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白いツバサ  作者: 透坂雨音
第四幕 マリオネットの踊る舞台
182/506

147 第45章 爆発物大量埋蔵



 と、いうわけなので、啓区やなあちゃんと合流し大会関係の人達と話し合う事になった。


 レースを中止させないために、限られた時間の中で全ての爆発物を取り除かなければならない。

 男に直接聞く方法もあるが、それ以外でも動けることはないかという事で保険として連れてきていたウーガナを呼んだのだった。


 それから十数分後、姫乃達は整備用の看板をコケトリーの首に吊り下げて、レースコース上を走り周っていた。当然ウーガナも連れて、だ。

 大会関係者の男の人を乗せたコケトリーを先頭にして、つい先ほどまで何人もの選手が競い合っていたコース上を走る。


「くそが、何で俺がこんな事しなきゃならねぇんだ」


 ぶつくさと文句が尽きない様子のウーガナを側面に、並走しているラルドという男性と、エアロがつく。

 彼らがそれぞれ正論で言葉を返した。


「仕方ないだろう、それを条件に君は牢屋から一時的に出されているのだから」

「そうです。きちんとさっさと仕事してください。時間が押してるんですから」


 ラルドと名乗った男性は、イフィールさんやコヨミ姫から見張りを頼まれた人物らしい。

 エアロの知り合いでもあるようで、元お城の兵士という事もあって、実力の方なら心配いらないと言われた。


「この野郎……」


 怒りのあまりか不気味な引きつった笑みを浮かべ始めているウーガナを置いて、姫乃達はレースコースに目を向ける。


「今のところウーガナの予測は当たってるみたいだよね」

「うん、そうみたいー。やっぱり同じ悪だくみしている同士で発想が似てるんだろうねー、びっくりするくらい的中してるしー」


 そうだ。凶悪な所があるウーガナだが、引き受けた仕事は思いのほかちゃんとこなしてみせている。会場に埋められた爆弾の場所を次々と言い当てていた。

 そんなにやられると逆に犯人なのではないかと疑いたくなるくらいだ。

 まあ、シュナイデに来てからずっと牢屋に閉じ込められてきたのだから、そんな事は出来ないと知ってはいるのだが。


 未利がウーガナの様子を見て口を尖らせた。


「あんな奴の手を借りなきゃいけない状況ってのがむかつくことこの上ないけど、助かってるってのは事実かもね」

「そうなの! なあびっくりなの。ここ掘れワンワンさんみたいなの!」


 なあちゃん、その例えは危ないんじゃ……。

 と、思った矢先、ウーガナの「俺はイヌっころじゃねぇ!」という反論が上がる。

 ラルドやエアロに何か言われてるところを横目で見ながら、姫乃は啓区の疑問の声を聞く。


「でもーちょっと変じゃないかなー、どうして爆発物をレースコースなんかに仕掛けたんだろねー」

「え? それは大会を中止にするためじゃ……」


 姫乃は頭に浮かんだ事をそのまま口にするが、啓区は首を振る。


「ちゃんと中止にしたかったらー、普通レースが始まる前にするよねー。それに仕掛けるなら観客席の方が良かったんじゃないかなー」


 それを受けて未利が言葉を重ねてくる。


「なるほど。確かに言えてる。整備する人間が見つけるかもしれないのに、わざわざレースコースに仕掛けるのはおかしい。っていうか、観客にまぎれて席に仕掛けて周った方がよっぽど安全なはずじゃないの?」

