いちご
朝、洗面所に向かうと頬に妙なニキビができていることに気づいた。ぱっと見、普通のニキビと見かけは同じだが、ニキビの周囲が少し窪んでいた。
その時は気にも留めないで顔を洗えば消えるだろう。ストレス溜まってるなー、なんて思っていたが、次の日になってもそのニキビは消えていなかった。
一週間ほど経った。夜、相変わらず私の頬に居座り続けるニキビを凝視すると、なにか中心に緑の物が見えた。気味悪く思い、ニキビを潰そうとするとニキビは簡単に潰れた。というよりも頬から外れた、という感じだった。跡出来ちゃうなと私は思いながら寝床に向かった。
朝、起きてすぐに私は自分の頬の違和感に気づく。静かに頬に触れるとフワリという感触がした。驚いて鏡を見ると、私の頬から葉、植物の葉が生えていた。
「なに‥‥‥これ‥‥‥」
私は恐れて思わず独り言を漏らした。背中が冷たくなる中で、私は四肢があまり自由にならないことに気がついた。
葉を千切りとろうとしたその瞬間、私の身体が私の意思と反するように動き始めた。私の脚は玄関に向かっている。ついにドアを開けた私の身体は、そのまま何処に歩き出した。私は慌て、身体を止めようとするが、全く言うことを聞かない。私はそのうち、近所の空き地に辿り着いた。
空き地の中心まで来ると。私の身体はいきなり地に伏せ、それきり動かなくなった。固定された視界の中で、私は近くに倒れこむ人影を見る。人の形をした何かは、全身をツルのようなもので囲まれていた。そして、ツルの先には艶やかないちごが実っていた。
私は伸ばされ、動かなくなった私の腕に、ニキビを見つけた。そして指の先にはもう既にツルが絡みついているのだった。




