優秀は逆に困ります
こんにちは。学生時代から使用しているキーボードがなんとか持ちこたえてはいますが、入力するのに少し変な動作を起こすので、誤入力が多くなる今日この頃。そろそろ交換をしないといけないのかもしれないと思いつつも、愛着がある為、交換が出来ない日々。
物語もいよいよ終盤に向けて走り出します。最後までお付き合いいただけるとありがたいです。
という訳で、秘書確定しました。就任させました。ですが!優秀すぎます!ううっ、聞いていません!タイミング良く飲み物を用意してくださったり、散らかっていた回収後の本をいつの間にか暴走を封印する魔法をかけた保管庫へ片付けていますし、作ってくれるご飯が美味しすぎて、もう他の所では食べなくても良いのではと思い始めてしまっています。お師匠様との会食がある時も、伝えた覚えが無いのに、何故か把握されていますし…はっ!もしかしてストー…
「9代目様、今良からぬ事をお考えではありませんか?報告書のご確認をお願い致します。余計な事を考えていますと、お上へ報告させていただきます…よ?」
「分かっています!以前お師匠様からとてつもなくお叱りを受けましたので、もう身に染みています!」
そう、健一を秘書に決めてから数日たち、報告書を渡しに伺ったあの日。お師匠様についポロっと言ってしまいました。私のスケジュールが全てバレていて、もしかしてストーカーなのでは?と。そうでした。私が使っているスケジュール帳は、お師匠様がいつか秘書が出来た時、共有出来る方が仕事もしやすいだろううと、もうひとつ頂いていました。つまり、私が書いた内容が全て筒抜けになるというプライバシーの配慮もないとてつもない代物だった事を!頂く時に説明されていた事を忘れてしまいました。
「まったく、呆れたものだ。まだいろいろ言いたい事はあるが、このくらいにしておこうかの。で、快適だろう?部屋を訪ねた時の散らかりが無くなって快適だろう?」
「秘書は使用人ではありません!仕事仲間ですよ!」
「だが苦手なお前にとっては助かるだろう?あー愉快だ!想像しただけで愉快だ!まったく飽きないな!」
「笑う所ですか!そこ!…もうお師匠様は意地悪です。」
「…すまないな、お前をからかう事は妾の楽しみなのだ。成長したお前を見るのがな。もうすぐ命日のあやつとの約束でもある。」
「先代との約束…ですか…」
「守る為とはいえ、好きでもない男遊びをして噂を噂で塗り替えた。罵倒され続け、心を壊しながらもお前を育てようと頑張った。他の者達は職務放棄に見えたのだろう。誰よりも働いておったあいつなのにな。お前にまで辛い思いをさせてしまってすまなかった。守れなくてすまなかった。」
「…私は…」
私は、先代…母親の事はほとんど記憶にありません。今では少なくなったあの噂も、結局お師匠様とキョーヤのお二人の力です。今も過去もお二人が居なければ、私はここには居なかったでしょう。
「キョーヤの事、どうするのですか?」
「お前の補佐に着かせる。その方があの者も安心するだろう。」
「まだ契約は続いているのですか?先代は亡くなったというのに。もし健一を一人にしてしまった時、どうすれば」
「なにも知らなくても良い。そもそも名を与える事は禁忌だ。推測にはなるが、お前の母親と名を交換してつけたのではないだろうかと思う。お前も名を貰おうと思うなよ。苦しむのはあいつだ。」
「分かりました。」
あの時、名を与えてしまった。お師匠様には初めてあそこまで怒られました。禁忌という事は分かっています。ですが、私には見過ごす事は出来ませんでした。あの時の私のような姿を見てしまったのですから。
「おかえりなさいませ9代目。」
「はい、ただいまです。」
「ミルクティーが飲みたいです!」
「ご用意は出来ております。荷物お預かり致します。あちらのソファでお待ちください。」
「その前に聞いておきたいことがあります。健一は、私に名前をつけたいですか?」