「あ……」


 そうだ、二人の言う通りだ。

 早く何とかしなくちゃってそればかり考えてたけど、冷静に考えればおかしい点ばかりだ。

 でも、あの男の人……演技で言ってる様には見えなかったんだよね……。


 本当にあのライアって人の邪魔をしたそうだったし、あれで上手くいくと思ってそうだった。

 今は出場権をはく奪されて、大会の詰め所みたいなところに連行されていっているみたいだけど。 


「むむむ、なの。何だか姫ちゃま達、難しそうな話してるの、なあ分からないの……。コケちゃまはお話分かるの?」

「コケっ!」

「そうなの、すごいのっ」


 なあちゃんとコケトリーのほんわかするような話が隅で展開されているようだが、うっかり流されてはいけない。

 癒されそうになるのをこらえて、考える。


「あれじゃないの? 馬鹿だったとか。それでさほら、良くあるじゃん。目立つ事すれば何かすごくなったみたいな気分になるじゃん、ああいうノリなんじゃないの?」


 未利がそんな意見を出すが、それは姫乃にはちょっとよく分からない感覚だ。


「もしくは臆病だったとかかなー。自分の為に関係ない人を巻き込んたくなかった的なー。うーん、やっぱりこれはないかもー」

「ああいう、自己チューな奴はそんな事気にするような人間じゃないでしょ。コースに仕掛けてる時点でアウトだっての。どわぁっ!」

「わー、良いお手本がすぐ横にあるよー。確かに気にしないねー」


 未利がイラっとした様子で手綱を強くひいてしまい、コケトリーに振り落とされそうになってる。

 

 とにかく、考えても答えが出そうにないので、そこら辺の事は他の人がうまく聞き出してくれる事に期待して、爆発物探しに集中する事にした。


 そろそろコースが切り替わるポイントに来たので、先導していた大会関係者の男性がウーガナにおそるおそる爆発物の場所について尋ねる。


「あのー……。それで、次はどこら辺でしょうか」

「……あの杭の所と、柵。飾りがごちゃごちゃしてるとこだ。それくらい予想つけろや」


 イラっとした空気を放出しつつも、予想する場所について教えるウーガナ。

 指示を受けた大会関係者がその場所を順番に掘っていくと、爆発物が出るわ出るわ。


「百発百中。さすが性格の悪いウーガナ」

「その性格の悪さは伊達じゃないねー」

「二人共、それくらいにした方が……」

「るせぇガキども、聞こえてんぞ!」


 姫乃が心配するが、案の定ウーガナの怒鳴り声が返ってくる。

 聞いてるこっちはものすごく冷や冷やするから、あんまり刺激しないでほしいんだけどな。


「未利ちゃまも、啓区ちゃまもめっなの。悪口はいけない事だってなあ知ってるの」

「だいじょーぶだよー、あれは悪口じゃなくてただの、えーと悪口にみせた誉め言葉だからー」

「そうそう誉め言葉なら問題ないでしょ? ウーガナ性格悪い。誉めてる誉めてる」

「がぁぁぁぁっ、てめぇらマジで後でぶっ殺すぞ!!」


 コケトリーの上でウーガナが暴れまわっているがラルドに肩を抑え込まれ身動きを封じられている。

 本当にほどほどにしてね。

 ラルドさんがいるから良いようなものを。


 そんな感じで、コースを整備していくのだったが……。


 コケトリーの背に乗って水上を周っている最中、ウーガナが浮島の一つを顎で示した。

 他のと違ってかなり大きなものだ。


「おい、あれもだバーカ。テメェ等の職務怠慢のせいで俺が仕事してなかったとかイフィールに言われんだろうが」

「えっ、いえあれはトラブルや反則があった時の為に我々が待機している場所なのですが」


 先導していた男性は説明するのだが、その言葉をウーガナは鼻で笑って返す。


「はっ、コースのど真ん中で、観客席から目立つ位置にある。テメェ等がいるなら障害物として認識されずに選手の意識から外れる格好の場所になんだろうが。仕掛けるのにあんな打ってつけの場所が他にあるかよ」

「い、急いで調べます!」


 ウーガナの割とまともな考えを聞いた後調べる男性だが、その顔が徐々に青ざめていく。

 今までの比ではない、その様子にただ事ではないと姫乃達は近づいていって様子を窺うのだが……。


 そこにあったのは浮島一つ吹っ飛ばすには余りある、爆発物が埋まっていた。


「ど、どうしましょう」


 混乱のせいか、男が振り返って姫乃達に尋ねてくる。

 無理もない、すべてを掘り出すには時間が足りなすぎた。



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