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生産職を極め過ぎたら伝説の武器が俺の嫁になりました  作者: あまうい白一
第二章 新たな伝説の武器と娘

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第21話 悪意には鉄槌を 善意には報いを

 俺が詐欺商人を問い詰めた。その瞬間、


「ちっ……ざけんなよ」


 商人の雰囲気と、声色、そして表情が一変した。


「クソが。あんな店を使うから、羽振りのいいカモだと思ったのによ……。これが分かるって事は同業者かよ」

「勝手に同業にするなよ。鍛冶師だから、見ればわかるだけだ」


 言うと、詐欺商人が声を荒げ始めた。


「馬鹿言え! 一介の鍛冶師ごときが、この上等なコピー品を見抜けるわけがないだろう!」


 事実を言っただけなのに、そんな言葉を吐き捨てられてしまった。鍛冶師だったら皆分かりそうなものだが、この街では、そうじゃないのかもしれないな。そんな事を思っている間に、


「商売の邪魔をしやがって、クソが……クソが……! もう少しこの街を荒らせそうだったのに、台無しじゃねえか!」


 商人はブレスレットを地面に投げ捨て、苛立ちをぶつけるように踏みつける。

 そして、こちらを睨みつけながら、腰につけていたナイフを抜いた。更には、


「おい! お前ら、出てこい。処理をするぞ!」


 俺たちの背後に武装した男たちが現れた。

 どうにも挟みこまれたようだ。


 彼らは俺たちを見て、それから、露店の店主に不機嫌そうな声を飛ばした。


「おい、折角に楽にカモれそうな女連れを見つけたんだから、こんぐらいさっとだませよ。ここでヤっちまったら、また場所替えじゃねえか」

「うるせえ! 分かってんだよ! ――ったく、とりあえず殺して金だけ奪わねえとやってられねえぞ……!」


 露店の店主と物騒な会話をしている男たちをよく見れば、先ほど、服飾店で見た先客たちだった。

 

「あー……なるほど。あの店に入って、羽振りのよさそうな客をチェックして、ここで偽ブランド品を売りつけてハメるってやり口か。よくやるなあ」 

「よく知ってるな。やっぱり商売敵じゃねえか。……邪魔な奴は口封じだ……! やるぞ、テメエら」

「あーあー。分かってるよ。……女を殺すのはもったいねえけどなあ……!」


 そうして、露店の店主は、武装した男たちと共に襲い掛かってきた。


 まず、超至近にいる俺の体に向けて、ナイフを振るってきた。中々の早さだ。

 

 偽物がばれたら即座に攻撃して口封じとは、全く仕事も早い。だが、


「こんな刃物じゃ、俺はやれないぞ?」


 店主が振るうナイフは、俺の腹に直撃した。だがその刃は俺の体を切ることなく止まった。

 

「なっ……!? き、切れねえ……だと……?!」


 驚きに動きを止めた店主の腕を俺は片手でつかむ。


「生憎と、俺はレベル百以下の刃物では傷がつかないようになっているんだ。『鍛冶師の加護』って、スキルがあってね」


 家で料理をしているとき、指に包丁を当ててしまったことがあったが、その時もこのスキルのお蔭で無傷だった。 今回もそれと同じだ。さらに言えば、


「このナイフは……うん、目測通りレベル十三で、毒の塗布もなしと。それじゃ、傷つかねえな」


 俺の鍛冶スキルは、目測でもある程度、装備の鑑定が出来る。武器本体に被るようにレベルの数字や、特殊な効果の有無がちらちらと目に映っていた。


 念のため、その精度を確認するために、今回は幻影武器の自動防御スキルを解除して、敢えて攻撃を受け止めてみたが、その目測もあっていた。


 ……実験は成功だな。

 

