第8話 製造使命
【鳥人都市ハーピーシティ 北門付近】
ハーピーのレジスタンスの共に、私とヴィクターはハーピーシティの北にやってきた。ハーピーの偵察部隊によると、北門が半壊らしい。
「確かに半壊だな」
「昨夜、ここで爆弾テロか何かあったらしいです」
「そうか……」
私はそれだけ言うと、北門へと1人で歩いていく。後ろでヴィクターやハーピーのレジスタンスたちが見守っている。
[えっ……?]
動揺するバトル=アルファたちに近づくと、私はラグナロクを両腕に纏い、彼らに飛び掛る。軽く投げるだけで鋼の機械兵器は胸部のプレートを砕け散らせ、倒れ込む。
[敵だ! 殺せ!]
[攻撃セ――]
私は北門の辺りで待機していたバトル=アルファ数十体をまとめて相手する。両腕と両足にラグナロク魔法を纏い、次々とバトル=アルファたちを砕き壊していく。
北門のあった場所に待機していた低空浮遊戦車がこっちに向かって動き出す。全部で3台。砲口がこちらを向いている。
「…………」
低空浮遊戦車から砲弾が放たれる。私はその砲弾を手で受け止めると、戦車に向かって投げ返す。砲弾は戦車に着弾し、轟音と共に爆発する。戦車は浮力を失い、その場に倒れる。
私は残った戦車に向かっていくと、ハッチを無理やりこじ開け、コックピットの中へと入る。内部で戦車を操作していたバトル=アルファを蹴り壊し、戦車を奪う。砲身をもう1台の戦車に向け、砲撃する。最後の戦車は木っ端微塵に砕け散る。付近にいた3体のバトル=アルファもその衝撃で倒れ、壊れる。
「ヴィクター、いいぞ」
[了解しました!]
私は無線機でヴィクターに合図を出すと、乗っ取った低空浮遊戦車を使い、ハーピーシティの内部へと入っていく。砲弾を飛ばし、走り寄ってきたバトル=アルファ数体をまとめて吹き飛ばす。
「今こそ連合政府を倒すんだ!」
「私たちの生活を取り戻すんだ!」
弓矢を持ったハーピーたちが後ろから続く。彼女たちは弓矢の矢じりに白色の魔法――衝撃波を纏わせ、それをバトル=アルファたちに向かって飛ばす。衝撃波を纏った弓矢は強い威力を有する。一発でバトル=アルファの腹部を砕き壊し、機能停止に追いやる。
私は弾切れになった戦車を捨てると、外に飛び出す。剣を抜き取り、近くにいたバトル=アルファ数体を斬り壊す。
だが、私の後ろから1体のバトル=メシェディが迫っていた。その手にはナイフが握られ、私の頭を砕こうとしていた。
[えっ……!?]
不意にそのバトル=メシェディの動きが止まる。その瞬間、そのバトル=メシェディの頭に一発の銃弾が撃ち込まれる。銃弾? ハーピーじゃないのか? 私は後ろを振り返る。そこにいたのは、――
「…………!? お前は!」
強化プラスチック製の装甲服を纏った1人のクローン兵。クリスター政府所属じゃない。ネオ・連合政府所属だ。……コマンダークラスの軍人――コマンダー・サターンだ!
「ど、どういうつもりだ!?」
よく見れば、あちこちでネオ・連合政府のクローン兵が、仲間であるハズのバトル=アルファやバトル=メシェディに襲い掛かっていた。
「ネオ・連合政府のクローンに対する非人道的な扱いにもうガマンできない」
「…………!」
「……あなたたちを援護します! コマンダー・プルートとコマンダー・ヴィーナスを一緒に……!」
「そうか……」
私はそう言うとコマンダー・サターンや数人のクローン兵と共に激戦地となっている市街地を駆け抜けていく。
ネオ・連合政府はクローンを、バトル=アルファと同じように、物扱いしている。ネオ・パスリュー本部でもそれは同じだった。だからこそ、あれだけ早くネオ・パスリュー本部を制圧できた。だから、あれだけ大勢のクローン兵があっという間に降伏した。
大部分のクローン兵に忠誠心はない。恐怖で無理やり押さえつけているだけだ。それはハーピーたちも同じだ。
私たちは圧倒されるネオ・連合政府のロボット軍を尻目に、ハーピーの王宮へと入る。ここでも大勢のクローン兵と助け出されたハーピーたちが、ロボット軍と戦いていた。
「コマンダー・プルートはどこにいる?」
「恐らく最上階の女王の間にいると――」
コマンダー・サターンがそこまで言ったとき、私と彼女はその場で足を止める。
「…………!? コマンダー・プルート筆頭中将!?」
「…………!」
広い豪華な廊下に、黒いフードコートを纏って1人で立っていたのはネオ・連合政府の九騎筆頭――コマンダー・プルートだった。彼女の周りには数人のクローン兵とハーピーが倒れていた。……全員死んでいる。
「……フィルド、待っていた」
「待っていた、だと?」
「“コマンダー・サターンの下手なコマンダー・ウラヌス救出劇を見逃し”、ハーピーのレジスタンスを放っておき、愚かなコマンダー・ヴィーナスに指揮を一任したのも、お前と直接戦うためだ」
「コ、コマンダー・プルート閣下っ、お気づきで……!?」
「コマンダー・ヴィーナスは女王の間にいる。……勝手に殺せ」
……そうか。このクローン、私だけを狙っているのか。恐らくは私さえ殺せれば、彼女はそれで満足なのだろう。
「……サターン。ヴィーナスを頼んだぞ」
「は、はい!」
コマンダー・サターンは引き連れてきたクローン兵と共にその場から走り去る。
私は腰に装備していた剣を抜き取る。コマンダー・プルートは背中に背負っていた赤茶色の大きな薙ぎ刀を手に持つ。上下双方に刃がある。
――筆頭中将の地位を持つコマンダー・プルート。彼女の実力はホンモノ“らしい”。少なくとも、コマンダー・マーキュリーよりかは強いだろう。
「お前を始末すれば、私の製造使命を果たせるだろう。……生まれたことに、意味を成せる」
「……できるかな?」
私はラグナロク魔法を纏った剣を握り、コマンダー・プルートに斬りかかる。彼女も刃にラグナロク魔法を纏い、私の攻撃を受け止める。
――彼女の実力はホンモノ。一度刃を交わしただけで、それは“確信”に変わった。この戦い、手を抜けない……!




