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第13話 夢とは異なる成長と強さ

「レインさんの安否を確認できただけではなく、更にはラグナ様と言う凄まじい方にもお会いできて、今日は幸いでした。今回は時間も時間ですので、これにて街の方に戻りますが、またよろしくお願いします」


 修繕された俺達の家で食事をした後、ブリジッドはそう言った。

 そして手際よく帰り支度を始める中、彼女は乗ってきた馬車から沢山の荷材を取り出し、


「これらは、自由にお使いください。貴方がたの功績を考えれば全然足りませんが、ひとまずのお礼、ということで。……また馬車も一台置いていきますので、お二方とも、街にお越しになるときにはそれを使ってくだされば、と」


 と、俺達の家の前に物品を置くだけ置いて、去って行った。

 幌馬車の中から、幌より大きい馬車がズルリと出てくるという、物理的におかしい場面にはさすがに目を疑ったけれども。ともあれ、


「なんだか、忙しない訪問者だったけれど、馬車が手に入ったな」

「はい。便利に使えそうで有り難いですね」


 俺はレインと共に、家の前に置かれた馬車に目をやった。

 少し古いが木製の大きな荷車と、それを引く牝馬がワンセットだ。


 ブリジットの話だと、この馬車でならば街まで一日も掛らない速度で移動できるという。

 これならちょっとした遠出も楽にできるようになるので、行動範囲も広がる。


 ……これからどう動くにせよ、足が増えるのは楽でいい。


 そう思って俺が馬と荷車を撫でた。その瞬間、


【普通の古馬車 (ノーマル) レベル二】


 俺の目の前に、透明なウインドウが現れた。


「ああ……馬車も鍛冶スキルの判定内なんだな、これ」

「ええ!? 馬車もですか?」


 俺の言葉に、隣のレインは口をぽかんと開ける。


「ら、ラグナさんの鍛冶判定、本当に広いですね」

「みたいだなあ」


 現実で鍛冶スキルを使いだして数カ月経っているが、この力の有効判定がどこまでか未だ測りきれていなかったりする。

 

 夢の中では、鍛冶スキルは武器防具に対して効果を発揮していた。

 ただ、アイテムに対して効果を発揮するスキルもあった。だから、


 ……現実では、もしかしたら、鍛冶できるものは多いのかもしれないから、手当たり次第に鍛えるのが一番いいんだろうな。


 そう思って、今の俺は目に付いたものには出来るだけ触れて、スキルが発動するかチェックすることにしていた。

 とはいえ、俺の鍛冶ポイントが持つ限りは、という条件付きだが。


「というか、最近鍛冶ポイントを気にしたことがなかったけど、今は何ポイントくらい残ってるんだ。《鍛冶ステータス確認》」


 鍛冶スキルを使って今日まで、色々なモノを直してきたけれども、こうしてポイントを確認するのは久しぶりだ。


 ……数ヶ月前に見た時は2975/3000だったんだよな。


 一回の消費が一ケタ、多くても二ケタ単位で、所持していたのが二千だから、大して減ってないだろうけれども。


 この減り具合で、今までどれくらいのモノを鍛錬してきたのかが分かるだろう。そう思って、俺は眼の前に出現させた透明なカードを見た。すると、

 

