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白いツバサ  作者: 透坂雨音
短編 調合士の足跡
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レトの心境



『レト』


 レトは不思議な事など、おおむね信じない人間だった。

 身内に起きたとある出来事を除けば、世間で噂される超常やファンタジーなど、想像の産物に過ぎないと思っていたのだ。


 だから、この身で経験するまでは、異世界転移なんて、アニメか漫画の中の出来事だけだと思っていた。


 けれどどんな経緯があったのか、びっくり現象が起こってしまった。


 異界後に放り出されて、いきなり炎を吐き散らかす狼のような害獣に追いかけられた時のこの気持ちが分かるものか。


 一言で表すと。

 えらい、混乱した。

 だ。


 それ以外に説明しようがないから、想像のさせようもない。


 あくまでも自分は小学六年生なので、それ相応の語彙力しか備わっていないのだ。


 それでで害獣にターゲットロックされた後は、慌てて逃げようとしたのだが……、そこで自分がいつもより早く走れる事に気づいた流れで、連鎖的に地震の体の変化にも気づいた。


 視線を体のあちこちに向けると、白くてモフモフした体になってるのが分かった。


 レトはどうでもいい事にその瞬間「はぁーっ!?」と叫んだ事だけはしっかり覚えている。


 自分が全体的に犬っぽくなっている事に動揺しながらも、必死の走行のかいあって害獣からの逃走に成功。


 その後、運よく近くの町の住人であるバール達に助けてもらい、クリウロネの町でやっかいにになる事になったのだ。初めの内は良く喋る番犬代わりとして。


 何がつらいというと、初期の珍生物扱いだ。元は人間だなんて言っても信じてもらえなかったのがつらい。

 ファンタジーな世界なくせにして、喋る動物が存在しないらしく、レトは随分な扱いを受けた(犬用のドッグフードを出され続けて空腹が限界に達した時は、人間としての尊厳をどうしてやろうかと思った)


 それで、時間をかけて何とか信じてもらった後は、喋る魔獣として有名になって、可愛がられたり、ちょっかいかけられたりした(その際に小さなガキ共が特に好奇心旺盛で、毎回背中に乗ってこられたり、体毛をひっぱられたりするのはうざかったけど、弟の世話を焼いた経験がかろうじて生きた)。


 町の人間には、レトが人間だったという事は話したが、異世界からやってきたという事は言ってない。


 その世界の異世界人の立場が分からなかったからだ。


 その世界に、よく分からないもの、異常なもの、珍しい物を排斥する習慣がないとは限らない。


 どんな人の良さそうな連中でも、心の底では何を考えているのか分からないのだ。

 一定の判断材料を得るまでは、黙っているのが賢明だろう。


 それからは、時間が許す限り情報収集。


 自分が魔獣に該当する生物だという事を把握した後は、ケモノとしての動き方を練習した。


 終止刻なんて物騒な物がある世界だ。

 お偉いさんのあれこれに首を突っ込む趣味はないが、どんな大変な事に巻き込まれるか分からないので、できる範囲で体を鍛える事にした(その結果、憑魔の討伐に力を貸す事になったのは予想外だったが)。


 レトとしては、面倒事に等関わらず、町民CかDくらいの立場で生き抜きたかったのだが……。


 町の住民達の避難が始まって、姫乃達に出会った後、なんやかんやで戦闘に巻き込まれてる所をみると、当分平穏な暮らしはできそうにない気がした。



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