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ロスト・パートナー  作者: 葉都菜・創作クラブ
第7章 陰の都市 ――暴風都市ストームシティ――
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第23話 裏切らない

 【ストーム城 廊下】


 夜のストーム城。私はシリカ閣下を探しに、ストーム城の廊下を歩いていた。夜の城は暗い。等間隔で壁に灯されるロウソクの火だけしか明かりがない。天井の照明は消されている。

 私は時々現れる甲冑を纏ったハーピー兵から姿を消しながら歩いていく。私は、僅かな時間だけど、姿を消せる(透明になれる)魔法を使う事が出来る。この魔法を使えるクローンは、今のところ私だけだ。フィルド中将やシリカ閣下も使えない。

 ……って、ここはどこだっけ? あまりに広すぎて道が分かんなくなってきたぞ。ヤバいヤバい。


「――、……パ、フォ…、――、なんと……?」

「…………?」


 どこからか声が聞こえてくる。私は声のする方向へと音を立てぬように歩いていく。広い廊下から、狭い廊下へ。声が聞こえてくるのは……あの小部屋だ。

 私は扉が開きっぱなしの小部屋をそっと覗く。そこには数人のハーピー兵と、ウィンドシアがいた。青白いシールド・スクリーンに映っているのは――パトフォー!?


「この城に来たのはシリカ、フィルドと……あと一人だれだっけ?」

「さぁ、誰でしたっけ?」


 コミットだっ!


[その程度なら放っておけ。余は“奴隷人形”を失い、フィルドらを暗殺することができなくなった]

「ご心中、お察します。パトフォー閣下」

[このままではやがて余のいるカオス支部にまでやってくるだろう。……直ちにシリカとフィルドを殺し、念のため死体をバラバラにせよ]


 えっ!? シリカ閣下とフィルド中将を殺害っ……!? やっぱり、ウィンドシアの降伏は偽りだったんだ……! 私の背中に冷たいモノが流れていく。身体が震える。


「分かりました。でも、その後はどうなさいますか?」

[安心しろ。3人は小型飛空艇でネオ・パスリュー本部に戻ったことにせよ」

「すぐにバレると思いますが……」

[本当に小型飛空艇に3人乗せてネオ・パスリュー本部に向かわせよ]

「えっ?」

[ただ、小型飛空艇に乗るのはお前がこれから殺す3人ではない。これより派遣される我が軍のクローン兵3人だ。そして、その小型飛空艇を我が軍のコマンダー・アースに攻撃させる]


 コマンダー・アース……。九騎の地位にあるクローン中将だ。九騎の唯一の生き残り……

 そうか、コマンダー・アースが小型飛空艇を撃墜し、私を含めた3人は“コマンダー・アースに殺された”ことになるんだ。――自分たちの作戦で味方のクローン兵まで殺すなんて……


[任務完了後、コマンダー・アースはストーム城に戻らせる。そこで、今度はお前たちがコマンダー・アースを殺せ]

「私たちがコマンダー・アース中将をっ!?」

[お前たちがコマンダー・アースを殺せば、クリスター政府はフィルドらの殺害にお前たちが関与しているとは思わないだろう]


 コ、コマンダー・アースはネオ・連合政府所属で生き残っている唯一のクローン中将。彼女をも殺す気なんてっ……! パトフォーらしいと言えばそうだけど……


[その後についてはまた連絡するが、いずれはパトラーやソフィア、クラスタをまとめて始末してもらう。大役だぞ。それが成功すれば、余の統治する世界でお前をハーピー王にしてやる]

「ありがとうございます、パトフォー閣下っ……!」


 ウソだ。きっと、パトラー中将やソフィア閣下を殺した後には何もない。ウィンドシアはそこで用済みとして捨てられる。そして、クリスター政府が彼女を殺す。そうならなくても、もうパトフォーは彼女に報いることはないと思う。

 パトフォーの部下になるということは、彼の使い捨ての道具になるということだ。コマンダー・レンドやコマンダー・クロアも使い捨ての道具。メタルメカさんやケイレイトさんも恐らくは……。そして、コマンドたちも……


[期待しているぞ、未来のハーピー王よ]

「お任せくださいっ……!」


 パトフォーの姿が消えていく。う、うわっ、急いで知らせないとっ……! でも、ここはどこだっ!? シリカ閣下はどこに!?


「ウィンドシア将軍、どちらから先に殺しますか?」

「そうですね……」


 ウィンドシアだって最後には使い捨てられるのがオチだろうにっ……!

 私は脚をガクガクとさせながらその場を去ろうとする。早くしないと2人が殺される。でも、シリカ閣下がどこにいるのか分からない。そして、フィルド中将のいる部屋への戻り方も曖昧だ。


「シリカから殺ろう」

「…………!」

「シリカのいる部屋はすぐ近く。彼女を刺して、それから静かにフィルドと“もう1人”を殺せばいいでしょう」

「了解しま――、…………! ウィンドシア将軍っ!」

「どうしましたか?」

「あそこにいるのは……!」


 えっ?

 ハーピー兵の1人が私を指差している。……しまった、透明になる魔法がいつの間にか消えていた。自分の姿は完全に目視することが出来るようになっていた。


「“もう1人”ですね」

「コ、コミットだっ」

「これは失礼致しました。コミット様、なにかありましたか? なにか恐ろしい情報でも得たようなお顔ですね?」


 私は震えながら後ずさる。ウィンドシアがゆっくりと立ち上がる。

 シリカ閣下の部屋が近くにあるらしいけど、それでも部屋はいくつもある。それを1つ1つ調べている余裕なんてどう考えてもない。


「う、裏切るのかっ!?」

「裏切る? いいえ、違いますよ、コミット様。――私は“裏切らない”んですよ」


 冷たい笑みを浮かべるウィンドシア。口調は丁寧でも、そこに温かさはない。


「さて、まずはコミット様のお命から頂戴しますね。ご覚悟ください」

「い、イヤだっ!」


 私はそこから駆け出し、小さい廊下から広い廊下へと出る。でも、そこにはハーピー兵が4人もいた。彼女たちは私の姿を見かけると、手にしていた槍を私に向ける。

 そのとき、私はあることを思いつく。シリカ閣下の部屋は近く。フィルド中将の部屋もそんなに遠くは離れていない。


「コミット様、お顔が曇っていますね。雨にならない内に終わらせて差し上げます」


 私はウィンドシアの言葉を無視し、右拳に衝撃波を限界まで纏っていく。私はフィルド中将やアーカイズ中将のようにラグナロク魔法を纏えない。これが限界っ……!

 衝撃波を纏うと、私はウィンドシアに向かって拳を勢いよく突きだす。砲弾のような衝撃弾が一直線に飛んでいく。


「…………!」


 ウィンドシアはそれを軽々と避ける。ハーピーはとても素早い動きをする。彼女はその中でも特に身体能力が高い。これぐらいは当然なんだろう。でも、狙い通りだ。

 衝撃波の砲弾はウィンドシアの後ろにある壁に着弾する。その途端、凄まじい爆発が起こり、ウィンドシアやハーピー兵、そして私も、その衝撃に吹き飛ばされる。耳が痛くなるほどの爆音が鳴り響き、ストーム城の窓ガラスが割れる。その音は、確実にシリカ閣下やフィルド中将にも聞こえたハズだ――

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