【ラグナ・スミス。使用可能鍛冶ポイント6200/3000】


「……んん?」


 何だか数字がおかしい事に気付いた。


 一回目をこすって見なおしてみたが、やはりその表記は変わらない。


「あれ、これバグった? ……なんか鍛冶ポイントの使える量が増えているんだけど……」


 俺の言葉を聞いてレインは首を傾げた。


「え……っと? どういうことでしょうか?」

「ああ、元々三千だった鍛冶ポイントが、六千を超えてるんだよな」


 そう言った瞬間、レインが口をあんぐりと開けた。


「に、三千が六千って……ば、倍以上じゃないですか! ど、どうやったんですか? 鍛冶ポイントの限界値を上げる方法なんて、聞いたことがないのですが!」

「いや、俺も知らないよ」


 夢の中のシステムでは、鍛冶ポイントはモンスターやボスを討伐することで取得する事が出来た。


 ……大体が、己のレベルの百分の一くらいのポイントをくれたな。


 レベル三十の敵ならば三回倒せばおよそ一溜まるので、作業プレイに徹すればすぐに千や二千はためる事が出来た。


 ただしそれが限界値までの話だ。

 限界値を超えると、《限界突破》などのスキルを装備しなければ、それ以上回復できなくなる。


 レベル255の鍛冶師で三〇〇〇。

 それが限度なのに、明らかに数字がオーバーしている。

 最後に確認したのは数週間前だが、その時には、こんな数字では無かった筈なのに。


「……レイン。鍛冶ポイントは、モンスターを倒すことで得られるっていう知識は間違っていないよな?」

「も、勿論です。でも、三千ポイントを一気に得られるモンスターなんていないですよ! 普通はモンスターを倒して少しずつ少しずつ回復させていくしかない筈なんですが……」

「あー……でも、そこに関しては、思い当たる節はあるんだ」

「あるんですか?!」


 レインは驚いているけれども、大量に回復する手段に関しては、夢の中でも経験していた。それは、


「……天魔を倒せば、それだけ手に入るんだよ」

「な、なるほど……」


 天魔を倒せば鍛冶ポイントが多く手に入る。その数、三〇〇〇。

 一回の戦闘で満タンにしてくれるから、夢の中の俺は何度も何度も狩りにいった覚えがある。


 雑魚狩りをして全回復するよりもよっぽど楽だった、と夢の中では言っていた。


 それは分かる。だが、この四千の意味が分からない。

 ただ、一つ仮定を立てるならば、

 

 ……まさか現実では、鍛冶ポイントの取得限度がないのか……?


 右側の上限値は飾りで、倒せば倒した分だけ、鍛冶ポイントが得られるのかもしれない。

 そう考えれば説明もつく。天魔を倒して、更に家を直すための素材集めの時にモンスターを倒しまくった。


 その時のポイントも合わさって、俺に補充されているのだとしたら、この数字でも間違いではない。


「……一応、スキルそのものに、何かおかしいところはないか、一度鍛錬してみるか」


 そう言って、俺は馬車に触れる。ノーマルでレベル5のこの馬車でなら、試して数値の変動を見るのも楽だ。とりあえずレベル十上げる事をイメージして、


「《鍛錬》」


 スキルを使った。

 すると、馬車の形が一気に変わった。

 少し頼りにならなさそうな古くて少しボロボロな荷車が、一気にピカピカで、頑丈そうな見た目に早変わりした。そして、

 

【強靭強固な馬車 (ノーマル) レベル十二】


 狙い通り十上げることに成功した。

 その結果、明らかに馬車の見た目が立派になった。


 レベルを上げるだけで、見た目も変わるらしい。レインも驚いている。


「わ、わあ、本当に、馬車まで鍛えられるんですね……。ラグナさんの鍛冶スキルは、ちょっと鍛冶の領域を超越している気がします」

「まあ、俺としてもその領域が分からない事だらけではあるんだが……」


 とりあえず今回の実験で分かる事があった、と俺は自分の鍛冶ステータスを見て、思った。


【ラグナ・スミス。使用可能鍛冶ポイント6190/3000】


 規定通り十ポイントが、左側の数字から減少している。

 それ以外、変わりがない。

 

 つまり、溜めたポイントの一部を、普通に使えたという事だ。

 

 ……すげえ……けど、これは、いいのか?


 夢の中で鍛冶ポイントに上限が決められていた理由は、純粋に《鍛錬》というスキルが、強かったからだ。


 ……夢の中の俺は、ボス戦や対人戦中に防具を鍛えて新しくスキルと耐性を付けて、相手の攻撃を無効化、とかやっていた。


 上限を決めないと戦闘中でもお構いなしにレベルをあげて、都合の良い武器、防具を作れてしまう。

 だから、戦闘中に何度も何度も《鍛錬》を使えないように、上限が決められていた。


 だが、この現実では上限なんてものは存在しない。

 取得すればするほど使えてしまえるのだから。

 ましてや鍛えられるものは、武器や防具だけではなく、家などもその範囲内だ。


 ……これは、メリットのある相違点だな。


 夢の中と現実は必ずしも合致しない。

 今まではそれに少し戸惑う事もあったけれども、好都合な事もあるらしい。

 俺は自らの鍛冶ポイントを見ながら、そう思うのだった。


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