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生産職を極め過ぎたら伝説の武器が俺の嫁になりました  作者: あまうい白一
第二章 新たな伝説の武器と娘

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第22話 ギルドにて

 ゲームの場合、冒険者ギルドは街の中央にあったが、それは現実でも同じらしい。

 酒場や宿屋を併設しているらしい、複数の看板を掲げた、二階建ての大きな建物がそこにはあった。

 

「外見は、ゲームの中で見たままだな」

 

 中に入ってもそれは同じだった。

 いくつものテーブルの向こうに受付のカウンターがあり、ギルドの職員らしき人と客が喋っている。

 

「さて、とりあえずギルドに来てみたは良いけど、こいつらは、どうすればいいんだ?」


 俺は、未だ気絶しっぱなしの下手人たちを見る。

 幻影武器に乗せて運搬しているので移動は楽だが、いつまでもこのままにしておくわけにはいかない。


「レイン、犯罪者って受付に引き渡して良いのかね?」

「はい。これだけ縛っていれば、普通に受付の方に渡してしまって大丈夫だと思います」


 だったら早い所片づけよう、と俺はカウンターを見る。長い行列が出来ている個所が一か所ある。

 その隣、虎っぽい獣人の男性の前があいていたので、そこに向かうと、


「セインベルグの冒険者ギルドにようこそ。本日は私、商業ギルド担当のボーマンがご案内にあずかります。何の御用でしょうか?」

 

 獣人の男はかしこまった口調で丁寧にあいさつをしてきた。

 対応は割としっかりしているようだ。

  

「犯罪者をとっ捕まえたんだけど、どうすればいいか聞こうと思ってさ」


 そういうと、受付の獣人は眉をひそめた。


「ええと……犯罪者ですか?」

「ああ、詐欺商品を売ろうとしてきたんだ」

「なるほど。では、こちらの書類にお名前や所属ギルドの方をご記入願えますか? それとギルド証の方もご提示願えれば、と」


 獣人が一枚の書類を取り出しながら言ってきた。


「ギルド証……って、俺はどこかのギルドに入っているわけじゃないんだが」

「え……となると、未登録の冒険者の方、ということでしょうか?」


 冒険者ではなくて鍛冶師なのだが、訂正してもあまり意味がなさそうなので頷いておくと、獣人の受け付けは明らかに嫌そうな顔をした。


「あれ、ギルドの会員じゃないと不味いのか?」

「はい。信用面の方で少し問題になりまして。もしもどこかのギルドに所属されているのであれば、そこの信用を担保に出来ますが。そうでないのならば、捕まえた方が、本当に犯罪者かどうか確かめなければなりませんので……」


 ああ、そうか。ゲームの方だと、受付に行くだけでよかったが、ここは現実だ。いきなり見知らぬ人が犯罪者を捕まえてきましたー、と言っても難しいか。


「となると、その場合はどうすればいい?」

「ええと、未登録の方が犯罪者を捕まえた場合はこちらの書類に、個人データを記入してもらうことになります」


 そう言って、受付の獣人が取り出したのは、分厚い紙の束だ。

 数十枚はあるだろうか。


「これは……面倒だな」

「規則ですので。書き終わり次第、隣の新規・仮登録カウンターに並んで頂くことになります」


 獣人は横の行列を見ながら、とても事務的に、無愛想に告げてくる。


 彼の態度はよくないが、でも対応的には間違っているわけじゃないし。

 時間はかかるけど、書類に書き込んで行列に並ぶしかないのか、などと思っていると、


「あれ、ラグナ様とレインさん?」


 俺達の背後から声が聞こえた。振り返るとそこにはブリジッドがいた。


「おお、ブリジッドか。久しぶり」

「はい、お久しぶりです。私の馬車が街に入ったとの報告は聞きましたが、ここにいらっしゃったのですね。――しかし、私の統括する冒険者ギルドになにかご用件でも? というか、その縛られている方々は一体……」

