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生産職を極め過ぎたら伝説の武器が俺の嫁になりました  作者: あまうい白一
第二章 新たな伝説の武器と娘

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30話 鍛え上げられた力

「ウチの娘たちをどうするって? すりつぶす? はは――面白くもねえ事を言ってくれるじゃないか」


 俺は幻影武器を展開しながら、レーヴァテインを引き抜いていた。

 そして一歩一歩、上級天魔へと向かっていく。


 そんな俺の動きに対し、下級天魔が突っ込んで来ようとするが、


「――!」


 幻影武器の自動攻撃により下級天魔を切り払われて落ちる。

 

 中には傷が中途半端で地に落ちて蠢いている下級天魔もいるが、

 

「大人しく、していてくださいね」

「ますたーの邪魔、しない」

 

 左右にいるレインとケイが、そのまま天魔を押しつぶし、消し去っていく。


「レイン、ケイ。君たちはそのまま、後ろで散らばっている下級天魔を潰しておいてくれ。アイツの狙いは君たちも含まれるみたいだから、俺がやっておく」

「了解です、ラグナさん」

「いえす。でも、ますたーが傷ついたら、我慢できずに行くから。気を付けてね」

「はは、責任重大だな。了解だ。無事に済ませるよ」


 そうして俺だけが、上級天魔へ向かっていく。


「うむ? なんだ貴様。貴様もこのベイラが振るう、我が主から賜った武器を味わいに来たのか? いやはや、人気で困るな。まあ、これを持つ限り、私はかの天魔王様を超えるのだから人気で当然か! ははは」


 ベイラと名乗った上級天魔は高らかに笑ってから、刀を引き抜いた。そして、刀身が白く輝いた、その瞬間。


「では、死ぬといいぞ、人間。《シンソク》」


 ベイラの姿がぶれた。

 突風のような勢いで、俺の前まで迫ってくる。

 ああ、これが先ほど自警団を吹き飛ばした技の正体なのか。


 ……なるほど。これは、よく、知っている奴だな。

 

 そんな事を思いながら、俺は右手のレーヴァテインを適当に、力任せに振った。

 何かに当てようとか、そんなことは考えていなかった。けれど、それだけで、


「ぐお……?!」


 ベイラは地面にたたきつけられた。そしてバウンドして、俺の右方に吹き飛んで、建物に激突した。


 ただ、流石は上級天魔と言うべきか。すぐに起き上がってこちらを見て来た。


「き、貴様……な、何故、私の攻撃が見える!」

「うん? いや、攻撃は見えちゃいないさ。それはコンマ五秒でこちらに突っ込んできて高速斬撃を与える《シンソク》って奥義でな。反応できるプレイヤーはそんなにいないんだが……一直線にしか動けないから武器をぶんぶん振って構えておけば当たってくれるんだよな」

「な、何を言ってる。何故、貴様は、この武器の技名を知っている……!」


 先ほどまで余裕だったベイラの態度が崩れた。奥義の名前を見抜いたことがよっぽどショックだったようだ。


 ただ、ショック度合いでは俺の方が強かったりする。何せ、遠目から、その刀を見た時は、とんでもなく、驚いたのだから。


「ああ、俺はよく知っているさ。何せ、その武器を鍛えたのは……俺だからな……!」

「な……あ……?」


 ベイラは俺の言葉に目を白黒させていた。

 気持ちは分からないでもない。俺もさっき、その刀を見たときには信じられなった。

 

「その武器はさ、俺がマーシャルに渡したものなんだよ。アイツに合わせて調整して、奥義も設定した武器なんだよ」


 だから、その刀の色も性能も感触も、俺は知っている。

 どんな思いで作ったのかも知っている。

 心を込めて作り上げて、鍛え上げたことを知っている。


「――だからよお、ベイラ。その武器はお前が使っていいものじゃないんだよ。なんでその武器をお前が持っているか話を聞かせてもらって、いいか?」


 記憶の中にある、誰かに使ってほしくて大切に鍛え上げたその武器が、こんな下卑た野郎に使われている。

 活躍してほしいと願ってはいたが、こんなことに使われてしまっている。


 その事実が、とても気に食わなかった。


 俺はベイラに近づいていく。

 一歩一歩近づいていくたびに、ベイラの表情が、変わっていく。

 余裕だったものから恐怖を感じさせる顔に。


「な、何なんだ貴様! この武器は、私が主より賜った、神の武器だぞ! それを貴様のようなゴミ人間が作ったなどと、妄言を吐くな!!」


 そしてベイラは立ちあがり、刀を一旦鞘に納めて構えた。


「妄言か。別にそれで構わないけどよ。……その我が主ってのが俺の武器を好き勝手に渡しているのか。なるほどな。情報、ありがとうよ」


 狙うべき相手は決まった。そう思っていると、そこから、


「な、なめるなよ! 殺してやるぞ、人間! も、もう一度シンソクで吹き飛ばしてくれる!」


 奥義スキルを使おうとしてきた。

 

