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忘却図書館で待っています  作者: 縁煉水鈴
11/13

後悔は後から来るもの

 もう1人の私。全身真っ白で、何もかも私と同じ。キョーヤや他の皆さんも見間違えるほど。どうしてここに。どうして下界に私と同じ姿の偽物が居るの。でも、この感じは間違いはない。目の前にいる彼女は回収対象だ。とにかく何か情報を聞き出さない事には始まらない。私は彼女の前にしゃがみこむ。


 「あぅ。うぇ。あぁ」

 「あなた、お名前は?」

 「あぁぁ、うぅ」

 「お家は何処かな?」


 地面に指で何かを書こうとしているのかな。私は健一さんにメモ帳とペンを借りて、彼女に渡した。ゆっくりと何かを書いているようなので、イリアス以外の皆さんには周囲の警戒にあたってもらいました。彼女と契約を交わした下界人が現れた時のカバーに入ってもらわないといけません。


 【しらないひと ついていかない はなさない でも しらないひと おもえない なぜ】

 「そうだね、私のあなたの事、まったく知らない人だと思えない。もしかしたら、何処かで一緒に居たのかもしれない。嫌じゃなかったら、お名前教えて欲しいな?」


 彼女はしばらく悩んだ後、メモ帳をめくり真っ白なページへまた書き始めた。文章が繋がっていない。単語だけの会話。こちらの話は理解しているようなので、コミュニケーションには問題ないと思う。


 【わたし 氷 かく ひょう。おとうさん いなくなった まってた】

 「えと、氷という字でひょうというお名前なのね?お父さんとはぐれたの?どんな服を着ていたか覚えている?一緒に探すよ?」

 

 ひょうという名前の彼女は、泣きそうな顔をしながら、メモ帳に書き込み始めた。その時、「ひょーう!何処だー!」と、男性の声が聞こえてきた。


 「イリアス!持ち主の気配です!」

 「全員、警戒セヨ!結界ノ用意!」


 イリアスにお願いして、皆さんに警戒体制に入ってもらいます。封印されたであろう本の所有者独特の気配。間違いありません。私は氷お一緒に立ち上がった。


 「今の声は、氷のお父さんかな?」


 氷は嬉しそうに頷いている。これで確定。持ち主と解放されたこの子を確保し、再封印をおこなうしかない。何故私と同じ姿なのかは後で説明をしてもらいましょう!私は立ち上がり、氷と手を繋いで声のする方へ歩き出した。


 「氷!こんなところにい…たの…か…?…隣に居る子はーその、誰かな?」

 「貴方が氷のお父様ですね?」

 「そうだけど?…氷を返してくれるかな?」


 睨み合いが続くなか、上空からイリアスの声が。


 「封印術式開始。9代目ハ完了マデ確保シタリ」

 「はい!」


 私は氷から手を離し走り出す。走りながら腰に巻き付けてある装備のバッグから、人差し指ほどの大きさの小さい棒を取り出し、「限定解除」と言いながら唇を一部噛みきり血をかける。光と共に棒が杖へと変わります。いつも使う杖より性能は落ちますが、すぐ使える代替え品としては十分な代物です。


 「限定領域、固定、対象2名。発動《禍常闇》」


 「これはなんだ?!まさか氷を回収に?!」


 気がつかれた。でも《禍常闇》を砕けるほどの力を下界人は持っていな…い…!!


 「氷は渡さない!」

 「《禍常闇》を破壊?!なぜ下界の力も持たない人が!がはっ!」


 私は結界《禍常闇》を破壊された事により、反応が遅れた。思いっきりお腹を殴られました。おかげで地面に倒れました。ですがこの広場全体の結界が完成する。ここで止まっていられない。私はすぐに立ち上がり、構える。氷には力が無いようですね。結界をひたすら叩くだけ。


 「よそ見している暇はないと思うぜっ!!」


 くっ!!この人、本当に強い。辛うじて攻撃をかわせてはいますが、少しでも油断すると直撃です。


 「氷のそっくりさんという事は、カレンの言っていた子がついに来たってことか!!だが!もう氷はかけがえのない家族だ。誰もに渡せない!」


 お母さんの名前。何で知っているの。ますますこの人に負けるわけにはいきません。


 「離レロ」


 イリアス!駄目!とっさに私を庇おうとするイリアスを庇ってしまい、攻撃をもろに食らってしまった。あぁ、まずい。これは早く終わらせないと。


 「当主様!」


 「っ…封印、限定!解除!新たな本でお眠りくださいっ!」


 氷を本へ封印完了。これで後は皆さんに任せ…ます…私はそのまま気を失った。


 私が気を失っていた間に、下界から帰ってきていたようです。私は骨がバキバキで内蔵もボロボロ。私は完全な人ではない。下界の人と交わって産まれた、下界人よりの人。不死ではない。なので、生死を行き来していたようです。キョーヤから聞きました。健一さんは私を守れなかったからと、お見舞いには来てくれないようです。寂しい。 私のこの怪我は後悔するものではありません。もともとこういう体なのですから。

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