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ロスト・パートナー  作者: 葉都菜・創作クラブ
第1章 始の要塞 ――ネオ・パスリュー本部――
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第3話 ネオ・パスリュー本部からの脱出

 【ネオ・パスリュー本部 Qブロック 幹部専用飛空艇プラットホーム】


 俺は最高司令室からネオ・パスリュー本部の飛空艇プラットホームへと出る。この広い飛空艇プラットホームには、黒色をした上級幹部専用の小型飛空艇が1機だけ置いてある。


「パトフォー閣下、お急ぎを!」


 黒色の小型飛空艇の側では、ネオ・連合政府総統コマンド、ネオ・連合政府副総統コモット、筆頭将軍ネストールの3人が、騎士型親衛ロボット――バトル=パラディン6機と共に待っていた。


「出発するぞ」

「は、はっ!」


 俺の言葉を受けた3人と6機は次々と小型飛空艇へと乗り込んでいく。俺もその小型飛空艇へと乗り込もうとしたとき、足元に銃弾が飛んでくる。


「……先に乗り込み、出発準備をしろ」


 俺のすぐ目の前にいたネストールは無言で頷き、半ば駆け足で小型飛空艇の中へと消えていく。

 ネストールが入っていくと同時に、俺は素早く後ろを振り返る。……すぐ後ろに1人の女が迫っていた。その手には剣が握られ、刃が間もなく俺の身体を斬り裂こうとしていた。


「パトフォー覚悟!」


 その女が叫ぶと同時に、俺は右腕にラグナロク魔法を纏ってその刃を腕で受け止める。金属同士がぶつかったかのような音がし、火花が舞い散る。このまま押し切る気か? ――否、黄色の髪の毛をした彼女はすぐに俺から距離を取った。


「……パトラー=オイジュス、久しぶりだな」


 俺はニヤリと笑うと、今度は自分から襲い掛かってきた女軍人――パトラー=オイジュス向かっていく。右拳にラグナロク魔法を纏う。


「…………!」


 俺はパトラーの顔を砕き、一撃で勝負を付けようとした。だが、拳が彼女の頬に触れる瞬間、彼女の姿は消えてしまう。瞬間移動――

 消えたパトラーの姿を探そうとしたとき、突然、俺の身体は強い衝撃を受け、その場から弾き飛ばされる。腹部にラグナロク魔法を纏った彼女の脚が叩き込まれた。

 凡人なら死ぬだろう。死ななくても、吹っ飛ばされて瀕死の傷を受ける。だが、俺は素早く床に足を付け、なんとか留まる。


 俺は血を吐き捨て、再び彼女に向かっていく。この動きとて凡人の目に留まるものではない。彼女の動きも同じだろう。

 つまりのところ、俺たちは普通の人間がやる殺し合いをしているワケではない。少なくとも、このプラットホームの出入り口で呆然としているクローン兵どもとはレベルが違う。


 何度も拳を交わす俺とパトラー。俺は一瞬の隙を突き、彼女の腹部に拳を叩き込む。彼女は血を吐きながら、後ろへと吹き飛ばされる。これでさっきのは返した。

 俺は彼女の身体が吹き飛ばされる方向へと回り込み、両腕を素早く持ち上げる。


「パトラー中将!」


 プラットホームの出入り口にいたクリスター政府の女クローン(名前はヴィクターだったか?)が、事態に気が付く。慌てて助太刀しようとする。だが、もう遅い――!


「死ね!」


 俺は両腕からラグナロク魔法を纏った電撃を飛ばす。それは俺の方に向かって飛んできていた彼女の身体に浴びせられる。哀れな女中将の悲鳴が上がる。


 もう、6ヶ月前になるか? 俺はあの女を実験台にした。普通の人間だった彼女に“サイエンネット・タイプ4=ウイルス”を投与し、凡人から超人へと進化させた。

 実験は成功した。だが、成功体は俺一人で十分。彼女を廃棄しようとしたとき、彼女は目覚め、俺に襲い掛かった。結果、俺は重傷を負い、タイプ4ウィルスを自身に投与する前に失った。


「ようやくお前に復讐することが出来る。数万人のクローン兵を率いてここを襲撃したフィルドに感謝した方がよさそうだな、ククク……」


 俺は床に倒れ、瀕死にまで追い込まれたかつての実験台に近づく。彼女は血を吐きながら、転がった剣を手に取ろうとする。俺はその手を勢いよく踏みつける。


「ぁ、ぐぁ、あっ……!」

「あの施設で俺はコマンダー・ライカやバトル=オーディンを失った。まぁ、あとコマンダー・フィンブルも失ったがな」

「お、お前がっ、仲間を失って悲しむなんて、ちょっと予想して――」

「いや、悲しんでなんかいないさ。ライカなどはいくらでも代わりのきく量産型のゴミクローン。また作ればいいさ。……だが、タイプ4ウィルスの件は最悪だ」


 俺は懐からリボルバーを抜き取り、それをパトラーの頭に押し当てる。


「さて、お前程度ではタイプ4ウィルスを失った怨みを晴らすことなど到底できないが――」


 そのとき、大きな音と共に強い風が俺に吹き付ける。振り返れば、飛空艇格納庫の出入り口が開き、コマンドらを乗せた小型飛空艇が今にも飛び立とうしていた。しまった、時間をかけ過ぎたか――! アイツらは自己保身のためならば、俺なんか捨てていく。

