序 決闘の決着
タグにも入れていますが、この悪役令嬢は転生者ではないです(令嬢の中身が一般人という設定が嫌いなので)。
あと、あらすじのところに行き着くまで3万字くらいあります。スマホで読むにはちょっとタルいかもしれません。PC縦読み推奨です。
その他テンプレ的にニーズがあるだろう設定(語りが一人称、悪役令嬢が転生者、ザマア展開など)はほとんどないので、その手の設定が飽きた人向けです。
ただし転生者は存在します。さて、誰でしょう?
円形の観客席がギャラリーで埋め尽くされていた。
老いも若きも男も女もいる。中でも目立つのは、学生服を着た娘たちだ。
女子生徒たちはみんな暗い顔だった。もしどちらかが死んでしまったら……と気をもみながら舞台中央の2人を注視している。
彼女らと同窓と見える青年が向かい合っていた。その距離5歩。剣や拳で戦うには遠すぎる間合い。
彼らは今、本物の《決闘》の時を迎えていた。
見届人の男が緊張の面持ちで最後の意志確認を行なう。
徒手空拳の青髪があっさりとうなずきを返し、遅れてすでに抜剣している金髪がためらいがちに答えた。
見届け人もうなずき後ろへ下がると、コインを弾いた。高々と舞い上がったそれは地面に落ちて硬音を響かせる。
決闘開始と同時、ギャラリーは目を見開いた。いつの間にか青髪の青年の手に炎の剣が握られていたのだ。天に向かって長く、長く伸びる炎の剣だ。
長槍のごとく5歩の間合いを無効にして、青髪が炎の剣を愚直に金髪へと振り下ろす。
「戯けめ!」
金髪の青年バルアトスは嘲りとともに炎を剣で受け止めようとした。
「躱せッ!!」
慌てて見届け人が叫ぶ。遅かった。
青髪の青年フレイズの炎はまずバルアトスの剣を断ち切った。
次にバルアトスの頭蓋を断ち割った。
そのままバルアトスを股下まで斬り裂いた。
先に断ち切られた剣先が落ちて鈍い音を立てる。
バルアトスが均衡を失って左右に倒れた。
観客席のあちこちから悲鳴が聞こえた。
気の弱い娘たちは叫ぶこともできずに次々と気を失う。
気の利いた男たちは倒れた娘達を介抱し、そうでない男たちは我先にと逃げ出した。釣られて残った連中も走りだす。
逃げ惑う人間たちの流れに逆らってたったひとり、立ち尽くす女子生徒がいた。
その瞳には下手人フレイズが静かに映っている。
死んだバルアトスの婚約者――ヴィクトリアだった。
15/12/27
全文をプロットそのままで書き換えました。
旧版は下記に残しています。
年末年始で暇な方は読み比べて良くなったかどうか教えてください!
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決戦場の上で5歩離れて向かい合うふたりの男子学生を、ぐるりとギャラリーが囲んでいた。
老いも若きも男も女もいる。中でも目立つのは、決戦場に立つふたりと同窓と見える年ごろの娘たちだ。
彼女らはそろって暗い顔をしていた。この決闘が学園で行われる模擬戦ではなく、両家の合意に基づく実戦だからだ。
相打ちの末ふたりとも儚くなる、という最悪の結末も充分ありえる。
ふたりの間に立つ見届け人の男も緊張の面持ちだった。
その見届け人が最後の意志確認を行なう。
はじめに徒手空拳の青髪の青年があっさりとうなずきを返し、遅れてすでに抜剣している金髪の青年がためらいがちに答えた。
それを受けて見届け人は後ろへ下がると、高々とコインを弾き――わずかの間を挟んでそれは地面に落ちて硬音を響かせた。
決闘開始の合図と同時、ギャラリーが驚きとともに目撃したのは、5歩の間合いを無効にするほど天に向かって長く伸びる炎の剣だった。
青髪の青年の手に、いつの間にか炎が握られていたのだ。その長槍のごとき炎が、愚かしいほど真っ直ぐに振り下ろされる。
「戯けめ!」
金髪の青年バルアトスは嘲りとともに剣を振りかぶり、あまりにも長い剣状の炎を受け止めようとした。
「っ! 躱せッ!!」
見届け人が叫ぶ。遅かった。
振りかぶった剣ごとバルアトスは脳天から真っ二つに斬り裂かれ、左右に倒れた。
その途轍もなく凄絶な光景に、息を呑む音が聞こえるほどの静寂が満ちる。
惨劇を理解した気の弱い娘たちが次々に気を失うと、ようやくギャラリーはあわてて動き出した。
その中でただひとり、バルアトスの婚約者であるヴィクトリアだけは下手人――青髪の青年フレイズを静かに見つめていた。
天に向かって伸びたフレイズの炎のように真っ直ぐと。
瞳に畏怖と憧憬を湛えながら。
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