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忘却図書館で待っています  作者: 縁煉水鈴
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最初で最後のプレゼント

長い間終わらなかった物語。やっと終わります。物足りない感じですが、お許しくださいませ。これが私とあの子の望んだ結末なので。

 「9代目が死ぬとは。いったいどういう事ですか?」

 迂闊だった。お側に居るはずの健一がこの部屋に居るとは。


 「お前はあの子との名の契約を交わしているな。そうか。見つけていたのなら話は早い。氷にあの子の記憶を移植する。手伝え。」

 「その前に理由を教えろ!俺の主と何処であった!!」

 「うっとしいなぁ。カレンと仲良しごっこしていたのに、何も教えてもらえていないのは悲しいなぁ!今どんな気持ちだ!?あっはははは!」

 「笑う所じゃないだろう!こっちは真剣なんだ!このままお前の首をへし折っても良いんだぞ!記憶だけ確認出来れば良いんだからな!」

 駄目だ。煽りに乗るな。そう分かっているのに誘われている。カレン様の事、当主様との事。何なんだ、この違和感は。氷は当主様と同じ外見。当主様とカレン様は親子。では父親は…まさか!!

 「…まさかお前、当主様の!!!」

 「やっと気がついたか。遅いなぁ。全然遅いぜ。」

 「そうであるなら、当主様が燃え尽きるのも頷ける。だが、カレン様がそんな過ちをするはずが」

 「と、思いたいんだろう?真実なんだよねぇ~」

 「天界と下界が交わってはいけない。それは過剰な力を手にする。そして力を出す変わりに短命。その掟を破ったから当主様が産まれた。」

 「交わっているんだってぇ。物分かり悪いなぁ。そっちで特別にやっていた事あるだろう?力を奪うなり、傷の治りが早かったりさぁ。」

 お上が定期的に当主様との交流をされていた。力を分け与えていたと聞いていたが、まさか逆だったのか。過剰な力を回収していたという事か。

 「全部説明してやろうか。後ろで何も出来ない顔して突っ立っている無能の役者にも必要だろう?」


 カレンと俺は、氷とお前達が出会った場所であった。傷だらけで。治療が必要だが、病院に連れていく為の金も無いし、どうしたものかと悩んで此処に連れてきた。寝かす事しか出来なかったが、それだけで良いとカレンは言ったので寝かせていた。1週間程で少し起き上がれるようになったが、完全に治ったわけではない。俺らしくもなく、外で煙草を吸いながら空を眺めて、カレンに呼ばれて、忘れていた愛を思い出したと言われて。俺もどうかしていたんだ。手をだした。関わってはいけない事だと言われていたのに。我慢が出来ない男だからなぁ俺は。まぁ、良い女だったぜぇ。おっと話が逸れたな。そしてあいつが出来たと、俺が忘れていた頃にわざわざ言いに来たんだよ。身体中傷だらけのままな。その時にそっちの事情も聞いた。そしてあの本を受け取るかどうかの選択だ。カレンが受け取って欲しい顔をしていたように見えたから、俺は受け取り、そして2人で氷を作り上げた。あいつが産まれたら、自動で本から産まれ、同じように育つ様にってな。そして今に至るって訳。あいつが死んだ時に、記憶を引き継いででも生きていて欲しいってカレンの願いだからな。


 「主が、それを本当に望んだのか?嘘だ。」

 「知りたいのなら、勝手に俺の記憶を覗けば良いだろうかよぉ。お前は出来るんだろう?カレンが封印をかけた俺の記憶をよぉ。そこの鴉も知っているんじゃねぇのかよぉ。」

 「イリアス…」

 「知ッテル。見ナクテモ。ソノ時ニ我モ居タ。」

 「何故黙っていた!」

 「こうなる事が分かっていたからだに決まっているだろうがぁ」

 


 僕は何が起こっているのかが理解出来ていなかった。頭が追い付かない情報が多すぎる。けれど、少しづつ理解してきた。僕はこの思いを今伝えないと後悔するという事だけが。まだ言い争って居る姿を横目に、僕は9代目様の元へ力無く歩いていく。そうだ。今しかない。手を繋ぎ、頭で文字を流し込む。

 「9代目、お休みの所申し訳ありません。」

 (何でも聞いてください。何となく聞こえてきていたので、分かっていますけどね。)

 「好きです。」

 (ん?)

 「好きです。だから、9代目の名前をつけさせてください。僕だけのものになってください。救ってくれたあの時から、僕は9代目に…あなたに恋い焦がれていた。」

 (混乱しています。少し落ち着いてください!)

 「あなたが氷と一体化するのであれば、僕だけのあなたを残しておきたい。」

 (何だか、お母様もこのような状況だったのでしょうと予想が出来ます。何かを残す為に、何かを犠牲にする。それが今回とは同じ状況になりつつある。これも何かの縁でしょう。)

 「それでは!」

 (覚悟はありますか?一生背負っても良いというその覚悟は。もう二度と自由に動けなくなっても良いですか?)

 「何を脅されても僕は決めています。」

 (そうですか。なんだか、笑ってしまいますね。では、頂いても良いですか?)

 「華。僕をいつも照らしてくれた”はな”。」

 (ありがとう)

 繋いでいた手が冷たくなった。見てみると、その手は氷に包まれていた。よく見ると、全身が氷に包まれている。どうして。なんだこの現象は。

 「うわぁぁぁぁぁぁぁ」

 僕は叫ぶ事しか出来なかった。イリアスとキョーヤに部屋の角に追いやられ、標的の男に引っ張られながら華と氷を封印した本に触るよう指示され、いつの間にか華は氷のように砕け散った。氷の華のように。




 「これがもう1人の私の記憶。イリアス、Yes or No」

 「Yes」

 「そう。ならこの氷の中に居る人が彼女の…」

 私の白い本。それを埋める為の手がかり。でも開けてはいけない代物。私は氷。彼女は華。1つであっても1つじゃない。

 あなたの真っ白い本には何が書かれているのでしょう?

 この忘却図書館で私のように見つかると良いですね。

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