 俺はリボルバーを投げ捨て、そこから勢いよく駆け、閉じゆく小型飛空艇の扉に転がり込む。間一髪だった。

 小型飛空艇は、後ろからヴィクターらクローン兵の激しい銃撃を受けながらも、ネオ・パスリュー本部から夜明けの空へと飛び出す。


「パ、パトフォー閣下っ!」


 コマンドとコモットが駆け寄ってくる。……コイツらとタイプ4ウィルス。当然、価値は後者の方が遥か上だ。この2人も死んだライカと何ら価値は変わりない。いくらでも代替が利く。


「……七将軍――ケイレイト、メタルメカ、ウィンドシア、コマンダー・レンド、コマンダー・クロアに連絡しろ。――クリスター政府の攻撃が始まった、とな」

「は、はっ!」


 ……パトラーを殺すことはできなかったが、まぁいいだろう。パトラーとは、いやフィルド、シリカ、アーカイズらと殺り合う日は必ずやってくる。それも近い内に。

 黒い夢と白い夢。決着のときは近い。俺はそれを肌で感じ取っていた――

  <<登場組織>>


◆クリスター政府

 ◇フィルド、パトラー、アーカイズらの所属する国家。

 ◇ラグナロク大戦に勝ち抜き、世界の9割以上を統治する。


◆ネオ・連合政府

 ◇ネオ・パスリュー本部を本拠地とする軍事国家。

 ◇リーダーはコマンドだが、実際にはパトフォーがリーダー。

 ◇かつては強大な力を有していたが、今はハーピー諸島のみを支配する小規模国家となった。




  <<登場人物>>


 【クリスター政府】


◆シリカ

 ◇クリスター政府特殊軍精鋭部隊に所属する女性。階級は大将。精鋭部隊の指揮官でもある。

 ◇フィルドのクローン。

 ◇昔、右目を失った。


◆フィルド=ネスト

 ◇クリスター政府特殊軍精鋭部隊に所属する女性。階級は中将。

 ◇14年前にサイエンネット・タイプ1=ウィルスを投与され、魔法を扱える超人的人間へと進化した。


◆パトラー=オイジュス

 ◇クリスター政府特殊軍精鋭部隊に所属する女性。階級は中将。

 ◇6ヶ月前、パトフォーらによってサイエンネット・タイプ4=ウィルスを投与され、魔法を扱える超人的人間へと進化した。


◆アーカイズ

 ◇クリスター政府特殊軍精鋭部隊に所属する女性。階級は中将。

 ◇フィルドのクローン。


◆ヴィクター

 ◇クリスター政府特殊軍精鋭部隊に所属する女性。階級は准将。

 ◇フィルドのクローン。



 【ネオ・連合政府】


◆パトフォー

 ◇ネオ・連合政府の支配者。

 ◇サイエンネット=ウィルスを投与し、魔法を扱える超人的人間へと進化した。更なる力を求めて、サイエンネット・タイプ4を開発したが、パトラーによって失った。

 ◇ネオ・パスリュー本部から脱出した。


◆コマンド=パネル

 ◇ネオ・連合政府の総統。

 ◇ネオ・パスリュー本部から脱出した。


◆コモット

 ◇ネオ・連合政府の副総統。

 ◇ネオ・パスリュー本部から脱出した。


◆ネストール

 ◇連合政府七将軍(七大将)の1人。筆頭将軍。

 ◇ネオ・パスリュー本部から脱出した。


◆コマンダー・ジュピター

 ◇ネオ・連合政府に所属する女性。階級は中将。

 ◇フィルドのクローン。

 ◇クリスター政府に降伏した。


◆コマンダー・マーズ【死亡】

 ◇ネオ・連合政府に所属する女性。階級は中将。

 ◇フィルドのクローン。


◆コマンダー・ネプチューン【死亡】

 ◇ネオ・連合政府に所属する女性。階級は中将。

 ◇フィルドのクローン。


◆コマンダー・サターン

 ◇ネオ・連合政府に所属する女性。階級は中将。

 ◇フィルドのクローン。

 ◇ネオ・パスリュー本部から脱出した。


◆コマンダー・ウラヌス

 ◇ネオ・連合政府に所属する女性。階級は中将。

 ◇フィルドのクローン。

 ◇ネオ・パスリュー本部から脱出した。


◆コマンダー・ムーン【死亡】

 ◇ネオ・連合政府に所属する女性。階級は少将。

 ◇フィルドのクローン。


◆コマンダー・カロン【死亡】

 ◇ネオ・連合政府に所属する女性。階級は少将。

 ◇フィルドのクローン。


◆コマンダー・ロール【死亡】

 ◇ネオ・連合政府に所属する女性。階級は大佐。

 ◇フィルドのクローン。


◆コマンダー・レーズ

 ◇ネオ・連合政府に所属する女性。階級は中佐。

 ◇フィルドのクローン。

 ◇クリスター政府に降伏した。

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