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超短編シリーズ

ワイパーの動きと音と半月と

「雨、止まないね」


 ため息とともに運転席の彼女がポツリと言った。


 しとしとというには強く、土砂降りというには弱い、そんな微妙な勢いの雨粒がガラスを叩く。


 彼女の好きなJ-POPが低めの音量で流れる車内で、ぼくはこわばった体をほぐすように助手席で動きながら「そうだね」と答える。


 普通位置が逆じゃないかって? ぼくは運転が下手で彼女のほうが上手いんだから仕方ない。それに、ぼくは何かと活動的な彼女が好きで、彼女もこんなぼくを好いてくれているんだからそれでいい。


 今頃旅館でゆっくりできていたはずなのだけど、運悪く雨と渋滞に巻き込まれてしまった。何か話でもしようかとは思うのだが、なにぶん話題は道中で尽きてしまっている。


 ワイパーが、ウィーン、ウィーンという独特の作動音とともに雨粒を薙いで半月状の空間を作り出す。ぼくはどういうわけだかこのワイパーの動きと音、それとともに作り出される半月が妙に好きだ。


 雨粒が半月のエリアを再び侵略してくる。ワイパーが負けじと拭い去る。それを何度も何度もリズミカル……というにはちょっとスローリーに繰り返す。


 ぼーっと眺めていると、ふいに車がスムーズに動き出した。渋滞の原因が解消したのだろうか。


「向こうに着いたら、とりあえず温泉入ろうか」


 ぬるくなってしまったペットボトルのお茶を飲みながら、そう提案した。

 作中の「彼」同様ワイパーが好きなので、こんな話を思いつきました。

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