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生産職を極め過ぎたら伝説の武器が俺の嫁になりました  作者: あまうい白一
第一章 記憶と夢と、新たな人生の始まり
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第2話 初見な筈の魔法

 レインに連れられて俺は川沿いを歩いていた。

 目の前には背の低い草木が生えた雑木林が広がっており、辺りに人気は全くない。


「凄く静かな場所にレインさんは住んでいるんだな……」

「ふふ、レインと呼び捨てで良いですよ。それにここは本当に田舎ですからね。ここに来る人はいなくて当然です――っと、ストップです、ラグナさん!」


 ストップの掛け声と共に俺は足を止めた。瞬間、


「――ギッ!」


 俺の目の前の地面が盛り上がり、俺の腰ほどの身長の小鬼が飛びでてきた。


「うおわ、なんだこいつ!?」


 思わず後ずさりすると同時。俺の横にいたレインが手を突き出した。そして、


「――《ファイアナイフ》」


 彼女の手から飛び出た炎の短剣が小鬼の頭に突き刺さった。

 突き刺さった炎は一気に小鬼の全身に回り、数秒で体を焼き尽くした。


「すげえな……。モンスターを一瞬で……魔法ってやつか」

「はい。ファイアナイフと言って炎系の魔法です。というか、ひょっとして記憶にありますか? あとモンスターについてもなにか覚えている事がありますか?」


 聞かれて俺は考える。どうして俺は、その二つを知っていたのか。


「なんとなく……じゃないな。その魔法もモンスターも初見の筈なのに……何か頭の奥底で知っている気がする」


 先ほどの炎は魔法だと、先ほどの小鬼はモンスターだと。両方とも名称は分からなくても、知識として頭の中にあった感覚がする。


「なるほど……では記憶を取り戻す手掛かりはこの辺りにあるのかもしれませんね。一応、呼び水になるかもしれませんので説明しておきますと、この小鬼はアースゴブリンといって、炎に弱いモンスターです。ポイズンビートルなどの毒虫系の体液を塗り込んだ武器を持っているので、傷つけられると出血が止まらなくなります。また、巣穴はこういう風に盛り上がっていますが、踏ん付けてしまうと足を持っていかれるのでそれも気を付けてください」


 そう言ってレインは足元を指さした。

 

「なるほど。よく覚えておくよ。……割とモンスターは凶悪なんだな」

「まあ、この辺りのモンスターは特殊ですからね。覚えてしまえばある程度は戦えますよ。それに普段は私が守らせて頂くので……って、あれ?」


 喋る中で、レインはこちらの体をじっと見て来た。


「う、うん? 何か俺の体に問題でもあったか?」

「いえ、その……この魔法剣、ラグナさんのですよね」


 そう言って指を指した先、俺の腰元には白い光で出来た、長さ一メートルほどの剣が浮かんでいた。

 

「なんだこれ」

「え、ラグナさんが発動させた魔法の剣じゃないんですか?」

「さっきも言ったけど魔法についての記憶はあやふやなんだ。ただ、俺は何もしてないぞ」


 ただ、驚いて後ずさっただけだ。

 こんな剣を出した覚えはない。


「でも、この魔法の剣。ラグナさんの周りを漂ってますよ」

「みたいだな」


 光の剣は俺の体を追尾するようにふよふよと浮いていた。

 一体なんなんだろう。そう思っていると、


 ――バチッ。


 小鬼を燃やしていた炎から、火花が散った。

 その小さな炎が足元まで来ようとする。その瞬間、


「――」


 俺と火花の間に光の剣が割って入った。

 そして、足に振りかかりそうだった火花をその身で防いだ。


「おお? どうなってるんだ……!?」

「え、今のガードはラグナさんの指示じゃないんです?」

「いや、だから俺は何もしてないってば」

「ということは、自動でこの剣が守っているということですか……」


 結果だけを見ればそうなるんだろうな。

 だからこそどうなっているか分からなくて首を傾げるしかないんだが、と思いながら光の剣をじっと見ていると


「あ、消えた」


 剣はその身を霧散させた。

 まるで煙のような消え方だった。


「これも、ラグナさんの指示ではないんですよね?」

「ああ、俺は何も言っていないから、自動だな」

「――となると、脅威が無くなると消えるってことなんでしょうかね。でも、ラグナさんの職業って何なんでしょう。魔法剣に自動防御能力なんて付いていない筈なんですが……」

「そう言われても、その辺の記憶もないんだよな」


 説明も何もできない。

 ただ、俺の身は光の剣で自動ガードされるようになっているという事実が分かっただけだ。


「……なんにせよ、ひとまずはウチへ急ぎましょう。この周辺にはモンスターが沢山いるので、明るい内に行かないと危ないですし。なによりラグナさんの体が心配です」

「お、おう、心配してくれてありがとうよ、レイン」

「いえ、お気になさらないでください。さ、行きましょう」


 レインは俺の手をぎゅっと握って、微笑みと共に進んでいく。

 俺の手を引く彼女の手はとても暖くて、安心感すら抱かせてくれるほどだった。


続きは午後に更新します!

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