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ロスト・パートナー  作者: 葉都菜・創作クラブ
第10章 終の要塞 ――カオス支部・上空――
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第41話 VSパトフォー

「さぁ、始めようか。――黒か白か」


 パトフォーは剣を投げ捨てると、両拳を握り締め、腕を胸の前でクロスさせる。僅かな間をおいて、空気が振動し、強力な力がパトフォーに集まっていく。黒い雲が彼の足元から噴き出し、それは彼を覆い囲っていく。強い衝撃波が巻き起こる。

 しばらくそれが続いたが、やがて黒い渦状のエネルギーに囲われたパトフォーの姿が見え始める。その身体は黒い闇のエネルギーの塊と化し、漆黒色をしていた。頭部も同じく闇に包まれ、そこから赤一色となった不気味な目が開く。


「…………!」


 ラグナロク・エネルギーの塊と化したパトフォーの身体は10倍近く大きくなる。人型を保っているが、両腕の先は鋭い爪のような形状をしていた。頭部には対になった角のようなものが生えている。


「ラグナロク魔法の塊といったところだな、パトフォー」


 私は額に汗を滲ませながら言う。だが、もはやパトフォーから返事は返ってこなかった(よく見れば口がないな)。

 私は剣を構える。ラグナロク魔法の塊が動きだし、私に向かってその大きな手を伸ばしてくる。私を掴み取ろうとしているのか?


「――遅い」


 私はゆっくりと動くその手を軽々と後ろに飛んで避ける。その場から衝撃弾を連続して飛ばす。白い魔法弾は尾を引いて飛び、ラグナロク・モンスターの胸に着弾する。爆発が起こり、煙が飛ばされるように、身体のごく一部分が僅かに掻き消される。

 よく見れば、身体のアチコチから黒い煙のようなものが上がり、それは徐々に消えていく。どうなっている? ラグナロク魔法を支配しきれず、徐々に消えていっているのか?


「……ラグナロクのパフェクターといえども、それだけの量のラグナロク魔法は纏めきれないようだな」


 私は巨大な衝撃弾を連続して飛ばしていく。何十発もの衝撃弾が白い光を放ちながら飛び、巨大な黒い煙の怪物は呻き声を上げながら、身体を失っていく。

 だが、ラグナロク・モンスターもただ受けているだけじゃなかった。さっきとは全く異なる速さで、大きな手を私に向かって振り下ろす。その速さに私は避けきれず、胸や腹部を斬り付けられる。真っ赤な鮮血が空に上がる。


「う、くぁッ……!」


 私は歯を食いしばりながら、再び空中を蹴って空に上がる。そこからさらに巨大な衝撃弾を飛ばす。遠く離れたラグナロク・モンスターの身体に着弾し、爆発したその衝撃が私にまで伝わってくる。ラグナロク・モンスターは急速に縮んでいく。

 そのとき、ラグナロク・モンスターの腹部が急速に変形し、巨大なラグナロク魔法弾が形成される。それは自身の身体から放たれると、高速で飛んでくる。身体の1/4近くの量だ。

 私はその場から素早く飛び、それを避ける。巨大ラグナロク魔法弾は私の遥か後ろに飛んでいき、遥か遠くの海に着弾する。


「…………!!?」


 着弾した巨大ラグナロク魔法弾は、今までに経験した事のない爆発を起こす。何十キロと離れている場所に着弾したにも関わらず、身体が引き裂かれそうになるほどの衝撃波が伝わってくる。爆風と一緒に大量の海水が飛んでくる。

 海から飛ばされてきた大量の水が私の身体を包む。空を飛んでいる中型飛空艇の艦隊が波にのまれていく。大型飛空艇でさえも、辛うじてその場に留まることが出来たぐらいだ。


「…………ッ!!」


 私は衝撃波に耐えながら水を掻き分け、空に飛び上がる。だが、そこにラグナロク・モンスターの爪が迫っていた。鋭い爪が私の身体を深々と斬り付ける。もう少し前に出ていたら、私はバラバラにされていただろう。

 斬られた激痛に、下唇を噛み締めながら、私は下へと落ちていく。私から出た血と打ち上げられた海水が混ざる。


「なんて威力だ! あんなのが島に撃ち込まれていたら、島が吹き飛んでいたっ……!」


 私は激痛に耐えながら、再び空に上がる。幸いなことに、さっきの衝撃波と大量の海水はラグナロク・モンスターにも大きなダメージがいっていたらしい。その証拠に、人間の10倍はあった体は半分程度までに縮んでいた。

 私は両腕に衝撃波を纏いながら、ラグナロク・モンスターに向かっていく。そのとき、全身がバラバラになりそうなほどの激しい痛みが走る。傷口から血が噴き出る。意識が朦朧とし出す。


「こ、こんなところ、でッ……!」


 私は口から血を吐きながら、なんとかラグナロク・モンスターの元に飛ぶ。両腕には、纏われた巨大な衝撃波。私は半ば意識を失いつつ、両腕を振り降ろす。2つの白い衝撃弾の塊が飛んでいく。それはお互いに交差し、クロス字となってラグナロク・モンスターの胸に撃ち込まれる。

 私の身体が落ちていく。もう、力が入らなかった。だが、私の目はしっかりとラグナロク・モンスターを捉えていた。


「……ッ、―…!」


 ラグナロク・モンスターの胴体が一瞬ふくらみ、次の瞬間に爆発が起こる。内部から弾け飛んだ。大量のラグナロク魔法が空に散り、ラグナロク・モンスターはお腹に響く雄叫びを上げながら消えていく。

 東から太陽の光が射し込んでくる。空が黒から青に変わっていく。――黒い夢は終わった。私は何となくそれを感じ取っていた。……だが、――


「…………!」


 何かが落ちてくる。いや、私に向かって来る。何かはすぐに分かった。――胸から下全部と左腕を失ったパトフォーだった。彼は私に追いつくと、右手を振り上げる。ラグナロク魔法が纏われていた。


「パト、フォーッ……!?」

「ククッ、共に、終わろうッ!」


 狂気的な表情を浮かべながら、彼は右手の手刀で私の首を貫こうとした。もう、身体は全く動かない。まるで自分の身体じゃなくなったかのようだった。――死を覚悟した。


「フィルドさん!」

「…………!?」


 パトフォーが後ろを振り返る。それと同時に大量の血が迸り、私の身体に飛び散る。――パトフォーと首と胴が真っ赤な血飛沫と共に斬れ分かれていた。


「…………!!」


 首と胴が離れたパトフォーの身体が、私から離れていく。代わりに誰かが私を抱き締めてくる。


「フィルドさん、終わりましたよ」


 黄色い髪の毛にエメラルドグリーンの目をした女性――パトラーが優しい口調で言う。――パトフォーの首を斬り、私を助けたのは私の弟子だった。


「……そうか、黒い夢は――」

「――ええ、完全に終わりました。私たちの勝ちです!」


 そう言いながら、私と同様に身体から血を滴らせるパトラーは空中を蹴り、空に再び上がる。私はパトラーに抱かれながら、長きに渡る黒い夢との戦いに終わりを感じていた。だが、確かに意識があったのは、そこまでだった――

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