしてすみませんでした。」

「うん…。正直に言わせてもらうが、3日も休まれるとこっちもなかなか困るんだ。」

「はい。申し訳ございませんでした。」

「君が休んだ3日分の仕事はきちんと今日中に終わらせてくれたまえ。」

「えっ…あ、はい。」


はぁ…。

自分が悪いのだから、断れるはずなんてなかった。



結局、仕事が半分終わった頃に0時を回ってしまった。

「終わらないや…どうしよう。」

そんな独り言をつぶやいても、助けてくれる人なんて、一人もいなかった。

もちろんまだオフィスに残っている人は私だけだった。

「1時間だけ仮眠をとろう。」

そう決めて、デスクにうつ伏せで寝た。




目を覚ますと、もう朝だった。

「やってしまった!!!」

泣きそうだった。

「私ったら、バカ、もう!!!バカバカバカ!!」

自暴自棄になって、髪をくしゃくしゃにして、地団駄を踏んだ。その時だった。

「花宮さん?」

振り返ると柴田翔がいた。

「え?いたの?」

「その言い方、ひどいです…。ちょうど10分前くらいからいましたよ?」

「うそ?(寝てたところ見られてたんだ…)…っ!

そうなら、なんで起こしてくれなかったのよ!」

「花宮さん、きっと夜遅くまで仕事して、疲れてるだろうから、なるべく寝させてあげようと思って…。」

照れながら言われると、こっちも恥ずかしくなった。

「ありがとう…。って、ヤバイ!!まだ半分しか終わってなかった!!」

「あんな量、1日で終わるわけないですよ。俺、手伝います。昨日は手伝えなくてすみません。外せない用事があったので。」

「全然大丈夫だから。手伝ってなんて言ってないし。」

外せない用事って何よ。

どうせ女の子と食事でもしてたんでしょう?

外せない用事というのが私にとって、とてもおもしろくなくて、強がってしまった。

まったく、28歳にもなって、自分はまだまだ子供のようだった。


控えめに顔を上げて柴田翔の顔を覗くと、少し残念ような顔をしてた。

「ごめん、なさい…。手伝ってください…。」


日に日に、柴田翔には心を許し始めていた。



結局、課長が出勤してくる前には、なんとか、全部の仕事を終わらせられた。

「今夜、仕事終わったら、打ち上げしましょうよ?」

柴田翔が耳打ちしてきた。

そんなのやらなくていいわよ!と言おうとして、一瞬ためらって、今日のお礼をしなくてはいけない、という思いが及んで、

「私がおごるわ。」

と言ってしまった。


柴田翔は屈託のない笑顔を見せた。


その顔はどことなく、兄の柴田尚に似ていた。

心が苦しくなって、身体が急に重くなった。

読んでいただきありがとうございます。

ぜひ、評価をお願いいたします。

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