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白いツバサ  作者: 透坂雨音
幕間
132/516

第4章 海の男 06



 船がひっくり返るのはまずい。


「うっわ、まず」


 魔獣イカの行動に危機感を覚えた調査隊の面々は後退しながら魔法で攻撃。ダメージは効いているはずだが、図体が図体なだけに致命的なものにはなっていないようだ。


「どうしよう」

「ぴゃあ、大きなイカさんなの。すくすく成長した証拠なの」


 考えているとなあちゃんが顔を出した。


 えっと、たぶんあれは魔獣だから大きいのであって、すくすく健康的に成長したわけじゃないと思うよ?


「なあちゃん、どこにいたの?」

「なあ、お船さん探検してたの。それでツバキちゃまを見つけてたくさんお喋りしたの。そしたら、こわこわーってなってる人が来て、どかーんてやっちゃったの」


 ああ、何となく分かったかも。

 海賊の人達の手からツバキ君が助けてくれたみたいだ。


「そういえばなあちゃん、火の魔石持ってたはずだよね」

「でも、なあちゃんじゃ火の魔法は出来なかったはず、どうすんの?」


 そういえばそうだ。

 誰も使えないけど、一応なあちゃんが持ってることにしたものだ。

 かまくらからとりだしてなあちゃんは、うんうんしてるが何も出ない。


「だめか」

「適正自体なかったし、しょうがないよ」


 適正というなら、姫乃にはある。

 だが、


「姫ちゃんは出来ないんだよね」

「うん、一生懸命念じてるけど、魔法にはならないの」


 そうこうしているうちに、再び船体が揺れ動く。

 そして何かが軋む音が連続する。固い船の材木が渇いた音を立ててへし折れる音だ。

 見れば魔獣が足を甲板にのせて掴み、縁の部分から船体を壊そうとしているのだ。


 調査隊が慌てて足を攻撃する。

 その攻撃に押されて足は離れるが、その代わり、その脅威が彼らへと向かった。


「あっ」


 船の床を滑るように動く足に薙ぎ払われていく。

 乗りこもうとする動き自体は止まったが。

 他の足が、その脅威を掴もうと動き回る。

 ……あんなのに捕まったらひとたまりもない。


「ごめん、ツバキ君。皆を助けて!」


 姫乃はこの場でもっともイフィールさん達の力になれる存在……ツバキにお願いするが……、彼は動こうとしない。


「できない」

「どうして……」

「見張られているからだ」

「見張られているって、前に言っていた制作者って人に?」

「ああ。この魔獣は自然に発生したものじゃない。作られたものだ」


 魔獣を……作る?


「外に出ない方がいい。彼女にお前達の存在を気取られる」

「そんなっ」

「じゃあ、見殺しにするってか!? 冗談じゃない。姫ちゃんはここにいて」

「え、未利」


 言うが早いが未利が飛びだしていく。


「……なんて、こんなキャラだったっけか。何言ってんだかアタシ」


 後につけたされたその呟きは姫乃には聞こえなかったが。

 甲板では調査隊に交じって未利が風矢を打ち込んでいる。


「なあちゃん、それ貸してくれる?」


 姫乃は指輪をもらって、それを自分の指にはめる。

 動機が早くなる。

 できればやりたくない、なんてもう言ってられない。

 その魔法を真剣に試そうとするのは、今が初めて。



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