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ロスト・パートナー  作者: 葉都菜・創作クラブ
第8章 黒の虚構 ――ハーピー海上――
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第28話 パトフォーの計略

 【司令艦 最高司令室】


 私は司令艦の最高司令室に通じる扉を守っていた騎士型ロボット――バトル=パラディンを斬り倒す。最後の一体となっていたバトル=パラディンは、重たい金属の音を立てながら倒れ込む。

 両腕がツイン・レーザー砲になっている改造クローン兵――バトル=アサルトを撃ち壊したアーカイズが私の横に歩いてくる。私と彼女は頷き合い、灰色の扉を開け、最高司令室に入る。


「コマンド、もうお前を守るモノはない」

「死にたくなければ直ちに降伏しろ。ネオ・連合政府は終わりだ」

「…………」


 最高司令席に座ったままのコマンドは、私たちの言葉に何も答えない。部屋の多くがガラス張りになっている最高司令室では、人間型司令ロボット――バトル=コマンダーたちがコンピューターに向かい、司令艦の操縦を続けている。


「どうした、コマンド。怖くて立てなくなったか?」


 私は剣を手にしたまま、背を向けたままの最高司令席に近づく。そのときになってようやく、最高司令席に座っていた人物は立ち上がる。立ち上がったのは赤茶色の髪の毛をした……女性? ――クローン兵だと!?


「ふふっ、待ってたよ。フィルド、アーカイズ」


 黒いレザースーツに、白いブーツ、白いハンドグローブ、白いマント。彼女はクローン将官だ。……彼女がコマンダー・アースか。


「ボクはコマンダー・アース。パトフォー閣下の命令を受けて、2人を殺す為にここに座っていた」

「……なに?」

「悪いケド、コマンドはこの艦には乗っていない」

「なんだと!? じゃぁどこにいるッ!」

「教えるワケないでしょ。どうしても知りたかったら、ボクに勝ってからだね」


 そのとき、コマンダー・アースの後ろにある大型のシールド・スクリーンに映像が表示される。映ったのは黒いフードを深々と被り、サングラスをした男性――パトフォーだ。


「パトフォー閣下、見ててください。ボクがフィルドを討ち取ってみせますっ!」


 そう言うと、彼女は腰に装備していた剣を抜き取る。パトフォーは本気でコマンダー・アースに私を殺させようとしているのか? だとしたら、彼女も相当の実力の持ち主かも知れない。気を付けないと……。

 だが、シールド・スクリーンに映ったパトフォーが口にしたのは、予想だにしなかったことだった。


[ご苦労だった、コマンダー・アース]

「んんっ? どういうことですか?」

[フィルド、コマンドはすでにシリオードに逃げた。昨夜の内にな]

「…………!?」


 昨夜の内に!?


[軍艦1機だけで先にシリオード大陸に行かせたのさ。コマンドに付き従うコモットを始めとした側近集団らもな]


 コモット……。ネオ・連合政府の副総統だ。側近集団も一緒にシリオードに向かったところを見ると、ネオ・連合政府の主要人物はもうハーピー諸島にはいないようだな。


「軍艦1隻だけで? もし昨夜の内に私たちの攻撃があったらコマンドは終わりだったな」

[……構わんさ。コマンド程度が死んでも、俺は何も困らん]


 ……やはり、コマンドもパトフォーの中では道具扱いか。彼とコマンドの付き合いはケイレイトやメタルメカよりも長い。それでも、彼のなかでは道具でしかない。……当たり前か。“パトフォー”とはそういう男だ。


「ということは、お前も今はシリオードにいるのか?」

[いいや、俺は違うさ]

「…………!?」

[この際だ。お前とパトラーを殺してからにしようと思ってな]


 私と決着を付けるために残ったのか……?


[このまま俺がシリオードに向かったとしても、シリオードでハーピー諸島の二の舞になるだけだ。だが、お前とパトラーを殺せば、クリスター政府は相当の深手になるだろう。俺の怨みも晴らせる]

「…………」


 パトラーを狙うのは私怨だ。以前、パトフォーは“サイエンネット・タイプ4=ウィルス”を開発した。それを実験台としてパトラーに感染させたが、ウィルス感染で目覚めたパトラーによって、ウィルスは失われた。そのことがあるから、彼はパトラーを狙うのだろう。

 最も、パトラーはクリスター政府の前身組織「臨時政府」のリーダーでもあった。「臨時政府」は完成しつつあった黒い夢を追い詰めた白い夢でもある。いわばパトラーは黒い夢の天敵であった組織のリーダー。

 パトフォーがパトラーを狙うそのホンネは前者。表向きの理由は後者だろうか。


「私とパトラーを殺せても、クリスター政府は止められない。お前も愚かになったな」

[ククク、そうかな?]

「…………?」

[確かにお前たち2人の死だけでクリスター政府は崩壊しないだろう。……だが、深手にはなる。そこから徐々に切り崩す。俺の黒い夢再建に、お前たちが邪魔だ]

「…………」


 完成目前だった黒い夢を追いやったのはパトラーを中心とした白い夢。彼女の存在は確かに大きい。そして、私はシリカやオリーブらと共に裏舞台で戦った。連合政府の旧本拠地だったパスリュー本部を破壊し、重要人物数人を殺し、その他にもいくつもの計画を止めてきた。

 組織の中核になってきた人物が消えた途端、その組織が傾くことはよくある話だ。クリスター政府がそうなるとは思えないが、可能性としてゼロじゃない。


「パトフォー閣下の黒い夢再建、ボクもお手伝いさせて頂きます」


 コマンダー・アースが剣を構える。だが、――


[いや、その必要はない。お前の役目は終わった]

[えっ?]

[……アース、お前程度でフィルドを討ち取れるハズもない。お前程度に期待などしていない]

「そ、そんなっ! なんでっ!? ボクは――」


 そのとき、お腹に響く爆発音が起こる。同時に司令艦そのものが大きく揺れる。しかも、爆発は一度だけじゃない。何度も立て続けに起こり、揺れも激しくなる。私はその場に立っていられず、床に倒れ込む。私の上に剣を落としたコマンダー・アースが覆いかぶさる。


[その飛空艇には大量の爆薬を乗せた。今、爆発させた]

「な、なんだとっ!?」

「パ、パトフォー閣下っ!?」

[終わりだ、フィルド。それと、使えない道具よ、ご苦労だったな。あとは楽になるといい]

「えっ? えっ!? いやだ、死にたくないっ! 助け――」

[お前の代わりなどいくらでもいる]


 そう言うと、パトフォーは通信を一方的に切ってしまう。それと同時に飛空艇は徐々に傾き始める。マズイな……。このままだと、私たちは海の藻屑となって消える。


「フィルドっ……!」

「アーカイズ、ここから脱出するぞ!」


 私は大きく傾きつつある中、アーカイズに向かって叫んだ。だが、すでにこのとき、飛空艇は立っていられないほどにまで傾きだしていた――

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