「おいベイラ? もう、俺に通じないのは分かってるんだろ? だったら、その技を使うんじゃない」


 目の前で破って見せたのだから、もうやる意味がない。

 無意味だと、俺は静止した。だが、ベイラにその言葉は通じないようで、

 

「たかだか一度、神の御業を防いだくらいで、図に乗るなよ人間があああああ!」


 逆上したように、剣を振り上げて、向かってきた。

 

「剣の速度に我の速度を追加してくれる! 《シンソク》!」


 白い輝きを放つ剣を持ったベイラは、突進と共にシンソクを放ってきた。

 しかし、不可視の高速の斬撃は一定の速度で、真っすぐ放たれる。よって、

 

「っ、バカ野郎……!」


 剣を体の前に構えておけば、防御が可能だった。

 ガキン、という音が響き、俺が育てていた武器と武器が激突する。つばぜり合いだ。


「はは、今度は当たったぞ!」


 俺の前でベイラがにやりと笑い、握った剣にさらなる力を込めて来る。

 だが、両方とも俺が丹精込めて育てたが故に、頑丈で、壊れず、拮抗する。その光景は嬉しい物でもあるが、しかし、俺が大事に育てていた武器と武器が、不本意な使われ方で互いを傷つけている。

 その事実は我慢ならなかった。だから、 

 

「おい、そろそろ止めろ、ベイラ。その武器から手を離せ。そうすれば、冷静に話をしてやれる」

 そう言ったら、ベイラは口元を吊り上げた。「


「ふはは、我が筋力を拮抗するとは中々やるとは思ったが……もう根を上げたか。だがな、この程度では済まさんぞ! 貴様が付けた我が奥義の泥は、貴様の血によってあらない流さねばならん!」


 ベイラの言葉と同時、刀身が白く輝いた。

 奥義を、使うつもりだ。


「待て! もう使うんじゃない!」

「ふはは、今さら命乞いをした所で遅い! 神の御業の力で死ぬがいい! ――《シンソク》!」


 俺の制止を振り切って、ベイラは奥義スキルを使った。

 そして、高速の斬撃として再び俺に向かって放たれようとした。その瞬間、


 ――カシャン


 という、ガラスの割れるような音が響き、ベイラが持っていた刀は砕け散った。


「ぇ……ぁ……?!」

「……その《シンソク》って奴はな? 早くて使い勝手は良いんだが……一直線にしか進めないデメリットの他にもう一つ、欠点があってな。一日の使用回数は三度まで。その使用期限を超えると、武器がぶっ壊れるって調整が運営によって入れられたんだよ」


 奥義の調整内容はよく知っている。

 何せ、自分が業務として、調整したのだから。

 

 知らない筈がない。

 

 はあ、と俺はもう一度吐息する。

 俺が鍛え上げて来た武器をみすみす目の前で壊されてしまった。


 その事に残念と後悔と、そして怒りが一斉に湧いてくる。

 

「二度だ。俺は二度も止めたぞ。なのに、俺の武器を無様にぶっ壊しやがって……!!」


 怒りが止まらない。

 俺は再び、ベイラに近づいていく。

 すると今度こそ、ベイラは怯えの表情を露わにした。


「ま、待て。私に武器を向けるのか! 神の武器を携わりし私に――! それは我が主に牙をむけるのと同罪――」

「今更、そんなこと、知るかよ」


 元より、目の前の天魔は、俺が大切に育てた武器を破壊しようとした。その上、鍛えて来た武器を実際に破壊した。

 それだけで、倒す理由は十分だ。


「き、貴様ごとき人間にィィィィィィィィィ!!」


 武器を持たず殴りかかってきたベイラに対し、俺はレーヴァテインを振りかぶった。

 そして使うのは、一日一回しか使えないというデメリットを持った、この剣の奥義。


「お前が壊した武器のように、塵も残さず消滅しろ。レーヴァテイン奥義。――《イグニシア・バーストエンド》」


 俺の剣の振りと同時に、レーヴァテインの赤い刀身が青い焔を噴出する。

 そして青い焔に包まれた伝説の武器は、


「――!!」


 叫び、襲い掛かる天魔の体を一瞬のうちに焼き焦がした。

 後に残るのは、天魔であった塵だけだった。


いつも応援ありがとうございます。

カクヨムの方の別ルートとは、内容・設定にかなりの違いがありますが、近いうちに両方とも、両方の良いトコどりしたものに改造できればなあ、と思っていたりします。

その時は、ちょっと設定面で足しひきした部分など一覧で出せればいいなと思います。その際は、どうぞよろしくお願いいたします。

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