表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白いツバサ  作者: 透坂雨音
第三幕 立ち向かう意思
105/516

101 終章 漆黒の刃



 ??? 『ロクナ』


 ――島から脱出するために船に乗りたい。

 ――そのために、同じ町の住人を暗殺してほしい。


 ロザリー経由でクリウロネの町長からそんな依頼をうけた時、ロクナは正直断ろうかと思っていた。

 仕事をえり好みしたわけではない。

 自身が所属している組織は、できる仕事(分野に偏りはあるが)なら何でもするからだ。

 必要なら裏の組織には似つかわしくない人助けや善意の行動だってするだろう。


 だから、断ろうと思ったのは、別の問題。

 依頼人の人間性についてのものだ。


 非情な決断を下している様に見えても、あの男はは心の底では決意しきれていない(基本的に戦い意外に興味を持たないロザリーが、そう断定するのだからそうなのだろう)。契約を交わしたとしても、土壇場になってから立場を変えてしまう可能性があった。


 だから、そんな話はなかった事にしようと思った。


 終止刻が始まってしまった以上、この先生き残っていくためには、彼の様な人間に煩わされている場合ではない。

 自分達には他に多くのやる事があったからだ。


 しかし、上がこの話を聞きつけてしまったのがしょうがない。

 依頼に、やむなく手につける事になった。


 おそらくあの件が関係しているのだろう。

 ロングミストにはある問題があった。だから、もうじきその場所を放棄する予定たったので、その前にうまい話があるなら利益をむしり取っておこうという魂胆なのだ。


 だから結局は、いつものように依頼を受けた。

 普段通りに、必要な対策もして。


 しかし、依頼主と出会った時にロザリーが変装していなかったのはまずかった。クルスのミスで組織名もばれてしまった。


 これまで存在を隠し続けて来た「漆黒の刃」にしては、考えられないくらいの些細なミスが連発していた。


 それでもこの案件に着手する前は、リカバリーが効くと思っていた。

 ……のだが、後に予定外が発生。

 棘の街道でミスをしてしまったため、計画を変更せざるをえなくなった。


 霧の中で立ち往生する目標ターゲット達から、最大戦力である魔獣を引き離すことにしたのは良かったが、それ以降は誤算ばかりが存在していた。


 仕方ないので依頼主を殺して、依頼自体をなかった事にし、ついでにクルスを使ってお人よしの目撃者ちょうちょうも亡き者にしておこうと思ったのだが……、ロザリーに連絡がいかなかったのが致命的だった。


 クーディランス跡地でお楽しみに興じていた彼女は、彼等に敗北してしまったのだ。


 捕縛された彼女は、一応逃げる事ができたらしい。が、そこまでミスを重ねたらもうフォローはできない。

 彼女には後できついお灸をすえなければならないだろう。


 しかし、あの石の町は一体何だったのだろうか。

 目標ターゲットを追って、こちらまであの町に閉じ込められてしまった時は、さすがに(数多の仕事をこなしてきた自分でも)狼狽せざるを得なかった(そのせいで、らしくもない行動にも出てしまった。いつもならあんな状況で人前に姿をさらしたりはしないのだが……)。


 後で、古地図や歴史などを照らし合わせて、該当する町がないか、調べておかなければならない。


 こうも色々と、予定外が重なって、上が奔放に動くのであれば、我々は身の振り方を真剣に考えなければならないだろう。

 どうやらあの組織の今代の彼は、欲望に正直で陰謀好きのくせに頭が良くないという難を持っているようだから。


 仲間内のミスも続いているので、どこかで一度気を引き締める必要もあるかもしれない。


「知ってる顔があったから、ついびっくりして手加減しちゃったのよ」とか、「さーせん、過労でちょっと判断力が……」とか言い訳してきたが、失態は失態である。

 普通なら、処分行きになる所だ。


 だが、「漆黒の刃」は現在大事な時期だ。


 軽はずみな行動で戦力を削りたくない。


 世界が変わっていく中で、一連の騒動が終わった後に我々は果たして生き残っているだろうか。

 まあ、死んだら死んだでそれまでだったにすぎない事だが。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