我の願いは
我の名はイリアス。忘却図書館で9代目当主を守り、任務を手伝う。歴代当主は、必ず使い魔と共に封印を行う。でんなければ、封印中に暴走した記憶にのまれ、己の存在が消え、当主としての仕事が出来なくなる。
「はじめまして私は忘却図書館9代目当主です。あなたのお名前は?」
「我ガ名ハ『イリアス』。代々当主ヘト仕エル者ナリ。」
「カラスの姿なのですね。目がとても綺麗です。これからお願いします!」
深く頭を下げながら、少女は言った。目を綺麗だと言ってきた者は初めてだ。
「9代目、我ノ本当ノ姿ヲ見セヨウ。封印二集中出来ナケレバ困ル。」
「はっ!そうですね!イリアス様の姿が想像以上に美しかったとしたら、私は絶対に封印に集中出来ずに見とれている事でしょう。羽も美しいので、本当の姿はもっと美しいに決まっています!」
思わず笑みがこぼれた。どうやら9代目は、今までの当主には無かった、おもしろい物が見られる事だろう。
『黒キ深淵ヲ見透ス者ヨ。暗キ力ヲ解放セヨ』
黒髪、黒手袋、黒服
そして血のように赤い瞳。これが我の本当の姿。この姿になると話す事は楽になるのだが、何故か歴代当主達は顔を赤くし、別の使い魔に変更してくれと言われてしまう。
「どうだ?これが我だ。」
「綺麗...とても綺麗です!私とは正反対です!髪も、服も、瞳も!私は真っ白なのに!」
歴代当主の中では、異様な姿である事は分かる。当主の証である首の赤くて大きくて長いリボンと、その瞳以外は、すべて白い。本当にめずうらしい。
「私は、この姿のせいで、嫌悪され続けました。前当主様より選ばれた理由も、見た目が気味悪く、職務を放棄されるようにたぶらかされる事も無いであろう。そう言われて、9代目に選ばれました。」
「そうか、前当主8代目は、禁忌とされている男遊びっが多かったからな。そのせいで、上に見つかり、当主を別の者にとの声が上がった。そして、、9代目、お前が選ばれた。」
「そのようです。」
苦笑いのような顔をした9代目。本来ならば、この様な幼子に当主を継がせる事は無い。異例中の異例だ。我は9代目の頭を撫でた。
「えっ、あの…!えっ!イリアスさん!」
「イリアス。さんづけなどせずとも良い。誓おう。我は9代目当主のお前を、全力で守り、寂しい思いもあせぬ。我の全てをかけて、守り抜こう。」
「…はい、イリアス。これから、お願いします。」
9代目は、涙を流していた。愛らしい。我はこの娘を、ずっと守り抜く。そう決めた。このような感情は初めてだ。その後、どうやら9代目は、我の事を友と言うようになった。
これから先が、楽しくなるのだろう。そう予感が告げる。我の願いは、愛らしいお前の事を…