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生産職を極め過ぎたら伝説の武器が俺の嫁になりました  作者: あまうい白一
第一章 記憶と夢と、新たな人生の始まり
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第4話 朝の分析

 俺がギルドハウスで鍛え上げた伝説の武器たちのスキルセットをしていると、マーシャルが話しかけて来た。


「ラグナー。さっき『鍛冶師』がレベルが150になったから色々とスキル取ったんだけどさ、この幻影武器展開ファントム・ブレードってなんなの? 発動しても効果ないし、攻略サイトにも『サブジョブの人は取る必要なし!』としか書かれてないんだけど」 

「それは本当に攻略サイトなのか……」


 このゲームの職業にはメインとサブがある。違いはレベルの上限でサブは一五〇までしか上がらないため、スキルポイントが限られてしまう点にある。

 このせいで、覚えられるスキルの数に限度が出る。だからスキルを取る際には攻略サイトをチェックした上で取る事が多いのだが、

 

「まあ、書いてないならしょうがないな。簡単に説明すると、一時的に自分の装備スロットを増やして、倉庫の中にある武器を自動で取り出すショートカットだから、武器が倉庫に入ってないと意味がないぞ?」

「えっと……何に使うの、それ」

「倉庫に入っている装備を鍛えるときに楽になるスキルだ。アイテムスロットには限りがあるからな。素材と鍛冶ポイントを集めたら、これを使って武器を展開して一気に鍛えるって事が出来るんだよ。あと戦闘で使うと、自動攻撃判定が出て少しだけ楽になる」


 そう言うと、マーシャルは不満げな顔になった。


「……うわあ、育成大好きな人しか使わなさそうだなあ。このゲームで育成好きな人はそんなにいないだろうし、攻略サイトにも書かれないわけだよ……。名前が恰好いいからって取らなきゃ良かったな……」

「お前、倉庫に武器は入れないもんな」


 以前、見せて貰った時は素材とイベントアイテムと回復アイテムしか入っていなかったはずだ。


「武器は殆どキミ任せだからねえ。技を覚えるために色々とイベントアイテムが必要になると、入れる隙間がなくて。……でもしくじったなあ」

「いや、別にスキルポイントを損するぐらいなんだから。いいじゃないか。サブなんだろ?」

「良くないよー。スキルポイントは考えて使わないと振り直しが面倒になるじゃないかー」


 手をぶんぶん振り回しながらマーシャルは文句を言ってくるが、こちらじゃなくて運営に言って欲しいな。謎技や死に技を作りまくってるのは向こうだ。


「それに、謎技でもロールプレイに使えるから便利なんだぞ? 幻影の剣を従えて恰好よくポーズする事も出来るし」

「……ラグナは効率を大事にする癖して、意外とロマン派だよね。この前見せてもらったレーヴァテインにも、『ファイアマスター(一五〇レベル以下の炎系魔法を全使用可能)』ってスキル付けてたし。キミ魔術師のサブジョブ持ってるんだから、炎系どころか全属性使えるよね」

「良いんだよ! 武器レベルも最大まで上げたんだし、炎系の伝説の武器なんだから、そういうスキルを付けてやりたいだろ!」


 しかも武器に付与しているスキルはそれだけじゃない。


「見ろ! 自動でアイテムを使えるように《武器専用アイテムボックス》とかも付けたんだぞ。何せ伝説だからな。消耗しても自動で回復できるようにセッティングしたんだ!」


 そんな感じで強く語ったらマーシャルにため息を吐かれた。


「やれやれ、ボクはそこまで育成に愛は注げないよ。――って、あ。攻略サイトに鍛冶師と剣士を覚えている人だけの合成技のページがある! 実用性はないけど、……うん、カッコイイから覚えよう! やっぱり大事なのは技だよ、技!」

「……俺もお前も同じ穴の狢だと思うんだけどなあ」


 そんな事を何気ない会話をしながら、俺とマーシャルは日々を過ごして行く。



 そんな夢を見ていた。



 朝、ベッドの上で目を覚ますと同時に、俺は息を吐く。


「……また、あの夢か」


 レインとともに生活して、既に一か月が経過した。

 その間、俺は奇妙な夢を見続けていた。


 俺と同じ名前をした奴が、ゲームで楽しそうに遊んでいる夢だ。

 場面は違うがいつも、自分と同じ名前の存在がいる。

 自分の名前を呼ばれているような感じで、胸がざわついてしまう。更にいえば、


「姿も一緒なんだよな」


 レインから借り受けた部屋には姿見があった。そこに映る俺の姿は、やはり夢の中のソレと同じだった。


 ……ラグナ・スミスだよなあ。


 夢の中で見た格好と被っている。


 だからこそ、不思議に思う。


 目覚めてから、そして夢を見続けて一カ月が経つが、分からない事がどんどん増えていく。なんで俺はこんな夢を見ているのか、そしてなんで夢の中の知識と現実が符合してるのか。全く分からないが、


