夢の中では…
私は過去の夢を見ました。あの思い出したくもない夢を。
私は禁忌の子。産まれてはいけない存在。ずっとそう言われながら生きてきました。何度も殺されそうになりました。何度も苛められました。何度も刃物で刺されました。
この世界でのルール
「下界と交わるべからず、禁忌の子を授かるだろう」
私は先代司書様と下界の者との禁忌の子。キョーヤは先代司書様の恋人で婚約寸前だったとご本人から伺いました。ですが、お仕事中にたまたま出会ってしまった(あるいは誰かに嵌められた)せいで、禁忌を犯した。そして私が産まれてしまった。
お師匠様が調べてくださいましたが、誰かに下界での仕事があると嘘を伝えた者が居るそうです。そのせいで、下界に降りに行きましたが、突然結界が壊れ出会った。出会ってしまった。
通常禁忌の子は、職務には就けません。禁忌の子には下界の者と同じで寿命があります。他の皆さんのように魔力はありません。なので、一生監禁先の塔から出る事は出来ません。ですが、お師匠様と先代司書様は大のなかよしだったそうです。私の事を託して亡くなりました。お師匠様は先代司書様との約束を有言実行しました。私を先代同様、忘却図書館の司書として迎え入れてくださいました。
不死の力にも限界はある。先代司書様は禁忌破りの者として、沢山の罰を受けられ続けました。お師匠様は何度も止めましたが、それでも見えない所でずっと続けられました。火炙り、暴力、刺殺、暴言、人体の皮剥、首の切り落とし…他にも沢山の事を、私の目の前で受け続けていました。
お師匠様は辛い記憶を消してくだいましたが、全てを消し去る事は出来ませんでした。全てを消してしまえば、私と言う存在の記憶も無くしてしまうから。今でも眠る事は怖い事です。思い出してしまうのがとても怖いから。
先代司書様とお師匠様は、とても大切に育ててくれました。今思えば、当時から司書の仕事を見せてくれていたのは、私が引き継いでも困らないようにする為だったのかもしれません。
お師匠様が私を忘却図書館の司書へ任命した時、場は荒れました。禁忌の子は牢屋行き。牢屋と言う塔へ戻れ、司書としての魔力も無いくせに、知識の無い者は消えろ。
お師匠様は声を大にして仰いました。「魔力が無いのなら、私が分け与えれば良い。知識が無い訳が無いだろう。先代司書の子だぞ?お前達よりも実際を見ている者に託すのが一番だろう。異議があるのならば、それ相応の仕事を見せてみろ。司書の仕事で死んで見せろ。この子程の度胸の在る者はこの場で示せ。我が思う程の力で捩じ伏せてみろ。出来ぬのなら反論は許さぬ。」
お師匠様のお言葉で、私は無事司書になる事が出来ました。苦しい時間も多かったですが、お師匠様、キョーヤ、そして健一様達のお力のお陰でここまで来る事が出来ました。今では、誰にも文句を言わせない所にまで成長しました。えっへんです!