表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白いツバサ  作者: 透坂雨音
第四幕 マリオネットの踊る舞台
169/506

134 第32章 物思い少女



 兵士宿舎 私室


 その日の夜


 エアロは自分の部屋で、考え事をしていた。

 人からもらったもの以外余計なものが存在しない簡素な部屋の中、

 ベットに体を横にするエアロは枕に顔をうずめたまま、今朝の事を思いだす


 それは一日が始まってすぐ、休憩寮を訪れた時の出来事だ。


 エアロは子供達にじゃれつかれ遊び相手にさせられて、くたくたになっていたところをレフリーに助けられてお茶をご馳走になっていた。


 そして、興味深い様子で戸の隙間からこちらを伺う子供達をにこやかに撃退した彼女は、神妙な顔をして話を切りだしたのだ。


 エアロが使える主、コヨミについての話を。


 レフリーの言葉を一つ一つ頭の中で並べていく。


「うちの娘のコヨミの事、エアロさんはどう思ってるのかしら?」


 確か、その言葉には尊敬できる主だと答えたはずだ。


「あらあら、尊敬できる主……。あの子はそんな大層な事が務まる様な子じゃないわよ」


 そんな事はない。エアロは言った。


「残念ねぇ、貴方なら良いお友達になれると思ったんだけどねぇ」


 けれど、相手は顔を曇らせてそう返すのだ。

 ここで私は首をひねったはずだ。

 何かおかしな事を言っただろうか、と。


「ひょっとしたら貴方の存在は、あの子の負担となってるかもしれないわね。なんて、ただの一人事よ、気にしないでね」


 気にしないで、といいつつも気になる風にってくれるのだからタチが悪い。

 たおやかなのは見た目だけなのだ。この人は。

 それなりの付き合いがあるので、分かっている。


「私は、姫様の迷惑になっているのでしょうか」


 レフリーは適当な事をいう人間ではないという事をエアロは知っていた。

 だから彼女の口から述べられた言葉はまったく事実からかけ離れた事ではないのだ。


「姫様の事を思うなら、態度を改めるべきだと思いますが……」


 自然とそうしたくないと思うのだ。

 それが彼女の為にもなるのだと

 そう思いこんで……。


 そこまで考えてエアロは気が付く。


「……何だかこれじゃあ、姫様のことを思ってるんじゃなくて……」


 自分の為にしている行動ではないのか、と。

 エアロは思えてきた。


 自分が尊敬する人間は、尊敬に値する素晴らしい人間でいてほしい。

 そんな願望が入り混じっているのではないか、と。


 そうだとしたら……。

 それが自分の本心だとしたら。


「なんて嫌な人間でしょう」


 自分の事が酷く嫌いになりそうだった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