第20話 クリスター政府特殊軍一般部隊
「フィルドさん……」
コマンダー・クロアの自殺で呆然としてた私に、後ろからオリーブが駆け寄ってくる。私はそっと上着を脱ぎ、オリーブの肩にかけながら指示を出す。
「……とにかく、コマンダー・クロアは死んだ。コミットに連絡を」
「…………」
「オリーブ?」
オリーブの肩が少し震えていた。その瞳は、もう敵はいないにも関わらず、何かに怯えているかのようだった。……そうか、彼女も――
「あ、いえ……。なんでもないです。了解です!」
そう言って、オリーブは私から受け取った無線機を使い、ハーピーシティにいるコミットと連絡を取る。これでブラッド島も制圧完了だ。『オペレーション・ラスト』も05番まで終わった。
さっきのオリーブの様子が少し変だった。理由は聞かなくても分かる。
デスペリア監獄。かつて連合政府が中央大陸に建設した施設。当時は残虐事件を繰り返すクローンと連合政府に反逆したクローンが収監されていた。囚人に対し、常に拷問を施し、他のクローン兵に対する見せしめにしていた。連合政府の恐怖支配の一端だ。
コマンダー・レンドとコマンダー・クロアもそこの囚人だった。そして、――
「……ええ、分かりました。すぐにフィルドさんにお伝えします」
――オリーブもデスペリア監獄の囚人だった。シリカもそうだった。……まだ、彼女たちがコマンダー・オリーブやコマンダー・シリカだった頃、つまり連合政府の軍人だった頃、彼女たちは連合政府に対し、クーデターを企てようとした。それは失敗に終わり、デスペリア監獄に収監された。彼女たちはずっと拷問され続け、その途中でシリカは右目を失った。
やがて、彼女たちはデスペリア監獄から脱走することに成功した。その後に私と出会い、一緒に連合政府との戦いに身を投じることになる。そして、私たちはパトラーやコミット、ヴィクターのいたクリスター政府の前身組織――「臨時政府」と合流した。
オリーブを1人でブラッド島に派遣した過ち。オリーブをデスペリア監獄出身のコマンダー・レンドやコマンダー・クロアのいるブラッド島に派遣した過ち。そして、――
「……すまない」
「えっ、フィルドさん?」
「1人で向かわせてしまって、コマンダー・クロアに会ったことでイヤなことを思い出させてしまって……」
「だ、大丈夫ですよ! 確かに拷問されたときは痛かったですケド、フィルドさんに助けてくれて本当によかったですから!」
「…………」
頭にコマンダー・クロアの最期の言葉が蘇る。
――今もデスペリア監獄で苦しんでいる哀れなクローン共によろしく、な。
――未だにデスペリア監獄は存在する。それも、クリスター政府の管理・運営の下に。かつてのように反逆したクローンを収監していることはないが、凶悪な残虐事件を起こしたクローンたちが収監され、日夜拷問を受けている。デスペリア監獄はクリスター政府の闇の部分だった……
「フィルドさん、コミット准将から連絡がありました」
「何と言ってきた?」
「はい、クリスター政府本国は特殊軍一般部隊の再編作業が完了し、軍をハーピー諸島に派遣するとのことです」
「…………! ようやく軍の再編作業が終わったか」
私の沈みかけていた気持ちに、一筋の光が射し込む。クリスター政府特殊軍には2つの部隊が存在する。シリカが大将を務め、私やパトラー、オリーブ、コミットらが所属する精鋭部隊。もう1つがソフィアを大将とした一般部隊だ。
一般部隊は兵力も多く、クリスター政府軍の主力部隊でもあった。だが、この部隊はこれまでの戦いで大きく傷つき、再編作業に追われていた。それが完了し、遂にネオ・連合政府との戦いに参加できるようになったらしい。
◆◇◆
【コスーム大陸(中央大陸) 首都ポートシティ 上空】
眩しい太陽の光が照り付ける青い空の中、空中に浮上した無数の白地に青いラインが入った飛空艇の艦隊。超大型飛空艇1隻、大型飛空艇10隻、中型飛空艇70隻。
「ソフィア閣下、全艦異常なく浮上完了。これよりハーピー諸島へ向け、出発します」
「了解。全艦に出発の命令を出して」
「イエッサー!」
旗艦となった超大型飛空艇プルディシアの最高司令室。その部屋で私は指示を出していた。これからハーピー諸島に向かい、ネオ・連合政府の脱出を防ぎ、コマンドらを捕える。
私たちはクローン兵60万人。数や勢力の上では、私たちがネオ・連合政府を圧倒している。でも、油断はできない。相手は衰退したとはいえ、「連合政府」の本流。コマンドはさておき、パトフォーは黒い夢の元凶。油断すれば、彼を逃がしてしまう。それどころか、形勢が逆転する可能性だってある。
「先にハーピー諸島に派遣された我が軍の精鋭部隊はネオ・連合政府勢力を圧倒したわ」
「ソフィア閣下?」
「でも、油断しないで。相手はパトフォーよ」
「はい、ソフィア閣下!」
カルセドニー中将がしっかりとした口調で答える。……油断すれば負ける。油断しなければ、“勝てるかも知れない”。私はそう思いながら、プルディシア最高司令室の椅子に座った。ネオ・連合政府との戦いは決して楽な戦いじゃない――
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◆オペレーション:ラスト・01【成功!】
◇派遣メンバー:フィルド中将、ヴィクター准将
◇派遣エリア:ハーピー島(鳥人都市ハーピーシティ)
◇ターゲット:コマンダー・プルート筆頭中将、コマンダー・ヴィーナス中将、コマンダー・マーキュリー中将、コマンダー・ウラヌス中将、コマンダー・サターン中将
◆オペレーション:ラスト・02【成功!】
◇派遣メンバー:パトラー中将
◇派遣エリア:エアロ島(エアロ支部)
◇ターゲット:ケイレイト大将
◆オペレーション:ラスト・03【成功!】
◇派遣メンバー:アーカイズ中将
◇派遣エリア:ウェポン島(ウェポン支部)
◇ターゲット:メタルメカ大将
◆オペレーション:ラスト・04【成功!】
◇派遣メンバー:シリカ大将
◇派遣エリア:ブラッド島(ブラッド支部)
◆オペレーション:ラスト・05【成功!】
◇派遣メンバー:オリーブ
◇派遣エリア:ブラッド洋館
◇ターゲット:コマンダー・クロア大将
◆オペレーション:ラスト・06
◇派遣メンバー:未定
◇派遣エリア:ストームシティ
◇ターゲット:ウィンドシア大将
◆オペレーション:ラスト・07
◇派遣メンバー:未定
◇派遣エリア:カオス支部
◇ターゲット:パトフォー、コマンド総統、コモット副総統、ネストール筆頭大将




