第10話 動揺
【鳥人都市ハーピーシティ ハーピー王宮 女王の間】
ハーピーシティの戦いから1週間。王宮内に捕えられていたベーチェル元女王・連合政府七将軍は助け出され、ハーピーシティを含む周辺地域はクリスター政府軍の保護下に置かれ、連合政府勢力は完全に排除された。
「ハーピー諸島最大島のハーピー島から連合政府勢力は完全に姿を消しました」
クリスター政府特殊軍精鋭部隊に所属するクローン軍人――コミット准将が私に報告する。
ハーピー諸島は主に7つの島から構成され、その主要5島の周辺に小島が無数に存在している。ネオ・パスリュー本部や鳥人ハーピーシティを有するこの島――ハーピー島は7島の中でも最も大きく、人口も多い。
「残る連合政府勢力はハーピー諸島主要6島に散らばっており、――」
他の6島は東から順に、天然資源の豊富な「エアロ島」、ハーピーの武器になる木々の多い「ウェポン島」、かなり南に位置する処刑島ともいわれる「ブラッド島」、旧ハーピー王国の副首都であるストームシティを有する「ストーム島」、ネオ・連合政府の飛空艇が多くある「スカイ島」、旧ハーピー王国の前衛基地だった「シールド島」が存在する。
「――コマンドやパトフォーらはシールド島にいます。近い内にスカイ島にある連合政府艦隊と共に諸島から脱出する気です」
スカイ島には何十隻もの軍艦がある。それを使えば、ハーピー諸島から脱出できるだろう。行き先は遥か北の北方大陸――シリオード大陸らしい。
「パトフォーだけは逃がすワケにはいかない。妨害するいい案はないか?」
連合政府の創始者は実質的にはパトフォーだ。この男の黒い夢が、連合政府を生み出し、コマンダー・プルートやコマンダー・ヴィーナス、ハーピー王国の崩壊を招いている。この男1人のためだけに、多くの人々が不幸になった。絶対に逃がすワケにはいかない。
「はい、現在、クリスター政府本土では特殊軍一般部隊の再編が進んでいます。クリスター政府は近い内にソフィア大将を筆頭に一般部隊を派遣する予定ですが、すぐには……」
「まだ派遣不可能か?」
「残念ながら……」
クリスター政府軍にはシリカを大将とした精鋭部隊、ソフィアを大将とした一般部隊が存在する。私やヴィクター、パトラー、コミットたちが所属するのは精鋭部隊だ。だが、軍としての規模は遥かに後者の方が大きい。
一般部隊は3ヶ月前に国際政府という別の勢力と戦い、辛うじて勝利したが、そのダメージは大きく、軍の再編作業に追われていた。
「ただ、ネオ・連合政府側もすぐに脱出する気はなく、ネオ・パスリュー本部奪回を考えているようですので、今は残る連合七将軍を1人ずつ倒していくのが得策だと思います」
「ああ、そうだな……」
ネオ・パスリュー本部はネオ・連合政府の本拠地にして世界最大規模を誇る要塞。何としてでも奪い返したいのだろう。脱出先の北方大陸には、大きな要塞は存在しない。
そうならば、やはり今は従来の作戦――『オペレーション:ラスト』の通り、1つずつ主要6島と連合七将軍6人を捕えていく方がいいだろう。
「フィルドさん、失礼します!」
女王の間にヴィクターが入ってくる。その後ろからオリーブ准将も一緒に入ってくる。
「どうした、ヴィクター?」
「さ、先ほどネオ・連合政府が正式に発表をしまして!」
ここまで走って来たのか、息を切らせているヴィクター。その表情からただ事じゃないことが伺える。
「落ち着くんだ、ネオ・連合政府が――」
「七将軍ケイレイト大将が、我が軍のパトラー=オイジュス中将を拘束したと正式に発表しました!」
「なにッ!?」
私は驚きのあまり、椅子から勢いよく立ち上る。コミット准将も驚いたような表情を浮かべる。
ケイレイトは連合七将軍の1人。しかも、彼女はネオ・連合政府の前身組織「連合政府」時代からの大将だ。もし情報が本当なら、パトラーは彼女に敗れたということだ。
「ケイレイトはハーピー島のすぐ西にあるエアロ島にいたな。すぐ向かう」
「フィルド中将!? ま、まだ確定ではありませんので――」
私はコミットが止めるのも聞かずに、部屋から出ていこうとする。だが、作りなおされた扉の前で足を止める。
「……シリカが派遣されたブラッド島に、追加で派遣する将官はオリーブ、お前にする。頼んだぞ」
「あ、はい! お任せください!」
オリーブ准将がその場で返事を返す。彼女はシリカと長い交友関係がある。シリカと協力すれば、連合七将軍が2人いるブラッド島の『オペレーション:ラスト』は成功するだろう。私は素早くそう考えると、部屋から出ていく。
「ヴィクターはコマンダー・サターンやコマンダー・ウラヌスらと一緒にハーピー島を守れ。以上だ」
「イエッサー!」
ヴィクターも返事を返す。それを耳に、私は部屋から出ていく。コミットだけが不安げな表情をしているのに、私は気が付かなかった。
本当はブラッド島のしっかりと状況を調べ、それから追加派遣する将官やその人数を決めるハズだった。だが、私はそれを飛ばして追加派遣を決めた。シリカとオリーブがいれば大丈夫だろう。何の根拠もないまま、そう判断してしまった。
ケイレイトに捕まったパトラーは、私の弟子だ。一刻も早く助け出したい。そんな想いが、私の判断を“誤らせてしまった”。
<<『オペレーション:ラスト』とネオ・連合政府軍>>
◆オペレーション:ラスト・01【成功!】
◇派遣メンバー:フィルド中将、ヴィクター准将
◇派遣エリア:ハーピー島
◇ターゲット:コマンダー・プルート筆頭中将、コマンダー・ヴィーナス中将、コマンダー・マーキュリー中将、コマンダー・ウラヌス中将、コマンダー・サターン中将
◆オペレーション:ラスト・02【遂行中】
◇派遣メンバー:パトラー中将
◇派遣エリア:エアロ島(エアロ支部)
◇ターゲット:ケイレイト大将
◆オペレーション:ラスト・03【遂行中】
◇派遣メンバー:アーカイズ中将
◇派遣エリア:ウェポン島(ウェポン支部)
◇ターゲット:メタルメカ大将
◆オペレーション:ラスト・04【遂行中】
◇派遣メンバー:シリカ大将
◇派遣エリア:ブラッド島(ブラッド支部)
◆オペレーション:ラスト・05
◇派遣メンバー:未定
◇派遣エリア:ブラッド洋館
◇ターゲット:コマンダー・クロア大将
◆オペレーション:ラスト・06
◇派遣メンバー:未定
◇派遣エリア:ストームシティ
◇ターゲット:ウィンドシア大将
◆オペレーション:ラスト・07
◇派遣メンバー:未定
◇派遣エリア:カオス支部
◇ターゲット:パトフォー、コマンド総統、コモット副総統、ネストール筆頭大将




