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ロスト・パートナー  作者: 葉都菜・創作クラブ
第2章 陽の都市 ――鳥人都市ハーピーシティ――
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第6話 ハーピー族

 【鳥人都市ハーピーシティ ハーピー王宮 女王の間】


「申し訳ありませんっ……」


 私はコマンダー・プルート閣下に土下座する。私はコマンダー・マーキュリーと共にネオ・パスリュー本部へと向かっていた。その道中、フィルドの襲撃にあい、部隊はほぼ壊滅した。しかも、コマンダー・マーキュリー中将は戦死した。


「コマンダー・ウラヌス! あなた、どういうつもり!?」


 涼しそうな顔をしているコマンダー・プルート閣下と対照的に、コマンダー・ヴィーナスは激怒していた。


「あなた、元々はネオ・パスリュー本部所属だったよね? ネオ・パスリュー本部の戦いでは逃げ出し、ここへと逃げてきた。ところが、今回もまた逃げた。あなたの得意技は逃げることだけ?」

「いや、ネオ・パスリュー本部のときはパトフォー閣下やコマンド閣下も撤退しました故、――」

「あなたはクローン軍人なんだから逃げずに戦うのは当たり前でしょう!?」


 余計なことを言ったらしく、またコマンダー・ヴィーナスは怒りの声を上げる。いや、何を言っても怒りの声が降りかかるか……


「私のオペレーションを台無しにし、ネオ・パスリュー本部を奪回できなかった罪は重い――」


 コマンダー・ヴィーナスが立ち上がる。な、なにをする気だ……!? 私の心に恐怖が宿る。なにか、本能的に身の危険を感じた。

 私はつい立ち上がってしまう。怖くて後ずさる。だが、そんな私の両腕は2体の騎士型ロボット――バトル=パラディンによって抱き捕まれる。


「その首を斬り、ハーピーシティの中央広場に晒せ!」

「…………!?」


 処刑宣言に、私はコマンダー・プルート閣下に目で助けを求める。だが、閣下は冷たい目で私を見ているだけだった。助けてくれなかった。


「そ、そんなっ! いやだ、助けて!」

「コ、コマンダー・ヴィーナス中将、本当に彼女を――」

「当たり前でしょう! コマンダー・サターン!」


 助けに入ったコマンダー・サターンに、怒りの目を向けるコマンダー・ヴィーナス。だが、彼女は踏みとどまる。


「中将! ネオ・連合軍の勢力は著しく劣っており、――」

「そんなワケないでしょう!? このハーピー諸島でクリスター政府を倒せば世界を制圧できるのよ!」


 ほ、本気でそう思っているのか!? どう考えても、このハーピー諸島で勝てても、クリスター政府には勝てない。まだ無数の力を彼らは有している。失脚したとはいえ名戦術士のクラスタも控えている。シリカと対を成すもう1人の大将――ソフィアだっている。クローン軍だって、まだ100万人以上がクリスター政府本土に控えている。勝ち目は全くない。


「す、すいません。しかし、念のためにコマンダー・ウラヌスを生かし、いざと言うときのために……」

「…………。……そう、分かった」


 …………!? た、助けてくれるのか? 私の心に一筋の希望が差し込む。だが、それは一瞬のことだった。


「コマンダー・ウラヌスに鞭打ち刑を与え、ハーピーシティ中央広場に晒しなさい」


 ……は? 鞭打ち刑?


「最近、逃亡が相次いでいる生意気なクローンと、どこまでも反抗的なハーピーたちに、私に逆らうとどうなるか見せ付けるのよ。……コマンダー・プルート筆頭中将閣下、よろしいですか?」

「……好きにしろ」

「閣下!」

「連れて行きなさい!」


 私は2体のバトル=パラディンに無理やり引きずられていく。そんな私の姿を、コマンダー・サターンは困惑した表情で、コマンダー・ヴィーナスは満足げな表情で、そしてコマンダー・プルートは冷たい目で見ていた――



◆◇◆



 【ハーピーシティの東 ハーピー・ウェスト山地】


 右肩から血を流すフィルドさん。コマンダー・マーキュリーに勝ったはよかった。だが、彼女の最期の一撃で、フィルドさんは右肩をやられてしまった。

 本来は魔法ですぐに直せる。でも、回復魔法はフィルドさんの分野外魔法だ。彼女は攻撃魔法に特化しすぎているせいか、回復魔法はあまり使えない。そして、それは私も同じだった。

 それでも、生命力が強いせいか、この程度の傷なら一晩休めば完治してしまうらしい。


「…………!」


 急にフィルドさんの足が止まる。私も同じだった。……何かいる。


「……誰だ?」

「…………」


 すぐ近くの茂みから1人の女性が出てくる。……その背中には鳥のような翼があった。――ハーピー族だ。この諸島のみに生息する種族の生き物……


「お昼に連合軍と戦っていた方ですよね?」

「それがどうした?」

「実はお願いがあるんです」


 そう言いながら、そのハーピーはフィルドさんの右肩に手をおく。蒼色の光が発せられる。――アレは回復魔法だ。傷が消えていく。

 ハーピーは魔法が使える種族だ。回復魔法以外にも、攻撃魔法や補助魔法なども使えるらしい。


「私たちは見ての通り、この諸島に住むハーピーです。私たちの生活は連合政府によってメチャクチャにされてしまいました」

「…………」

「ハーピー王国の軍隊長だったウィンドシア将軍は私たちを裏切って連合政府の仲間に加わり、その結果ベーチェル女王様は捕らえられ、応急に軟禁されてしまいました」


 ウィンドシア……。かつてハーピー王国の将軍だった人だ。裏切って連合政府に加わったらしい。ベーチェルはハーピー王国の女王。今でこそ連合七将軍の地位にあるけど、形式的なものらしい。


「私たちは連合政府の勢いが衰えた今、旧ハーピー王国の自衛軍を中心に、レジスタンス(反乱軍)を結成し、首都ハーピーシティ奪還のために戦ってきました。今こそクリスター政府の方々と一緒に勝負を決めたいのです。……私たちも一緒に首都ハーピーシティに連れて行ってください!」

「…………。……構わないが、危険な戦いになるぞ?」

「これからも連合政府の支配が続くほうが危険です。覚悟はできています」


 声をかけてきたハーピーの言葉には、確かな決意と覚悟があった。よく見ると、彼女の身体にはいくつもの傷跡があった。これまでも連合政府と戦って来たのかも知れない。


「分かった。仲間を連れて、私と一緒に行こう」

「ありがとうございます。お力にならせて頂きます!」


 そう言うと、彼女は茂みに向かって手を振る。茂みの中で何か動く。ハーピーの影だ。近くに何人かハーピーのレジスタンスがいるのだろう。

 以前、ハーピーの自衛軍は強かったと聞いたことがある(その頂点に立つのがウィンドシアだったのだけど……)。これなら、ハーピーシティ攻撃がかなり楽になるかも知れない。私は心強い味方を得た気分だった。

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