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ロスト・パートナー  作者: 葉都菜・創作クラブ
第9章 白の窮地 ――連合軍・カオス支部――
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第35話 白い夢の窮地

 【カオス支部 上層エリア 廊下】


 カオス支部の最高司令室に向かって足を進めていたときだった。


「…………!」


 後ろから何かが飛んできて、私の行く手を阻む。――死んだハズのスウィーパーだった。だが、その姿は無残なものだった。装甲服は完全に崩れ落ち、後ろ右腕が千切れてなくなっていた。だが、残り3本の腕は鋭い爪を持った凶器に変異していた。


「もはや暴走状態にあるようだな」


 私は剣を抜き取る。その刃にラグナロク魔法を纏う。だが、そのとき、身体に痛みが走る。マズイ、またエナジーの欠乏だ。魔法の使い過ぎだ。

 私はその場から駆け出し、スウィーパーに向かっていく。スウィーパーも私に向かって走ってくる。大きな鋭い爪で私を引き裂こうとする。私は素早い動きで腕の1本を斬り落とす。


「…………!」


 他の爪が私の腹部を斬り裂く。私は後ろに下がりながら、その腕を斬り飛ばす。私の腹部から出た血が灰色のひび割れた床に滴る。

 スウィーパーは残った1本の腕で私を斬り殺そうと、こっちに向かって走ってくる。私はラグナロク魔法が消えかかる剣を構える。


「…………ッ!」


 スウィーパーが私を斬り殺そうと、振り上げた爪を勢いよく下ろす。私は剣でそれを斬り落とす。ただ、さっきのように軽々とは斬れなかった。かなりの力が必要だった。

 全ての腕を失ったスウィーパーは私に向かって倒れ込もうとする。私はその場から飛んで後ろに下がろうとする。

 だが、スウィーパーは突如として私に向かって飛んできた。激しい疲労も相まって、油断していた私はそれを避けれなかった。


「…………!」


 スウィーパーは口を大きく開け、私の右肩に噛み付いてくる。鋭い歯が私の右肩に喰い込む。私はスウィーパーに押し倒されるようにして床に倒れる。


「うわああぁぁあッ!!?」


 相当強い力で噛み付けるスウィーパー。激痛が私を襲う。マズイ、このままだと右肩を噛み千切られるのは時間の問題だ。

 私は最後の力を振り絞って左腕にラグナロク魔法を纏おうとする。だが、その途端、再び激しい痛みが身体を走り、今度は激しく吐血する。それと同時に身体に力が入らなくなる。


「わ、私は、――死ぬのか……?」


 意識がもうろうとする。スウィーパーの強すぎる力の前に、私はもはや何も出来ない。このままだと殺されるというのに、身体がもう動かなかった――



◆◇◆



 【カオス支部 上層エリア 最高司令室】


 ネストールに擬態したエックスは魔法弾を飛ばしてくる。私はラグナロク魔法を纏ったサブマシンガンで激しい銃撃する。だが、もはやダメージは大きくなかった。早くも耐性を付けてしまったらしい。


「もはやわたしにラグナロク魔法は通用しない。諦めるんだな……」


 静かな口調で言葉を発するネストールの姿をしたエックス。どうやら姿だけじゃなく、相手の人格さえも擬態することが出来るらしい。

 私はラグナロク魔法を纏った巨大な斬撃を飛ばす。エックスはそれを避けることもせず、正面から受ける。普通なら相当に頑丈な装甲服を纏っていても身体は斬れ飛ぶハズだ。だが、そうなることはなかった。


「なら……」


 私は『空間』を殴り、アレを吹き飛ばそうと考えた。右腕にラグナロク魔法を限界まで纏おうとする。だが、何をするのか、エックスは悟った。


「させない……」

「パトラーさん!」

「…………!?」


 エックスは右腕を私に伸ばしてくる。大きな腕が私の右腕を掴み取り、そのまま私の身体は持ち上げられる。まさか、私を捕食する気か……!?


「パトラーさん! パトラーさんッ!」


 サレファトが動揺した表情を浮かべる。震えるその手に持った剣。……エックスは私を盾にするかも知れない。下手に攻撃できない。だが、攻撃しなかったら、このまま食べられてしまう。サレファトは身動きできないでいた。


「次はお前だ。この女の姿で捕食してやる……」

「パトラーさん!」


 エックスの腹部が開く。まばらに鋭い牙が並んでいる。アレでさっきネストールを捕食した。一度口が閉じられたら終わりだ。シールドでどうにか防げる力じゃないだろう。

 そのとき、最高司令室の扉が開く。入ってきたのは、白地に青いラインが入った軍服を来た片目の女性――シリカさんだ!


「…………!」

「シリカさん助けて!」


 だが、もうすでに私の身体は勢いよくエックスに引き寄せられ、捕食口に放り込まれようとしていた。どう考えてもシリカさんの攻撃が間に合わない!

 そのとき、シリカさんの後ろから激しい風と共に、鋭いブーメランが飛んでくる。それはエックスの伸びきった右腕を斬り飛ばす。私の身体は床に落ちる。


「パトラー!」

「ケイレイト!」


 ブーメランを投げたのは栗色の髪の毛をした女性――ケイレイトだった。私は素早くシリカやサレファトの側にまで下がる。


「邪魔を……」

「アレが生物兵器エックスか」


 シリカさんが白色をしたハンドガンを抜き取る。彼女はその銃口をエックスに向ける。ハンドガンの銃弾じゃほとんどダメージを受けない。勝てない!

 乾いた音が鳴り響く。シリカさんのハンドガンから1発の銃弾が放たれる。その紫色をした弾丸は、エックスの胸に埋め込まれる。


「……さて、誰から捕食しようか」


 エックスは何事もなかったかのように私たちに向かって歩いてくる。だが、その一方でシリカはハンドガンを腰に戻して言った。


「――パトフォーはどこにいる?」

「えっ?」

「生意気な片目のお前からにしよう……」


 エックスが腕を伸ばしてくる。だが、その腕は私たちに辿り着く前に落ちる。


「な、なンだ……?」


 エックスは膝を付き、その場に倒れる。皮膚から血が滲み出ていく。最初は少量だったが、やがてそれは、彼の身体の周りに広がっていく。何が起きているんだ……?


「サイエンネット生物を細胞レベルで破壊する“アンチ・サイエンネット=ウィルス”。――ソフィアが持ってきた」

「ア、アンチ・サイエンネット=ウィルス?」

「クラスタ前防衛大臣が開発させたモノらしい。サイエンネット・ウィルスを取り込んだ細胞を多く宿していれば宿しているほど、威力を発揮するらしい」

「そ、そうなんだ――」


 私はそう言いながら、ふと廊下の方に目がいく。――えっ?


「フィルド、さん……!?」


 タンカーで運ばれていく1人の女性。間違いなくフィルドさんだ――!

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