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ロスト・パートナー  作者: 葉都菜・創作クラブ
第5章 血の荒野 ――連合軍・ブラッド支部――
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第17話 弱肉強食

 ただ勝つだけじゃダメだ。


「クッ……! さすがじゃないか、フィルド=ネストっ……!」


 “一刻も早く勝たなきゃ”ならない。


「世界最強クラスの実力だ。だが、私を瞬殺できるほどじゃない」


 私の耳に爆音がまた入ってくる。また、どこかの牢屋が吹き飛んだのだろう。つまりそれは、数人のハーピーの死を意味する。

 時間がかかればかかるほど、牢屋に閉じ込められたハーピーたちが死んでいく。コマンダー・レンドを一刻も早く倒し、あの小型コンピューターを奪わないと、この悲劇は終わらない。


「フフッ……」

「…………ッ!」


 状況は私の方が圧倒的に優勢だ。コマンダー・レンドは防戦一方。なのに、余裕があるのは彼女の方だ。私は焦りっぱなしだ。


「フィルド=ネスト、その剣でどれだけの命を奪った? どれだけの人々を魔法で殺してきた? クローン兵や人間兵、殺した数は私とどれだけ違う?」

「…………」


 私は下唇を噛み締め、勢いよく剣を振り降ろす。コマンダー・レンドは剣で攻撃を防ぐも、身体はその衝撃で弾かれ、後方に下がる。


「余計な事を……!」

「触れて欲しくなかったか?」

「黙れ、コマンダー・レンド!」


 叫ぶ私の脳裏には、真っ赤な記憶が蘇っていた。……ネオ・パスリュー本部でも戦い。まだ、私が殺した数は少ない方だろう。かつて、私は「連合政府」との戦いで無数の命を奪ってきた。そのほとんど全てが軍人だ。

 パスリュー本部、テトラル本部、ヴォルド宮、ディメント支部、ティト州、クライシスシティ、ティトシティ……。挙げればキリがない。それは言い換えれば、それだけ多くの命を奪ってきたことを意味する。


「知ってるか? かつて“エデン”という世界最強のクローン兵がいたことを……」

「だからなんだ!」

「エデンはお前とほぼ同等の実力を有し、私よりも遥かに多くの命を奪った。最後はお前の仲間のアーカイズらに殺されたがな」


 また爆音が起こる。ゆっくりと話しているヒマはないな。


「何が言いたい?」


 私は剣を振り降ろす。コマンダー・レンドはそれを受け止める。火花が散る。お互い引かずに押し切ろうとする。


「強い者が弱い者を自由にする。それこそ命も、な」

「……エデンが言いそうなことだな」

「いや、実際そうだろう? 人間は所詮は動物。強い者が弱い者を自由にするのは、自然の摂理に従ったごく普通なことだと思わないか?」


 押しきれないと判断した私はその場から素早く後ろに飛ぶ。そのとき、爆音が上がり、また1つの牢屋が炎と煙に消える。


「あのハーピーたちは弱いから私に支配されている」

「それを助けに来たのがシリカだ」

「だが、弱くて逆に支配されてしまった」

「人質を使い、脅したの間違いだろ?」

「フフッ、弱者を切り捨てられなかった弱さよ」


 大剣を握ったコマンダー・レンドが私に向かってくる。


「そうか、なるほどよく分かった。強き者が弱き者を支配する。この瞬間だけお前の理論を受け入れてみようか」

「…………!」


 私はその場から飛び出し、一瞬だけコマンダー・レンドとすれ違う。彼女の後ろにまで飛び、その場で私は血の付いた剣を鞘に納める。


「――“弱き者”よ、ハーピーたちは解放させて貰うぞ」

「…………ッ!?」


 おびただしい量の血を流しながら、コマンダー・レンドはその場に倒れ、間一髪のところで手をつく。私はそんな彼女の側に歩いていく。


「フ、フフッ……! 弱者を自由にするのはっ、強者の権利、だっ……! 好きにし、ろ……!」

「…………」


 私は剣をもう一度抜き取り、何の躊躇いもなく振り降ろす。コマンダー・レンドの首が胴から離れ飛び、血を撒き散らす。


「……“強者が弱者を自由に支配しない秩序”を構築するのが人間だ。――ケモノの戯言に付き合い過ぎたな」


 私はそう言いながら、コマンダー・レンドの左手首に装備された小型コンピューターを操作し、爆破装置をストップさせる。――だが、もうすでに半分近くの牢獄が姿を消していた。遅かったらしい。


「フィルド……」

「……シリカ」


 私の側に意識を取り戻したシリカが歩いてくる。……その目は冷たいモノだった。


「何の罪もないハーピーたちがたくさん死んだな」

「…………。……他に何か策があったのか?」

「別に。ただ、よく見殺しに出来たなって思った。私にはとてもそんなこと出来ない」

「…………ッ!」


 じゃぁ、他にどうすればよかったんだッ! シリカは、大人しく捕まって運に任せろとでも言いたいのだろうか? それでパトフォーらに逃げられて、ラグナロク大戦が長引いても構わないのだろうか? その結果、更にたくさんの仲間や人々が死んでも平気なんだろうか?

 私はシリカに悟られないように下唇を噛む。無意識のうちに拳にまで力が入る。

 私にも分かっていた。私の取った選択のせいで、ここに捕われていたハーピーたちの半数が殺された。シリカはそれが許せないんだろう。だが、――


「――ここは任せた。あとは好きにすればいいさ」


 私は吐き捨てるように言うと、その場から歩き始める。まだ、ブラッド洋館がある。そこにいるコマンダー・クロアを倒す必要がある。


「…………」


 シリカは何も言わず、私に背を向けたままだった。砂の混じった風が、戦いの終わったブラッド支部を吹き抜けていく。その風は私とシリカの間に出来てしまった亀裂を抜けていくようなモノだった――

  <<『オペレーション:ラスト』とネオ・連合政府軍>>


◆オペレーション:ラスト・01【成功!】

 ◇派遣メンバー:フィルド中将、ヴィクター准将

 ◇派遣エリア:ハーピー島(鳥人都市ハーピーシティ)

 ◇ターゲット:コマンダー・プルート筆頭中将、コマンダー・ヴィーナス中将、コマンダー・マーキュリー中将、コマンダー・ウラヌス中将、コマンダー・サターン中将


◆オペレーション:ラスト・02【成功!】

 ◇派遣メンバー:パトラー中将

 ◇派遣エリア:エアロ島(エアロ支部)

 ◇ターゲット:ケイレイト大将


◆オペレーション:ラスト・03【成功!】

 ◇派遣メンバー:アーカイズ中将

 ◇派遣エリア:ウェポン島(ウェポン支部)

 ◇ターゲット:メタルメカ大将


◆オペレーション:ラスト・04【成功!】

 ◇派遣メンバー:シリカ大将

 ◇派遣エリア:ブラッド島(ブラッド支部)


◆オペレーション:ラスト・05

 ◇派遣メンバー:未定

 ◇派遣エリア:ブラッド洋館

 ◇ターゲット:コマンダー・クロア大将


◆オペレーション:ラスト・06

 ◇派遣メンバー:未定

 ◇派遣エリア:ストームシティ

 ◇ターゲット:ウィンドシア大将


◆オペレーション:ラスト・07

 ◇派遣メンバー:未定

 ◇派遣エリア:カオス支部

 ◇ターゲット:パトフォー、コマンド総統、コモット副総統、ネストール筆頭大将

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