第33話 新型軍用兵器と新型生物兵器
【カオス支部 上層エリア 最高司令室】
最高司令室の扉を開け、私はカオス支部の中枢へと入る。薄暗い不気味な部屋だ。濃い赤色のじゅうたんが一面に敷かれ、部屋の奥には大型のコンピューター・システム。それを操作するための最高司令席。その後ろには横に長い大きな窓ガラス。
「えっ……?」
「ようこそ、パトラー=オイジュス」
最高司令席の斜め後ろで控えていたネストールが静かな口調で言う。
「ククク、どうした? 俺の存在が意外か?」
最高司令席に座る男が口を開く。黒い装甲服を身に纏い、その上から黒いローブを被る男――パトフォー!? なぜ、ここにいるんだ!?
パトフォーはすでに脱出したハズだ。今頃はスカイ島の北海上でクリスター政府軍と戦っているハズだ(とは言っても、そろそろ勝負は付いたと思うケド)。
いや、でも――
「そうか、私たちは騙されたんだな。……お前がここにいてくれてありがたい。これで“お父さんの仇”を討てる」
「ライト=オイジュスか。懐かしいな。死ぬ間際に会わせてやっただろう?」
私のお父さんはパトフォーたちに殺された。その怨み、殺した本人だけを八つ裂きにしても忘れられない。パトフォー、コマンドら全員を殺すまでは忘れられないだろう。
「死ぬ前に1つ聞かせろ」
「まだ戦い始めてもいないのに何を言うのか……?」
そう言いながら、ネストールが左腕に装備した小型コンピューターを操作する。戦いの準備だろう。
「……“サレファト=シリオード少将”はどこにいる?」
私は動揺する心を抑えながら、ネストールたちに向かって言う。
「…………?」
「サレファトならフィルドに当たらせている。間もなく因縁の対決が始まるだろう、ククク……」
パトフォーが目の前の大型コンピューターを操作する。シールド・スクリーンが現れ、カオス支部中層にある飛空艇プラットホームが表示される。
「フィルドさん……!?」
クリスター政府の小型戦闘機が突っ込んできていた。そこから剣を手にした1人の女性――フィルドさんが飛び出す。彼女は着地しながら、数体のバトル=アルファらしき戦闘ロボットを斬り壊す。
「パトフォー閣下、新型兵器のバトル=カスタムは役に立っていません……」
「ククク、コマンドに責任を取って貰わんとな」
バトル=カスタム――あの4本腕の軍用兵器の名前か。今まで見たことなかったから、やっぱり新型軍用兵器だったんだ。
そのとき、シールド・スクリーンが飛空艇プラットホームの別の場所を映し出す。そこには4本の腕を有する怪物が映し出された。体格もかなり大きい。恐らくはクローン兵をサイエンネット・ウィルスで怪物化した生物兵器――ハンターだろう。
「新型生物兵器スウィーパー。あれとサレファト少将でフィルド=ネストの息の根を止める……」
「さっきから新型ばかりだな」
黒い鋼の装甲服を纏った怪物――スウィーパーとやらは、4本の腕に大型の剣を握り締め、フィルドさんに向かっていく。その進む先にいるバトル=カスタムを弾き飛ばす。
「……サレファトはどこだ?」
シールド・スクリーンを見ていたパトフォーが言う。……さっきから映るのは無数のバトル=カスタムやスウィーパーばかりでサレファトの姿はない。
そのとき、私の背後の扉が開く。バトル=オーディンを破壊した廊下から誰かが入ってくる。入ってきた人物は私の側にゆっくりと歩いてくる。まさか、――
「サレファト、お前は何をしている?」
パトフォーが不愉快そうな声で、入ってきた人物に声をかける。パトフォーと同じ黒いローブを身に纏った彼は私に声をかけず、前へと進み出る。
「……お久しぶりです、パトラーさん」
「…………!」
「なに!?」
「サレファト、お前パトラーとどういう関係だ……?」
私は震える身体で、何かサレファトに声をかけようとする。だが、言葉が出ない。そうしている内に、サレファトは黒いローブを脱ぎ捨てる。黒い装甲服を身に纏い、白銀の髪の毛をした青年の姿が現れる。彼はゆっくりと私の方を振り返る。蒼い目が私を捉える。
「サレファト……!」
私はようやく声を発する事が出来た。ケイレイトの言った通り、カオス支部にはサレファトがいた。本当だった。
一方、パトフォーとネストールは意味が分からないという表情を浮かべていた。当然だろう。彼らは“5年前”のことを知らない。
「……一緒にパトフォーを倒しましょう」
サレファトの言葉に私は無言で頷き、腰に装備していたサブマシンガンを抜き取る。
「全く意味が分からないが、1つだけ分かったことがあるぞ。……サレファト、俺を裏切る気だな?」
「ええ、そうです。僕はパトラーさんと一緒に、あなた“から”姉の仇を討たせて貰います」
「残念だ。ククク、まぁでもそれがいいかもな。なぜなら、俺はお前がフィルドを殺した後、即刻始末するつもりだったからな」
そのとき、部屋の奥から何かが歩いてくる。……アレは、――
「新型生物兵器エックス……。2人を殺せ」
部屋の奥から現れたのは、不気味な蒼色の触手で構成された人型の怪物。――アレは見たことがある。5年前、連合軍のオーロラ支部に捕まっていた私を襲った生物兵器だ。
「私への嫌がらせか?」
「偶然だ、ククク……」
パトフォーは笑いながら言う。生物兵器エックスは私とサレファトの前にまで歩いてくる。まずはコイツを倒さないと、パトフォーを殺せないようだな……。




