第34話 スウィーパーとエックス
【カオス支部 中層 飛空艇プラットホーム】
巨大な剣が私を貫こうとする。私はその場から床を蹴って素早く空中に飛び上がる。空中で身体を捻じらせて、手をスウィーパーに向ける。大型の斬撃を連続して飛ばす。
スウィーパーの存在は知っていた。ネオ・パスリュー本部に情報があった。ネオ・連合政府が「連合政府」の時代から開発を続け、遂に完成させたらしい。
アレは私のクローンを素体に造り出された生物兵器だ。サイエンネット・ウィルスを利用して造り出されたらしい。
連合政府はこれまでにも、ハンターA型やハンターB型などといった私のクローンを素体にした生物兵器を造ってきた。スウィーパーはハンター系生物兵器の最上位種らしい。
[攻撃セヨ!]
もう、何十発と斬撃や魔法弾を受けているのに、スウィーパーは全く怯まずに私に飛びかかってくる。確かに最強かも知れない。だが、――
私はスウィーパーの懐に転がり込む。ラグナロク魔法を纏った拳でその腹部を貫く。爆発音にも似たような音が轟き、巨体は吹き飛ばされる。天井に叩きつけられ、落ちてくる。
私はそこから飛び上がり、右腕にラグナロク魔法を限界まで纏う。そして、落ちゆくスウィーパーの脇腹に拳を叩き込む。
[破壊――]
私の拳を受けながら、床に叩き落されたスウィーパー。その衝撃波は強烈なものだった。スウィーパーの装甲服を砕き、衝撃は床にまで伝わり、建物全体を激しく揺らす。
[――――!]
衝撃波で周りのバトル=カスタムたちや小型飛空艇が吹き飛ばされ、宙を舞う。床が大きくひび割れ、遂には砕ける。壁が引き裂かれ、轟音と共に天井が崩れる。
スウィーパーが受け止められなかった衝撃波で、カオス支部に大きなダメージが行っていた。建物が大きく砕けていた。
私は落ちてくるいくつもの大きな瓦礫を足場にして上へ、上へと昇っていく。中層エリアから上層エリアへと入る。瓦礫から、上層エリアの廊下へと転がり込む。
あと少しでパトラーがいるハズのカオス支部最高司令室だ……!
◆◇◆
【カオス支部 上層エリア 最高司令室】
サレファトが腕を上に向け、小さな粒子を撒き散らす。黄色に光る粒子は、小さな――それでも強力な威力を誇る電撃弾となって降り注ぐ。降り注ぐ先は――私の姿をしたエックスだった。
「……美しい粒子群だな」
空中に舞い散った黄色の粒子を見上げ、私の声で言葉を発するエックス。
エックスは他人の遺伝子を得て、その姿に擬態する事が出来る。ただ、完ぺきな擬態は出来ない。まず大きさで異なる。エックスの身長は3メートル近い。次に、色合い。全体的に暗く、まるで腐った何かのような色だ。そして、皮膚表面。乾いたそれではなく、薄く湿った膜が張っている感じだ。
「まさか、パトラーさんの姿に擬態するなんて」
「たぶん、5年前に襲った時に私の遺伝子を得ていたんだ」
天井に舞い散った光り輝く粒子が一斉にエックスに向かっていく。当たる度に大きな電撃音が鳴り響く。それが何十発と降り注ぐ。
エックスはその名の通りの存在だ。決まった姿を持たず、他人の遺伝子を得てその姿に擬態する。最初は完全な擬態を目指していたらしいケド、結局計画は頓挫し、今のカタチになったらしい。
「クッ……!」
何十発と降り注ぐ電撃粒子。エックスは怯みながらも、私たちに向かって歩いてくる。あの粒子はかなりの威力を持つ。普通の生き物なら死んでいるハズだ。
だが、エックスはまだ生きている。擬態している間は、あらゆる攻撃に耐性を持つらしい。最初から持っていたワケじゃない。攻撃を受けると、それを読み取り、次第に耐性を付けていくというモノだ。
「サレファト、お前を頂こう」
電撃粒子の雨が終わった瞬間、エックスがサレファトに向かって走って行く。私はサブマシンガンにラグナロク魔法を纏わせ、エックスを銃撃する。ラグナロク魔法を纏った銃弾が、エックスの左脚を吹き飛ばす。
「ぐッ、あぁあッ!?」
「…………!」
簡単に吹き飛んだ脚を見て私は初めて気が付いた。そうか、エックスはラグナロク魔法に対する耐性を持っていない。
私は立て続けに銃撃を続ける。いずれの銃弾もラグナロク魔法を纏ったものだ。一発一発のダメージが大きく、エックスはその場に倒れ込む。
「なんということだ、まさかラグナロク魔法を使うとは……」
ネストールがその場から走り出す。私は彼を捕まえるために、その場から走り出そうとする。だが、――
「パトラーさん!」
「…………!?」
エックスが起き上がり、ネストールに向かって腕を伸ばす。擬態を解かれた腕。蒼色の触手が逃げ出したネストールの背を貫く。
「う、ぐっ……!?」
エックスは勢いよくネストールを無理やり引き寄せる。すると、エックスの腹部が大きく裂ける。引き寄せたネストールを腹部に開いた巨大な口に無理やり入れると、そこを勢いよく閉じる。真っ赤な鮮血が飛び散る。――取り込んだ!?
ネストールを丸呑みしたエックスの身体が激しく揺れ動く。時折、血がエックスの身体から飛び、床に付着する。
「パトラーさん……!」
サレファトが私の側にまで走り寄ってくる。私はエックスの動きを注視していた。私の姿に擬態していたエックスは、次第に姿を変えていく。
「…………!」
私たちに背を向けていたエックスが振り返る。その姿は――私ではなく、ネストールだった。
「さて、第二ラウンドを始めようか……」




