第14話 アーカイズとメタルメカ
【ウェポン島 ウェポン支部 飛空艇離着陸場】
――メタルメカ将軍。ネオ・連合政府の前身組織「連合政府」時代から七将軍であった男。ケイレイトの恋人。そして、私のかつての師。
私は拳にラグナロク魔法を纏い、メタルメカ将軍に向かって飛んでいく。彼も同じように背中に背負った小型ジェット機を使い、私に向かって飛んでくる。空中で何度もお互いの拳をぶつけ合う。
「昔より強くなったようだな」
「ありがとうございます」
「だが、それで俺を捕まえることは――」
脚にラグナロク魔法を纏い、メタルメカ将軍の脇腹を蹴り上げる。彼はバランスを崩し、着陸させてあったガンシップに突っ込む。
――私が「連合政府」の一角を担う組織に配属される前、メタルメカ将軍と戦場を何度も共にした。私は彼の弟子として生死を共にした。彼の戦いを着実に自らのモノにしていった。
「クッ……!」
メタルメカ将軍が壊れたガンシップの中から飛び出してくる。その手にはハンドガン。銃弾が私の額を狙って飛んでくる。私はそれを軽々と避け、自らもハンドガンを抜き取る。それで残りの銃弾をハンドガンで撃ち砕く。
私はメタルメカ将軍を捕まえるために、彼の脚を狙って狙撃する。だが、彼は先ほどの私と同じようにハンドガンで私の銃弾を撃ち砕く。
「ほう。確かに昔よりも強くなったな」
メタルメカ将軍はハンドガンを腰に戻し、私に向かって再び飛んでくる。拳を私に向ける。彼の装甲で覆われた手首部分から突然細いワイヤーが放たれる。その先端は尖っていた。肩を貫かれる――!
私は飛んでくるワイヤーを軽く掴む。だが、その瞬間、私の全身に激しい電撃がほとばしる。しまった……! 肩を貫かせると見せかけ、ワイヤーを私に掴ませ、電撃を流すつもりだったんだ!
「残念だったな」
「くっ、はぁっ……!」
メタルメカが私に向かって距離を締めてくる。その手にはナイフが握られていた。全身が痺れ、まともに動く事が出来ない。このままだと殺される――!
そのとき、下の方から強烈な衝撃波が巻き起こる。ガンシップやコンクリートの地面がバトル=アルファやバトル=ベータと一緒に引き裂かれながら迫ってくる。フィルドがラグナロク魔法を――!
「邪魔を!」
メタルメカ将軍は回避の為に空中に飛び上がる。私は衝撃波に巻き込まれてしまう。幸い、私は物理・魔法攻撃双方に強い装甲服をほぼ全身に纏っているおかげで、ダメージは少ない。ただ、弾き飛ばされる。
何度も瓦礫やガンシップの一部に当たりながら、私の身体は瓦礫の山と化した地面を転げまわる。その間に、私は装甲服に内蔵した魔法発生装置を使い、自身に回復魔法を浴びせる。身体の痺れが消えていく。
「アーカイズ!」
「…………!」
フィルドの放った衝撃波が消えかかったとき、メタルメカ将軍が一気に迫って来ていた。その手に握られたナイフは、しっかりと私の首を狙っていた。
*
「俺は“やりたくなくても、やらされてしまう”。パトフォーの命令に反する行動をすることができない」
それは私が連合政府の一角を担う組織――ヒーラーズ・グループへの配属が決まった頃だっただろうか? メタルメカ将軍が私にそう言った。
そのときに私は初めてメタルメカ将軍の脳内にコントロール・チップが埋め込まれていることを知った。彼のようになってしまった人を「スレイヴ・ドール」というらしい。
「例えば、俺の恋人を――“ケイレイトを殺せ”という命令が出たら、俺はやりたくなくてもその命令に服従し、行動に移してしまう。それに反する行動・発言をすることができなくなる」
「絶対にですか?」
「ああ、絶対にな。――何度も命令に逆らおうとしたが、結局は遂行してしまった」
「逆らったことが?」
「……まぁな」
「連合政府に逆らう意思が?」
「…………」
当時の私は連合政府に忠誠を誓っていた。連合政府の正義を信じ切っていた。尊敬している師が連合政府に従っているのは本意でないことを知り、私の連合政府への絶対的な信頼は微かに揺らいだ。そして、後に連合政府の正義は偽りであったことを知ることになる。
*
「アーカイズ!」
「…………」
フィルドが遠くから走ってくる。私はその場にそっと座り、倒れたメタルメカ将軍の首筋に手をやる。まだ脈がある。よかった、死んではいなかった。
「アーカイズ、メタル――!」
フィルドが私の左腕に目をやる。……そこにはナイフが深々と刺さり、刃が腕を完全に貫いていた。
あのとき、メタルメカ将軍が私に向かってきた。私は左腕にラグナロク魔法を纏い、それを盾にナイフを防いだ。だが、攻撃の勢いを減らすだけで、刃を砕くことは出来なかった。
そして、私はラグナロク魔法を纏った手刀で、メタルメカ将軍の首筋を叩いた。ラグナロク魔法を纏った手刀は、凡人なら死に至る威力を持つ。だが、彼の場合はこれぐらいじゃないと気絶させられない。
「……メタルメカ将軍を捕えたぞ」
私は壊れた小型ジェット機を捨て、気を失ったメタルメカ将軍を背負う。ウェポン支部の塀から朝日が射し込んでくる。空を見上げれば、東から白地に青のラインが入ったガンシップ――クリスター政府軍のガンシップが数機、ウェポン支部内に入ってくる。
「……クリスター政府に、あなたを“解放”する技術があるといいんですけどね」
私は着陸したガンシップから飛び出し、駆け寄ってくる師の恋人――ケイレイトと、フィルドの弟子――パトラーを目にしながら、気を失った私の師に声をかけた。
<<『オペレーション:ラスト』とネオ・連合政府軍>>
◆オペレーション:ラスト・01【成功!】
◇派遣メンバー:フィルド中将、ヴィクター准将
◇派遣エリア:ハーピー島(鳥人都市ハーピーシティ)
◇ターゲット:コマンダー・プルート筆頭中将、コマンダー・ヴィーナス中将、コマンダー・マーキュリー中将、コマンダー・ウラヌス中将、コマンダー・サターン中将
◆オペレーション:ラスト・02【成功!】
◇派遣メンバー:パトラー中将
◇派遣エリア:エアロ島(エアロ支部)
◇ターゲット:ケイレイト大将
◆オペレーション:ラスト・03【成功!】
◇派遣メンバー:アーカイズ中将
◇派遣エリア:ウェポン島(ウェポン支部)
◇ターゲット:メタルメカ大将
◆オペレーション:ラスト・04【遂行中】
◇派遣メンバー:シリカ大将
◇派遣エリア:ブラッド島(ブラッド支部)
◆オペレーション:ラスト・05
◇派遣メンバー:未定
◇派遣エリア:ブラッド洋館
◇ターゲット:コマンダー・クロア大将
◆オペレーション:ラスト・06
◇派遣メンバー:未定
◇派遣エリア:ストームシティ
◇ターゲット:ウィンドシア大将
◆オペレーション:ラスト・07
◇派遣メンバー:未定
◇派遣エリア:カオス支部
◇ターゲット:パトフォー、コマンド総統、コモット副総統、ネストール筆頭大将




