第32話 VSバトル=オーディン&グラボー
【カオス支部 上層エリア】
無制限に現れ、襲い掛かってくる4本腕のバトル=アルファたちを軽々と壊しながら、私はカオス支部を進んでいた。
[攻撃セヨ!]
[破壊セヨ!]
また数体の軍用兵器が襲い掛かってくる。私は床を蹴って空中に飛び上がり、攻撃を続ける軍用兵器たちの真上を通り抜けていく。彼らの背中に斬撃を飛ばす。身体が斬れ飛び、火花を散らしながら倒れていく。
もうここはカオス支部の上層エリアだ。配管が剥き出しになっていた狭い廊下から、しっかりと整備された広く大きな廊下に出ている。最高司令室は近い。
「…………!」
そのとき、最高司令室の方面から2体のバトル=パラディンを引き連れた大型の軍用兵器が歩いてくる。あの鋼の巨体は――バトル=オーディンだ!
[ターゲットを確認。コンディション:サード。――戦闘開始!]
バトル=オーディンは6本の腕に剣を持ち、私に向かって走ってくる。
かつては最強軍用兵器の異名を持っていた大型軍用兵器。人間の人格を頭脳にプログラムされていた初代バトル=オーディンは連合七将軍筆頭の地位にあった。6本の腕を有し、その戦闘力には人間の限界を遥かに上回る。だが、――
「…………」
私は剣を抜き取り、黒い鋼の巨体に向かっていく。……この動き、人間は勿論のこと、クローン兵士の目にも留まらないだろう。
[フォーメー、――]
「…………」
バトル=オーディンの後ろで私は一息つく。剣を腰の鞘に戻しながら、ゆっくりと後ろを振り向く。……バトル=オーディンの大きな身体が真っ二つになり、小さな金属部品を散らしながら、左右に離れていく。やがて、大きな音を立て、床に倒れ込む。
「…………」
これがパトフォーが13年もの月日と莫大なコスト、無数のフィルド・クローンの犠牲をかけて造り出したウィルス――サイエンネット・タイプ4=ウィルスの力だ。この力でネオ・連合政府の息の根を止める。
[オーディン少将!]
[ヤツを殺せ!]
バトル=オーディンが引き連れてきた2体のバトル=パラディンが槍を手に、私に飛びかかってくる。私はその槍を掴み取り、強引に奪い取る。その衝撃でバランスを崩したバトル=パラディンが私に向かって倒れてくる。
私は槍全体にラグナロク魔法を纏い、バトル=パラディンを叩き壊す。鋼の鎧が砕け、内部の金属部品も砕ける。
[…………!]
叩き壊されたバトル=パラディンが倒れる前に、私はもう1体のバトル=パラディンに向かっていく。ラグナロク魔法を纏い、漆黒色に染まった槍でその首を貫く。それと同時に、さっきのバトル=パラディンが床に倒れる。
「中々やるじゃないか」
「…………?」
奥から見たことのない男性――いや、半身機械の改造人間が歩いてくる。誰だ?
「パトラー、俺を覚えているか? 3年前、ファンタジアシティ封鎖艦隊の指揮官だったグラボーだ」
「…………」
聞き覚えがないワケじゃない。確かに3年前、私は幻想都市ファンタジアシティで戦いに身を投じた事がある。バトル=オーディンの部下としてファンタジアシティを包囲する艦隊の指揮官がいた。……それがグラボーか。
だが、グラボーは死んだハズだ。飛空艇の最高司令室にいたグラボーは、小型戦闘機に乗った私が部屋ごと吹き飛ばしたハズだ。辛うじて生きていたのか。
「よく生きていたな」
「お前を殺すまで死ぬワケにはいかないのでな」
グラボーは剣を抜き取る。……言っちゃ悪いケド、どう考えても私と彼じゃ力の差は歴然としている。彼とバトル=オーディンなら、オーディンの方が遥かに上だろう。なにを考えている?
だが、ここで立ち止まるワケにはいかない。私は槍を手に、復活したかつての敵――グラボーに向かっていく。槍が呆気なく彼の腹部を貫く。槍の先端が背中から突き出し、血を滴らせる。
「…………ッ、お前も――」
「…………!」
グラボーがニヤリと笑う。しまった、“そういう作戦”か! 私の背に冷たいモノが流れる。まるで氷の柱に背を押しつけた感じだった。
次の瞬間、グラボーの身体が一瞬の眩しい光と共に吹き飛ぶ。自爆だった。激しい爆風と爆炎が彼の身体から巻き起こる。辺り一帯を焼き尽くしていく。
「…………」
真っ赤に燃え盛る激しい炎。私はそれを背に、再び最高司令室に向かって歩いていく。さすがに今のは疲れたな。
――グラボーの自爆作戦を悟ると同時に、私は手にしていた槍を離し、その場から最高司令室に向かって走り飛んだ。彼の身体が後ろになった瞬間、彼は自爆した。私は炎から逃げるようにして、ここまで走ってきた。
この速さも、サイエンネット・タイプ4=ウィルスの力だ。もし、私が普通の人間だったら、間違いなく死んでいただろう。
「さて、ケリを付けようか」
濃い灰色をした最高司令室へと通じる大扉。ここをくぐれば、いよいよ連合七将軍・筆頭大将――ネストールのいる部屋だ。そして、――
「…………」
ケイレイトから聞かされた情報が間違いじゃなければ、ネオ・連合政府の少将になった“彼”もここにいるかも知れない。