「ああ、詐欺師っぽい奴らが襲って来たんで、捕まえたんだよ。ただ、冒険者ギルドの受付の人に対応をお願いしてたんだけど、ギルド員じゃないと信用が足りなくて、対応が難しいらしい」


 そう言うとブリジッドの目の色が変わった。

 落ち着いていたものから、焦りの色に。


「す、すみません! 少し、そこで話をさせてください」


 そう言って、俺達の前に出て獣人と向かい合った。

 ただ、先ほどまで俺に無愛想に対応していた獣人は、ブリジッドの顔を見て明らかに動揺を浮かべていた。


「え……ぶぶ、ブリジット会長!? ど、どうしてここに!? 商業ギルドにいらっしゃったはずでは……!」

「少し所用があったので訪れたのですよ。……それよりも、そこにいる彼らに対して、貴方はどういう対応をしたのですか……!?」

「え、ええと、規則通り、仮ギルド証の発行書類をお渡し、しました」


 その言葉にブリジッドは頷きを返した。


「なるほど。規則通り、ですか。ふむ……それはいい事です。私のギルド職員の教育方針は間違ってはいなかった。貴方は何も間違っていない。ですが……この場合は少々問題がありましたね」

「は……?」

「ちょっと、耳を貸しなさい」


 そう言ってブリジッドは獣人に詰め寄りながら、何度か言葉を交わした。

 そして、数秒後、獣人の顔が明らかに青ざめた。


 汗をだらだらとこぼしつつ、俺の方を見ていた。


「ま、まさか、ブリジッド様の恩人だとは……!」


 何を言ったんだろうか、と思っていると、ブリジッドがこちらに振り向いてきた。

 彼女も額に汗をかいている。


「失礼いたしました、ラグナ様。そしてお二方。どうぞ、こちらへ。別室の方で対応をさせて頂きます」

「え? でも、書類に色々と書いて並ばなくていいのか? 規則なんだろ」

「良いんです良いんです。それは信用度を上げるためのものなので全く問題ありません。貴方達は、私の大切な恩人ですから、身元も正体も、善性も私が保証できますから。……そうですね?」


 ブリジッドはにこにことしたまま、獣人に言葉を飛ばした。

 すると、獣人は即座に背筋を伸ばして敬礼した。

  

 そして俺の事をキラキラした目で見つめていて


「勿論!、ブリジッド様が言うのであれば、全く問題ありません! こちらの方でも、すぐに対応させていただきます! ――貴方に会えて光栄です、ラグナ殿」

 

 思い切り対応が変わっていた。


「ああ、うん。それは、どうも」

「まずはそちらの犯罪者の運搬から!」


 そう言って、男性職員は縛り上げた犯罪者を担ぎあげて、カウンターの奥へと走っていった。


 随分な変わりようだが、そういえば、ブリジッドはギルドの統括だとか何とか言われていたっけ。なんらかを、口添えをしてくれたんだろう。


「……なんか急かしちゃったみたいで、悪いな」

「いいんです! ラグナ様達には特別な対応をして当然なのですから!」

「ああ、まあ、うん。早く済ませたかった身としては有り難いよ」

「いえいえ、ラグナ様はレイン様を、この街を助けてくれたお方ですから。これくらいはさせてください」


 そこまで言って、しかしブリジッドは申し訳なさそうに会釈した。


「ただ、詐欺師の捕獲をしたということで。その状況を調書に記したいので、二階のほうでお茶を飲んで行ってもらうことは出来ますか?」

「ああ、それが別室対応ってやつか。……俺は別にいいんだけど。レインとケイもついてくるか?」

「はい。私はもう、お買い物は十分楽しんだので大丈夫です」

「ケイも、必要なものはますたーから受け取ったから。あとはついていく」

「おう、了解。ブリジッド、全員分の茶を頼むわ」


 そう言うと、ブリジッドは嬉しそうに、そして安堵したようなほほ笑みを返してきた。


「かしこまりました。ありがとうございます。――では皆様、こちらへどうぞ」


 そうして、行列ができているカウンターの奥を抜けて、俺たちは二階へと上がっていった。


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