 戦闘方面のスキルも、色々と使い方が増えてきているのが分かって良かった。そう思いつつ、


「さて、武器を向けてきたんだ。お返しはするぞ」

「あづッ! う、腕が……潰れ……!!」


 最近気付いたのだが、俺の能力は夢の中のそれと等しいようで。

 筋力もレベル二五〇相当のものがある。

 だから片手だけで、人の骨を砕ける程度の力は出せるようだった。


「な、なんだこの力……! て、テメエ、杖を持ってるってことは、魔術師じゃねえのか!」

「だから鍛冶師だって言ってるだろう」


 詐欺商人はこちらに逆らおうと体を動かそうとしてくるので、肩を捻じりあげた。


「ぐあああ、う、腕が。こ、こんなヒョロい男に、レベル十五の俺が負けるはずねえ……!」

「負けとか勝ちとか、どうでもいいんだけどさ。まあ、なんだ? 俺に偽物を売りつけようとしたのはともかく、俺の大切な娘に粗悪品が似合うとか言われたのは気に食わないんでな。その上、武器まで向けてきたんだから、お縄になってもらうのは確定として……今は寝てろ」


 そして俺は、力のままに店主の上半身を顔面から地面にたたきつけた。


「……!!」


 それだけで、店主は小さな呻きを上げながら、気を失った。

 だらりと力の抜けた状態で、地面に転がるようにして倒れた。


「よし、一人終了。次は後ろの奴ら――」


 を片付けよう、と振り向いた所、 


「ますたー……。ますたーに、刃を向けたこいつら、消してもいい?」

「ラグナさん。許可さえいただければ、即座に灰にしますが、どうします」


 そこでは既に、レインとケイが各々の方法で武装した男たちを倒していた。


 ケイは電撃の魔法で痺れさせて倒し、レインは炎のナイフで敵の足を縫いとめたらしい。


「こ、こんな魔法……人間が使える筈が……ねえ……」

「た、助けて。助けてくれえぇ……」


 倒れた男たちはどちらも、電撃と炎に焦がされながら倒れて、苦しそうにもがいている。俺が目を向けただけで、


「ヒィッ、も、もう、止めてくれえ……!!」

 

 もはや立ちあがる力も、戦意も持っていないようだ。

 割と酷い有様だが、


「……」


 それ以上にレインとケイの、二人の目がやばい。

 無言だが明らかにブチキレている。

 

「お前ら、落ち着けー。眼が怖くなってるぞー」


 殺気の立ち方も物凄かったので宥めてみたのだが、武器二人の目つきは、怒りに満ちたままだった。


「落ち着いていられませんよ。この下手人どもは、ラグナさんに武器を向けたのですから」

「いえす。その上、そんな粗末な武器をますたーに当てた。程度は低いと分かっていても、ケイたち武器にとっては、とても許せないこと……!」


 ああ、なるほど。怒りの原因は攻撃を受け止めてしまったことにあるらしい。

 先に実験だからと言っておくべきだったな。


 ともあれまあ、理由は分かった。ならば俺がするのは宥める事では無く、


「うん。でも、俺は大丈夫だからその辺で良いぞ。それと、俺を思ってくれてありがとうな、二人とも」


 俺の為に善意で怒ってくれているのならば、礼を言って褒めるべきだ。

 そう思った俺は、二人の傍まで行って、頭を撫ででやる。

 

 するとケイはくすぐったそうにして、レインは頬を染めた後に、二人して男たちから離れて俺の元に来た。


「いえす。ますたーがそう言うなら。こんなのを相手にしないで、ますたーとのスキンシップに集中する」

「そうですね。この人たちを始末するよりも、ラグナさんにこうして撫でられている方が心地よいですし」

「はは、二人とも、自分の欲望に素直で結構だ。……ともあれ、こいつらはお縄コースにしたいんだが、こういう時は冒険者ギルドに行けばいいのか?」


 ゲームの時は、賞金首や犯罪者系の敵を捕まえて冒険者ギルドに行くと、サブクエスト達成となったのだが、


 ……現実でもそうなんだろうか。


 そう思い、なでなでを満喫して頬を染めているレインに聞いたら、彼女はこくりと頷いた。


「はい。治安維持活動も兼ねていますので。そこでいいかと」

「おお、そこも一緒なのか。じゃあ街を知るついでに、行くか」

「いえす。ますたー。了解ー」


 そうして俺たちは下手人を、その辺に転がっていたロープでぐるぐる巻きにしてから、冒険者ギルドに向かうことにした。


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●同時連載作品のご紹介
こちらの連載も応援して頂けると助かります!
最強の預言者な男が、世界中にいる英雄の弟子に慕われながら冒険者をやる話です。
 100人の英雄を育てた最強預言者は、冒険者になっても世界中の弟子から慕われてます
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