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ロスト・パートナー  作者: 葉都菜・創作クラブ
第1章 始の要塞 ――ネオ・パスリュー本部――
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第2話 ネオ・パスリュー本部の戦い

 【ネオ・パスリュー本部 Zブロック パスリュー・コア・ブリッジエリア】


 私は瓦礫に身を潜め、ネオ・連合政府のクローン兵たちの銃撃から身を守る。瓦礫の向こう側では数人のクローン兵がアサルトライフルの銃口をこっちに向け、激しく銃撃をしている。


「フィルド、これじゃキリがない」


 赤茶色の髪の毛をし、右目に眼帯を付けた“女クローン”――シリカが私に声をかけてくる。


「……そうだな」


 私はチラリと瓦礫から顔を覗かせ、向こう側に目をやる。敵クローン兵がずっと銃撃を繰り返している。

 視線を近くにやると、青いラインの入った白い装甲服を纏う味方のクローン兵が私と同じように瓦礫に身を潜めている。


「ここまでこれば、あと一息だが……」


 私は視線を上に向ける。長い高架橋が無数に架かっている。ここはパスリュー・コア・ブリッジエリアと呼ばれるエリアだ。広大なエリア全体に何百もの高架橋が複雑に架かっている。

 今、このエリアでは何千人もの味方のクローン兵が戦っている。相手のクローン兵も数千人規模だ。簡単には決着は付かないだろう。

 ここは警備の厳しいエリアだ。なぜなら、この真下にパトフォーやコマンドらのいる最高司令室があるからだ。


「…………」


 あまりゆっくりしているとコマンドらは逃げ出す。ここで時間をかけるワケにはいかない。……なら、取れる方法は1つしかない。


「……パトフォーを倒すぞ」

「えっ?」


 私は瓦礫から飛び出す。ネオ・連合政府のクローン兵たちが一斉にアサルトライフルの銃口を私に向ける。


「邪魔だ!」


 私は白い魔法弾――衝撃弾を敵クローン兵たちに向かって飛ばす。衝撃弾は敵クローン兵のすぐ近くで爆発し、彼女たちは弾き飛ばされる。

 私は高架橋の鉄柵を乗り越え、そこから宙に飛び出す。身体は重力に逆らう事なく、真っ逆さまに降下していく。私のあとにシリカや数人の味方クローン兵が続く。


 しばらく降下し続けていると、やがて最高司令室が見えてきた。ネオ・連合政府のクローン将官たちが一斉にハンドガンを構える。数人の将官は背中に背負った小型ジェット機で飛んでくる。


「フィルドを止めろ!」

「クリスター政府のクローン兵を殺せ!」


 私は剣を抜き取ると、斬りかかってくる敵クローン将官の1人を斬り殺す。下からは銃弾が飛んでくる。自身に当たりそうな銃弾を剣で弾く。


「フィルド、シールドが!」


 シリカが声を上げる。

 このパスリュー・コア・ブリッジエリアと最高司令室の間には強力なシールドが張られている。このまま落ち続ければ、私の身体は木っ端微塵になるだろう(最高司令室からブリッジエリアに対しては突き抜けられる都合のいいシールドだ)。

 私は両腕に黒いエネルギー波――ラグナロク魔法を纏う。そのとき、また別の敵クローン将官が私の命を奪おうと、槍で襲い掛かってくる。


「フィルド、その命奪わせて貰うぞ!」


 先端にラグナロク魔法を纏った槍。それで私の首を一突きにしようとする。その狙いは正確なものだ。並外れた身体能力の持ち主でも、それを避けることはできないだろう。

 だが、私は槍が喉を貫く前にそれを手で掴み、攻撃を封じる。


「なっ!?」


 コマンダー・ジュピター中将か……

 私はもう片方の手で、彼女の身体に斬撃を飛ばし、斬り付ける。彼女は苦痛の声を上げながら小型ジェット機で近くの高架橋に転がり込む。さすがに、中将クラスにもなると致命傷は避けられるようだな。

 私は身体の向きを再び下に向ける。もうシールドがすぐそこまで迫っていた。


「こんなシールドじゃ、私は止められない」


 私はラグナロク魔法を纏い、真っ黒に染まった両腕を勢いよく突き出し、強力なシールドを割り壊す。シールドは一撃で割れた。

 シールドがなくなると、最高司令室までもう距離はない。私は大型の衝撃弾を何発も飛ばし、激しく応戦するクローン将官たちに浴びせる。


「コマンド総督、パトフォー閣下、お逃げを!」

「ひぃ!」

「に、逃げろ!」


 コマンドとその側近コモットが慌てて逃げ出す。一方、クローン将官たちとパトフォーは逃げずに、その場で私たちに応戦する。

 シリカと味方のクローン兵たちは強力なハンドガン――リボルバーの銃口を下に向け、発砲する。力強い音と共に銃弾が飛んでいく。


「ぐぁっ!」

「あぅッ!」


 銃弾を胸に受けたコマンダー・マーズ中将が鮮血をほとばしらせながら倒れる。その近くにいたコマンダー・カロン少将やコマンダー・ムーン少将も倒れていく。


「ク、クソっ!」


 私は剣でコマンダー・ネプチューン中将の首筋を斬り付けながら最高司令室に降り立つ。数人のクローン兵が私に向かって来る。


「フィルド、パトフォーを倒せ!」

「…………!」


 シリカと追いついてきた味方クローン兵が、敵クローン兵たちに銃弾を浴びせる。私はその場から、リボルバーで味方のクローン兵を撃ち殺していたパトフォーへと飛びかかる。


「チッ……!」


 パトフォーは黒いローブを脱ぎ捨て、その場から一段下の階層へと飛び降りる。私は彼を追い、そこから飛び降りる。

 下の階層でも戦いが起きていた。パトフォーは片腕にラグナロク魔法を纏い、彼に斬りかかった3人の味方クローン兵をほぼ一瞬で殴り殺す。

 だが、小型ジェット機を背負った味方クローン将官――アーカイズ中将が彼に襲い掛かる。その両腕にはラグナロク魔法が纏われていた。


「死ね、パトフォー!」

「アーカイズ……!」


 2人は目にも留まらぬ速さで、何度もお互いに攻撃を繰り出し合う。激しい衝撃波が辺りに伝わる。常人の戦いじゃない。

 私は剣にラグナロク魔法を纏うと、パトフォーに斬りかかろうとする。だが、一瞬の隙を突かれたアーカイズ。パトフォーは彼女を蹴り飛ばす。


「アーカイズ!」


 アーカイズはシールド・スクリーンに叩き付けられ、それが割れる音と共に床に倒れ込む。


「フィルド、ここで決着を付けるのはやめておこう」

「…………!」


 パトフォーは空間に裂け目を作り、そこへと飛び込む。空間魔法――! 私は彼を追ってその裂け目に飛び込もうとする。だが、あと少しというところで裂け目は消え、私は床に倒れる。


「逃がしたか……」


 私は素早く立ち上がりながら、ポツリと言う。下唇を噛み締め、拳を握りしめる私にシリカとアーカイズが駆け寄ってくる。


「パトフォーは逃がしたが、ネオ・パスリュー本部を制圧してしまえば、ネオ・連合政府はその勢力を大幅に減らす。パトフォーはそれから追おう」

「…………」


 シリカの言葉に、私は無言で頷く。確かに彼女の言う通りだろう。ここを制圧すれば、ネオ・連合政府はその力を大きく失う。

 だが、パトフォーがいる限り戦いが終わることはない――

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