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白いツバサ  作者: 透坂雨音
幕間
128/516

第4章 海の男 02



 姫乃達は船内へと足を踏み入れ、向こうから歩いてきた船員に声をかけた。


「あの、なあちゃんっていうこれくらいの背の女の子見てませんか」

「いや、見てねぇな」

「そうですか」


 だが、心当たりはなかったらしく首を振られる。発見につながる有益な情報は得られなかった。礼を言ってその場を離れ、次にどこから探していこうか考える。


「だいたい、この辺は探した。もう一つ下の階もね」

「どこ行っちゃったんだろうね……」


 本当に海に落ちちゃってたりとかしないよね……?

 最悪の可能性を思い浮かべながらも、階段を降りて、下へと歩いていく。


「……?」

「姫ちゃん?」


 ふと視線を感じたような気がして振り返るが、そこには誰もいない。

 未利にどうかしたのかと、尋ねられるがなんでもない、と答えておく。


 気のせいかな。

 誰かに見られてたような感じがしたんだけど……。


 実は、この奇妙な感覚は初めてではないのだ。

 船に乗ってから今までに何度か経験していることだった。


 まさか、海で亡くなった人の無念の魂が生者をじっと見つめている……なんて事じゃないよね?

 そうだったら怖いよ?

 夜とか眠れなくなっちゃうよ?


 まあ、あんな事があったから気を張りつめすぎた影響みたいなものかもしれないし。

 とりあえずそういう事にしておこう。


 極力深く考えないようにして、なあちゃん捜索に気を向ける。

 しかし、ほどなくしてそれが何なのか判明移することになる。

 

 それから少しばかり船の内部を歩き回った後だ。


 姫乃達の耳に爆発音が聞こえた。





 突如爆発が起きて、視界を煙が覆う。

 風の魔法で晴らした時、状況は一変していた。

 豹変したウーガナ達を目の前にイフィールは警戒の色を滲ませ、声を張り上げる


「無事か!?」


 周囲の隊員たちの安全を確認したのち、イフィールは目の前の事実に大して驚きの声を上げた。


「何を……っ!」


 問いを発っする彼女は息を飲む。

 なぜなら船員の一人がエアロを人質にしていたからだ。

 船酔いがひどいとかで中で休んでいたはずの彼女を。


「すみません、隊長。私が油断したばかりに……」


 あらかじめ警戒しろとは言っておいたが、普段とは違う状態で彼女は後れを取ったのだろう。隊員を一人でも付き添わせていれば、と思う。


「さあ、武器を降ろしてもらおうか」

「最初からこのつもりで仕事を引き受けたのか」


 周囲を見回せば、周囲にいる調査隊の面々はそれぞれ船員たちに武器を突き付けられているところだった。


 ウーガナは他の仲間から愛用らしい武器を受け取る。

 曲刀だ。鞘から抜き出し、刀身を鈍く光らせる。

 峰の部分で肩を叩きながら、ウーガナは言う。


「ああ、そうだ。俺達の本職は海賊なもんでな。思ったよりあっさり騙されてくれて助かったぜ、さあ金目のもんさっさと出せ」





 一方の姫乃達はというと、船員達と向かい合って船内で交戦していた。


「ウィンド!」

「アクアリウム!」


 なあちゃんは見つからず、姫乃達は一番下まで降りてきた。

 一部屋ずつ確かめていってそして残すところ後少し……となったところで、背後から船乗りたちに襲われたのだ。


 彼らは海賊だといい、姫乃達の同行を見張っていたらしい。


 気配に気付いた未利が風の魔法で相手を吹き飛ばし、相手が武器を持っているのを確認した姫乃が水の魔法で拘束する。


「っ!!」


 恐らく目の前の少女たちが戦えるという事を知らなかっただろう。

 彼らは驚きに目をみはり、あっさりと魔法を食らってしまう。結果はもちろん抵抗する間もなくダウンだ。


 イフィールさんの話での姫乃達の身分は、調査隊の非正規のお手伝いである、という事しか説明されていない。それがまさかこういう形で役に立つとは。言った本人も予想していなかっただろう。


「さぁ、何の魂胆があってウチ等を襲ったのか吐いてもらおうじゃん」

「は、話しが違っ、何だコイツら」

「はぁー? 誰がしゃべって良いっつった?」


 未利がすごい顔をして脅している。弓を突き付けながら。

 何だかこれって……。


「さっさと吐け」

「私たちの方が悪役みたいだよ……」



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