「――っと、もうこんな時間か」


 もう朝日が高く昇っている。

 とりあえず今は、分かる事をやろう。


 そう思いながら、俺は居間へと向かう。


 レインの家の居間は広く、テーブルと暖炉、それにソファが備え付けられている。

 更に俺が借り受けた部屋に繋がるドアのすぐ近くには小さなベッドがあり、

 

「くう……くう……」


 そこではレインが薄いネグリジェを雑に着て、寝転んでいた。

 雑すぎて際どいを通り越しており、胸元のほのかな膨らみなどが完全に見えていた。


 とてもだらしないが、妙な色気を感じてしまう姿だ。

 ただ、一か月も共同生活して、毎日同じ状況を見ていれば慣れるもので、

 

「レイン。朝だぞー」


 いつも通り声をかけて、ゆさゆさと体を揺らす。すると、レインは薄く眼を開けた。


「うああ……ラグナさん、おはようですぅ」

「おう、おはよう。朝ごはんは俺が作るけど、何が良い?」

「んみゅう……あったかいのが、いいです……。この前みたいな、シチューとか……」

「了解ー」


 この一カ月で、俺達はお互いに、かなり馴染んだと思う。

 そのせいで油断した姿を見せる事も多くなってきたが、悪い気はしない。


 ……結構しっかり者に見えたレインが、朝に弱くて、寝ぼけている時は油断しまくりってのも可愛いしな。


 その姿を見れるんだったら、朝食当番なんていくらでも引き受ける。

 そんな事を思いながら、俺は家に備え付けられた棚から肉と野菜を取り出す。


 この棚には魔法が掛けられているらしく、肉も野菜も鮮度が良いまま保存されている。それを有り難く思いながら、スパイスで下味を付けてから、鍋に放り込んでいく。


 肉と野菜が焼ける香りがしてきたら、水を入れてかき混ぜながら煮込んでいく。スパイスの良い匂いが、一気に広がっていく。


 ……うん、料理は作れるんだよな、俺。


 この一ヶ月間。レインにこの世界の事を色々と教えてもらったり、周辺でモンスターを狩る練習に付き合ったりしてもらったが、そのお陰で俺の現状はある程度整理できていた。


 ……人と会話できる程度の意味記憶は残っているんだよな。そして新しく物を覚える事も出来る、と。


 だからこそ、こうしてレインの家のキッチンの使い方を覚えて、料理を作れたりする。


 つまり記憶する能力が壊れているわけではない。 

 この地に来るまでの過去がすっぱり消えているだけだ。


 ……それに過去といえば、気になるのは、あの夢だ。


 俺は毎日毎日、『ラグナ・スミス』の夢を見る。


 そこで使われている魔法はこの世界でも存在している。以前、レインは《ファイアナイフ》という炎を短剣を作り出す魔法を使ったが、夢の中でもそれを見た。

 レベル一五で覚えられる炎系魔法で、見た目は、以前見たそれとほぼ同じだった。 


 ……俺の夢の中の知識は、起きた後でも役に立つ……。


 それをこの一カ月の間で知る事が出来た。とはいえ、気になる点はまだまだ沢山ある。

 一つ一つ調べていこう、と考えながら鍋をかき回していると、


「ラグナしゃん……お腹が、すきましたぁ……」


 ベッドから起きてレインが、テーブルに体を預けてぐったりとしていた。

 それでいて甘えたような声を出してくる。


 ……寝起きは本当に隙だらけだ。


 可愛いから良いんだけどな。

 

「はいはい。もうできたから、朝飯にしよう」

「わあい。ありがとうございます、ラグナさん~」


 腹ペコで愛らしい同居人がお待ちなことだし、食ってからまた考えよう。

長くなったので分割して書き直し中。続きは午後か夜に掲載します。

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●同時連載作品のご紹介
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最強の預言者な男が、世界中にいる英雄の弟子に慕われながら冒険者をやる話です。
 100人の英雄を育てた最強預言者は、冒険者になっても世界中の弟子から慕われてます
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